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魔道具の説明 2


 エリスリーンは欠陥品の魔法スクロールを見せて、シュレイノリアにギルドの魔道具の説明を行おうと思ったのだが、シュレイノリアは魔法スクロールの欠陥を指摘した。


 転移してきて3ヶ月程度なら、片言で話せる程度で一般的な転移者なら文字を読むことなどできるはずがない時期に、シュレイノリアは、スクロールに書いてある文字を理解して間違っている箇所を指摘してきた。


 シュレイノリアは言葉だけでなく、文字も理解してしまっていた事にエリスリーンは目を丸くしていた。


「すごいな。もう、言語まで理解してしまったのか」


 エリスリーンは驚いたように言うのだが、その言葉を聞いたシュレイノリアはジロリとエリスリーンを見た。


「言語なんてものは、単語さえ覚えてしまえば話もできるし、書く事も可能だ。文法など適当でも、単語を並べたら案外簡単に通じる。それと、スクロールに描かれている文字はプログラムと一緒だ。法則性を理解してしまえば、あとは単語を入れ替えれば、簡単にスクロールの内容も変更可能となる。それにスクロールは羊皮紙を使う必要もない。極端なことを言えば、地面にスクロールの内容を描けば、魔力を注ぐと発動する事になる」


 その説明を聞いて、エリスリーンは青い顔をしていた。


 シュレイノリアの話は、この国の言語のこともだが、魔法のスクロールに描かれている文字までも理解が及んでいたので、3ヶ月の間にそこまで理解が及んでいることに驚きを通り越して恐怖さえ感じていたようだ。


「お前は、もう、そこまで理解できているのか。ギルド支部の図書館に通っていたと聞いていたが、あそこの蔵書数で、そこまで理解できるのか?」


 思わず、本音を漏らしてしまったエリスリーンの言葉を聞くと、シュレイノリアは、エリスリーンに何を当たり前の事を言うのだというよう表情を向けた。


「人の言葉には、本音と建前がある。言葉の中には、その人の思いが全て出ているとは限らない。図書館の本も一緒だ。この世界の本は高価な羊皮紙を使っているから、可能な限り文字数を減らしたいはずだから、少ない文字数にするために筆記士は知恵を絞るはずだ」


 シュレイノリアは、自分の言葉に酔うように話し始めていた。


 それをエリスリーンとメイリルダは、ビックリした表情で聞いている。


「その本の中に書かれている内容を書いた人が何を思って書いたのか、それを読み解くだけだ。それは、人と話をしている時も一緒だ。話している言葉を、文面通りにとらえるのは、建前だけをみている事になるが、その言葉の裏、いや、その言葉から本音の部分をとらえれば本質がみえてくる。ここの図書館の本も同じだから、本を書いた人が、その一文字一文字に何を込めて書いたのかを読み解けば、その本の本質が見えてくる」


 シュレイノリアは、勝ち誇ったような表情をした。


「だから、聞いて、読んで、その言葉や言語の裏を読むことで、本質が理解できる。容易いことだ」


 シュレイノリアの話を、エリスリーンとメイリルダは信じられないと思ったようだ。


 そのようなことができるのか、自分達には理解できないと言わんばかりの表情でシュレイノリアを見ていた。


「お前は、そんな事ができるのか?」


 エリスリーンがシュレイノリアに聞くと、シュレイノリアはヤレヤレといった表情をした。


「その言葉には、驚きが隠れている。人の仕草もだが、言葉にも感情がのる。それを読み取れば、相手の考えは読み取れる」


 エリスリーンは、もう、どうでも良くなったようだ。


 人は、自分の限界を遥かに越えると諦めてしまうものである。


 人の言葉に、その人の気持ちをシュレイノリアが読み取っているとは思ってもいなかった。


 エリスリーンは、350歳になるが、それは長命なエルフだからであるが、見た目は人の68歳なので、シュレイノリアと比べても遥かに長い年月を生きている。


 そして、始まりの村のギルド支部に赴任してきて、数多くの転移者も見ているのだが、これ程驚かされた転移者は居なかったのだ。


 もし、シュレイノリアほどの能力を持った転移者が居たら、エリスリーンも直ぐにその名前が出てくるだろう。


 前回、転移してきて、火薬と銃を発明したジェスティエンにしても、これ程、衝撃を与えるような発言は無かったのだ。


 ジューネスティーンが転移してきた時、エリスリーンは、転移者の資料を用意させていたのは、メイリルダに見せる以外に自分でも再確認するために用意させたのだ。


 そうでもしないと、思い出せないような転移者も居たのだ。


 シュレイノリアほどの才能を示した転移者は居なかった。


「これは、2日続けて転移者が現れた事も理由があるのかもしれないね。今までに無かったレアケースというのも理由なのか」


 エリスリーンは、現状を受け入れるしかないと思うと、シュレイノリアとジューネスティーンを見て、今までの転移者とは違うと感じているようだった。


「この子は、何をもたらすのかしら」


 そう呟きながら、シュレイノリアを見ると、今度は、ジューネスティーンをエリスリーンは見ると、黙って話を聞いていただけで表情を変えることもなく、シュレイノリアの話を当たり前の事のように聞いているだけだった。


「そういえば、2人とも言葉を理解して話しているのか」


 エリスリーンは、シュレイノリアの圧倒的な才能を示した。


 しかし、ジューネスティーンは、言葉を使えるようになったのは、シュレイノリア同様、今までの転移者より早かったが、報告を聞く限り、これといった才能を表していなかった。


 今のシュレイノリアの話にも動じなかったジューネスティーンが、シュレイノリア以上に気になり探るように見た。


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