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魔道具の説明 3


 エリスリーンは、シュレイノリアに魔道具の説明のために失敗したスクロールを見せた。


 魔道具の中には、スクロールに描かれているような魔法紋によって、水晶に映った画像を魔道具に映し出し、ギルド本部と通信を行って登録を行う事を説明しようと思っていたのだが、シュレイノリアの興味は見せられたスクロールに変わってしまっていた。


 そして、失敗したスクロールは、一文字足りないことをシュレイノリアは指摘すると言語に関する自分の見解を披露した。


 それは、人の心をよむように、図書館の書物の書かれた言葉の裏に隠れた筆者の心をも読み取っていた。


 そして、シュレイノリアは、エリスリーンの考えていることを言い当てた。


 そんな中、エリスリーンは、シュレイノリアの前日に転移してきたジューネスティーンについて気になっていた。


 シュレイノリアは、魔法に関して驚くような才能を示したのだが、ジューネスティーンは黙って会話を聞いていた。




 エリスリーンは、そんなジューネスティーンを見て考えていた。


(これは、どういう事なんだ? 今まで、2日続けて転移者が現れたことはない。この特殊な状況が、シュレイノリアの才能を開花させたのか? それなら、ジューネスティーンは、どうなの? 言葉は、シュレイノリアと同時に話ができていたのだから、それだけでも才能と言えルワ。でも、今のシュレイノリアの反応を見たら、ジューネスティーンの言語能力などは薄れてしまう)


 エリスリーンは、ジューネスティーンを黙って見つめていた。


「お前も、言葉が話せるんだな」


 沈黙の後、エリスリーンは、ジューネスティーンに声をかけた。


「うん、言葉は、問題ないよ。シュレと一緒に勉強したから」


 エリスリーンは、その答えを黙って聞いていた。


(2人で一緒に言葉を学んだのか。……。ん?)


 そして、何かを思い出したような表情をした。


「そうだな。そう言えば、昔、双子の転移があったな。兄妹というより、姉弟のような双子だったな。あの時は、……、それでも、これ程速くは無かったのか」


 エリスリーンは、以前の転移者と比べていた。


「この言語を覚える速度を考えたら、この2人には、計り知れない何かがあるのかもしれないな」


 そして、納得するような表情をした。


(シュレイノリアの才能を考えたら、ジューネスティーンには特別な才能が無いように思えるが、よく考えてみたら、3ヶ月で片言ではなく普通に言葉が喋れるようになった転移者は居なかった)


 エリスリーンは、また、黙ってジューネスティーンを見た。


(シュレイノリアの影に隠れてはいるが、ジューネスティーンについても、今は見えてないが、この後には何か新たな才能が芽生えてくるかもしれない)


 そして、真剣な表情が少し緩んだ。


「そうだな。3ヶ月程度で優劣をつけるような決断をするものじゃないな」


 エリスリーンは、状況を考えてみると、今まで3ヶ月で才能について判断を下したことが無かった事に気がついた。


 2人とも同じ時期に才能を表すなんてことはあり得ない。


(今、切り捨てる判断をするのは、試用期間が始まった初日に考えている事が理解できないからといって試験を中止させるようなものか。……。今までの転移者と同じ時間は与えるべきだわ)


 そして、エリスリーンはジューネスティーンに笑顔を向けた。


(スタートダッシュに成功した1人が、あまりに強大に見えてしまったから、普通に凄いだけでは霞んでいるだけなのに、その強大さより低いから大したことはないと思ってしまったわ。きっと、シュレイノリアの才能に隠れてしまっただけよね)


 エリスリーンは、何か含んだような表情をした。


「そういえば、お前さんは、何か興味のあるものは有るのかい?」


 エリスリーンは、ジューネスティーンに確認すると、その言葉を聞いて少し考えるような表情をした。


「うーん、図書館の本も面白かったけど、今、興味のあるのは、フルメタルアーマーかな」


 それを聞いてエリスリーンは、男の子だと思ったようだが、ジューネスティーンは、そんなエリスリーンの様子など考えることなく自分の世界に入っていた。


「フルメタルアーマーの取り付けだけど、なんでパーツごとになっているのか、しかも順番に付ける必要があるし、1人では付けられないなんて、あれじゃあ緊急事態に対応できないよ」


 それを聞いてエリスリーンは興味を持ったようだ。


「ほーっ、面白い話だな」


 ジューネスティーンは、その一言が心地良かったのか気をよくした。


「冒険者も兵隊も、遠征をする事だってあるだろうから、野営をする事だってあると思う。寝ている時に襲われたら、フルメタルアーマーなんて付けて戦えないでしょ。そうなると防御力が取れずに戦う事になるから、不安な気持ちで戦う事になると思うから、一度に全部のフルメタルアーマーを着る事ができたら、緊急時にも短時間で装備できるから、そんな不安も無いと思うんだ」


 エリスリーンは、納得するような表情をした。


 フルメタルアーマーは、各部のパーツ毎に体に取り付ける物なので、順番もあり手の届かない部分も有る事から補助が必要となり1人では取り付けられない。


「お前は、面白いところに目を付けるな。だったら、お前さんが、一度に取り付けられるフルメタルアーマーを考えたらいいじゃないか」


 エリスリーンは、笑顔を向けると軽い気持ちで答えた。


「うん、そうだね」


 エリスリーンは、何気ないつもりでジューネスティーンに言ったのだが、ジューネスティーンは真剣な様子でその言葉を捉えていた。


 そのか、ジューネスティーンの答えには、何か考えが有るような表情がうかがえた。


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