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旅立ちの後 2


 フィルランカは、リズディアに話しかけられていたが、横からイルーミクが話しに入ってきたことで、モカリナとイルーミクの話しになってしまった。


 そのことで、フィルランカとカインクムは、話しだすタイミングを失っていた。


 フィルランカもカインクムも、エルメアーナを見送りに来たのだが、2人とも、顔を合わせられないという事だったので、金糸雀亭の食堂に隠れていて、エルメアーナが馬車に乗り込んだところで、金糸雀亭のロビーに移動して、馬車が動くのを隠れて見ていたのだ。


 特に、フィルランカが、エルメアーナに顔を合わせにくかった。


 カインクムは、問題なく話はできただろうが、カインクムが顔を出して、フィルランカが、来てないなんて事はあり得ないと、エルメアーナが思うだろうと思ったことから、カインクムも顔を出すのをやめたのだ。


 そして、フィルランカの様子を確認していた。


 カインクムは、フィルランカと一緒に影に隠れていたが、時々、フィルランカが、申し訳なさそうに涙を流していたのを、カインクムは、慰めるようにしていたのだ。


 カインクムとしたら、フィルランカに対する責任もあるので、フィルランカの気持ちも考えながら、エルメアーナに会わなくてならない。


 それに、裸の2人がベットにいることを、エルメアーナに見られてしまい、その事によって、エルメアーナの様子が、おかしくなってしまったと、2人は思っている。


 フィルランカとしたら、エルメアーナのトラウマを知らないので、カインクムと自分の関係が元で、あのような状態になってしまったと思い、責任を感じ、エルメアーナの前に出られずにいるのだ。


 そんなフィルランカが、気になった事もあって、カインクムもエルメアーナの前に出なかった。


 2人は、隠れて、エルメアーナの門出を見送った事もあり、この場で、自分から何かを話せるような精神状況では無かったのだ。


 カインクムは、いつでも、フィルランカを庇うことができるように、直ぐ、手の届く範囲になるように、フィルランカの左後ろで、待機するように立って、リズディアの次の言葉を待っていた。


 ただ、カインクムは、リズディア達の言葉から、エルメアーナに、何らかの仕事を任せようとしていることは、伝わったようだ。


(ジュエルイアンのやつ、中金貨3枚もの買い物をするなんて、どういうことなんだ? そんな大金を出せるってことは、あいつ、どれだけの商売をしようと思っているんだ)


 カインクムは、金額の大きさに驚いていた。


 貨幣については、白銅貨・黄銅貨・中黄銅貨・銅貨・中銅貨・銀貨・中銀貨・金貨・中金貨・大金貨と、10種類の貨幣があり、それぞれ、10枚で上の貨幣と変換可能となる。


 中金貨ともなると、白銅貨1億枚となる。


 そんな大金を、ジュエルイアンは、簡単に出すと言ったのだ。


 カインクムは、フィルランカほど動揺しているわけではないので、ヒュェルリーンが提案して、ジュエルイアンが了承し、その話から、リズディアは、新たな儲け話が、ジュエルイアンの元にあるのだと、確信していた。


 カインクムとしても、ジュエルイアンが、エルメアーナにどんな仕事を任せようとしているのか、興味があった。


 だが、今は、フィルランカの事の方が、気になっているようだ。


(そうだな。 今は、フィルランカを気遣ってやらないと、……。 エルメアーナは、ヒュェルリーンに任せてあるのだから、俺がケアしなければならないのは、フィルランカだ。 フィルランカまで、元気を無くなったままでは、……。 そうか、フィルランカを元気にさせないと、エルメアーナが帰ってきた時、また、エルメアーナを悲しませてしまうのか)


 カインクムは、何か、納得するような表情をした。


(そうか、俺は、エルメアーナが帰ってくるまで、フィルランカを幸せにさせておくことか。 エルメアーナは、怒っているわけじゃない。 エルメアーナは、気持ちの整理ができてないだけなんだから、気持ちの整理ができたら、戻ってくるはずだ。 戻ってきたら、また、3人で暮らすことだって、できるはずだ)


 カインクムは、吹っ切れたような表情をすると、フィルランカの右肩に、自分の手を置いた。


 そして、フィルランカは、その手を見て、カインクムの手だと分かると、左後ろにいるカインクムを見た。


「フィルランカ、エルメアーナは、戻ってくる。 だから、悲しい顔はしないでくれ。 エルメアーナが、戻ってきた時、そんな顔をしていたら、また、エルメアーナは、家に帰れなくなってしまうだろう。 エルメアーナは、お前の事を認めているはずだ。 そうじゃなければ、気持ちの整理がつくまで、なんて言う事はない。 エルメアーナは、気持ちの整理がついたら、帰ってくるつもりなんだ」


 カインクムの言葉を聞いた、フィルランカは、ボロボロと涙を流し始めた。


 そして、両手で顔を隠し、肩を震わせていた。


「だから、フィルランカ。 お前は、俺の家で、幸せになるんだ」


 フィルランカは、顔を両手で覆ったまま、振り返ると、カインクムの胸に顔を押し当てて、泣いてしまっていた。


「エルメアーナのために、俺たちは、幸せにならないといけない。 エルメアーナの居場所を、ちゃんと、用意しておこうじゃないか」


 フィルランカは、声を我慢していたが、今の一言で、声を出して泣いてしまった。


 カインクムは、周りを気にする事なく、フィルランカを宥めるように、軽く抱くようにして、子供をあやすように背中を軽く叩くのだった。


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