表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

798/1356

カインクムとジュエルイアン


 通信用の鏡に現れたのは、南の王国の商人であるジュエルイアンだ。


 その後ろにもう一人立っている。


 ジュエルイアンの秘書であるエルフ属のヒュェルリーン・トゥルレン・トルハイマンである。




 見た目は20代後半に見えるので実年齢は100歳前後になる。


 後ろにいるヒュェルリーンが軽く頭を下げて挨拶をすると、手前にいるジュエルイアンが話を始める。


「組立は完了したのか」


「ああ、滞りなく。 2体ともジュネス達に渡した」


 安心するジュエルイアンだが、カインクムの言葉に少し違和感を感じたようだ。


「それは良かった。 面白い鎧だっただろ」


「あぁ、おったまげた。 あれは、今の世界に無い技術の塊だったぞ。 それより、あれの部品は娘が作ったらしいじゃないか。 何で最初に言わなかった」


 カインクムは、食ってかかると、ジュエルイアンは、当然の様な顔をして答える。


「言ったら、荷物が着くと同時に開けて中を確認すると思ったんでな。 それで言わなかった」


 少しいじわるそうに言うと、カインクムは少し悔しそうな顔をする。


 恐らく、そんな事だろうと思っていたのだろう。


「お陰で、ジュネス達にはみっともないところを見せた」


「そうか、それはすまなかった。 だが、娘が元気にしていて、あんな物まで作ってしまう様になったんだ。 お前には、一番嬉しい土産だったと思うがな」


 ジュエルイアンが形式的な感じで謝ってきたのだが、後の言葉は少し棘があった。


 カインクムは、これ以上娘の話をしたら、私生活について、色々と突っ込まれても困ると思ったのだろう。


 話をパワードスーツの話に変える。


「それより、ジュネスは、後3体有るって言ってたが、それはどうなっているんだ」


「エルメアーナが、現在製作中だ。 近いうちにそっちに送る事になる」


 娘の名前が出てきたが、それには何の反応もしない。


 だが、たまにはジュエルイアンを凹まそうと思ったのだろう。


 少し考えるような顔をすると、ジュエルイアンに話を始める。


「分かった。 それより、あの連中の持っていたボードの事なのだが、あれ、俺にも一つ作って貰いたいのだが、あんたの許可がいると聞いた。 連中に作ってもらっても良いか」


 ジュエルイアンは、嫌そうな顔をする。

 カインクムにホバーボードを見られるとは思って無かったのだろう。

 それが、カインクムに見られてしまった事を聞いて、顔色を変えたみたいだ。


「それは許可出来ない。 地面に浮き上がるボードなんてお前に持たせると、帝国に目を付けられるから、それは許可出来ない」


 カインクムは、ひっかかったと思ったのだろう。


 少し楽しそうな顔をすると、下手に出た感じで懇願する様な話し方をする。


「人が乗るものではなくて良いんだ。 荷物を持ち運び出来れば問題無い。 車輪も無しで動かせるメリットは非常に高いんだ」


 ジュエルイアンは、カインクムが、引き下がらないので、仕方がないかと思ったのだろう。


 顔つきが、変わった。


「まぁ、分からなくは無い。 ただ、あれを売り出すのは、うちの商会が独占させてもらう事になっている。いま、工場で試作品を作っているところだ。 量産されたら、一台はそちらに提供するよ」


 カインクムは、自分の考えた通りに事が進んでいると思ったのだろうが、それは顔には出さずに、つぶやく様に話だす。


「うーん、仕方が無い、じゃあ、自分で魔法紋を考えてから、魔法で魔法紋を描いて使うか」


 その話を聞いて、ジュエルイアンの顔色が変わる。


「おい、いま、魔法紋を描くって言ったか。 それに魔法で描く魔法紋って何だ。 いや、お前、今、魔法で魔法紋を描いて使う? お前、魔法を使えるのか?」


「あ、ああ」


 カインクムは、魔法紋を描く魔法を覚えている。


 それをとぼけて、ホバーボードが欲しいと言ったのだ。


「その魔法紋の話、詳しく聞かせろ」


 焦り出していたジュエルイアンを楽しんだので、カインクムは、ジュエルイアンに今日の経緯を話す。


「あいつら、そんな事を隠していたのか」


「でも、あの嬢ちゃんの話だと、失敗した魔法紋だったって言ってたぞ。 お前、ホバーボードにだけ目がいって、細かな話は聞かなかったんじゃないのか」


 ジュエルイアンは苦虫を噛んだ様な顔をする。


 怒鳴りたい気分なのだろうが、それをぐっと堪えている。


 ジュエルイアンは、一度呼吸を整えると話だす。


「多分、ホバーボードの要求性能には足りないだろうが、今の話の通りだと、それだけでも商売になるな」


 ジュエルイアンは、思案を巡らせるが、すぐにカインクムに指示を出す。


「その台車なのだが、誰にも使わせない様に、それと絶対に盗まれない様にして欲しい。 それも契約のうちに入るので、人には見せないで欲しい」


 ジューネスティーン達の話を思い出しながらカインクムは答える。


「俺は、あんたとジューネスティーン達の契約の話は知らないが、ボードについては契約で俺には渡せないが、荷物を軽くする魔法は契約に無いと言っていたぞ」


 契約の内容の事を考えジュエルイアンの顔が曇り出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ