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フィルランカの真相を聞いた3人の女子達


 イスカミューレンは、ジュエルイアンから聞いた話を、そのまま伝え始めると、女子3人の表情が変わった。


 モカリナもイルーミクも、話の途中で口を挟もうとしていたのだが、イスカミューレンの話を止めてしまったら、その後の事を、聞く事が遅れてしまうと思ったようだ。


 誰もが、イスカミューレンから聞く、フィルランカの話の続きを、早く聞いてみたいとの思いから、話を遮るような事は無かった。


 モカリナは、イスカミューレンの話の最中に、何か聞きたそうにしていたのだが、イスカミューレン商会に入ったばかりなのに、商会の筆頭の話に口を挟む事ができなかったのだ。


 侯爵家の四女として生まれ、貴族としての嗜みを教えられていた、モカリナとしたら、このような場合は、目上の者を敬い、聞くことに専念するようにと教えられているので、それを実行していたのだ。


 ただ、リズディアは、黙ったまま、真剣にイスカミューレンの話を聞いていたが、その表情には、何やら、怒気が僅かに混ざっていた。


 イスカミューレンの末娘であるイルーミクも、色々、ツッコミを入れたそうだったが、2人が何も言わず聞いていたので、仕方なく、黙って聞いているようだった。


 そして、真ん中に座っているリズディアから、伝わってくる、何やら、恐ろしい感情が、ヒシヒシと伝わってきたことで、自分達には、発言権が無いから、黙って聞いていろと、命令されているようだと、2人には思えたようだ。


 イスカミューレンの話が終わると、話の途中で、何か聞きたそうにしていた、モカリナもイルーミクも、今度は、黙ってしまった。


 今まで、一緒に学校生活を行なっていたフィルランカが、カインクムの実質的な嫁になったことに、なんとも言えない表情をしていた。


 そして、イルーミクとモカリナは、リズディアの言葉を待っていた。


 2人には、この場の発言権は無いと、雰囲気が伝わっていた様子で、時々、視線をリズディアの方に向けていた。


 そんな、両隣に座っている、モカリナとイルーミクの事を、全く、見ることも考えることもしていそうもないリズディアは、何やら、自分の中で、思考を巡らせているようだった。


 それは、ここから、逆転の一手を打てないかと考えているようにも見えた。


「義父様、今の情報は、ジュエルイアンが絡んでいるのですのね。 エルメアーナが、南の王国へ行くとなったなら、誰かの後ろ盾が必要でしょうから、それは、ジュエルイアンが、全てお膳立てをして話を、まとめたのですね」


 リズディアは、少しムッとした様子で、イスカミューレンに質問をした。


 イスカミューレンは、ジュエルイアンの名前を出さずに話をしていた。


 しかし、リズディアには、南の王国に行くエルメアーナの話を聞くと、ピンときたようだ。


 南の王国に本店を持ち、大陸全土に支店を持つ大商会の主人であるジュエルイアンが、こんな話に絡まないわけはないと、直ぐに分かったようだ。


 リズディアは、その事を確かめずにはいられなかったようだ。


「ああ、そうだ。 情報元は、ジュエルイアンだ。 それに、全て、あいつの筋書きだと、私も思うよ」


 イスカミューレンの言葉にリズディアは、悔しそうな表情をした。


 リズディアとしては、フィルランカを通じて、カインクムもエルメアーナも、イスカミューレン商会の傘下に納めようと考えていたので、リズディアの思惑から大きくかけ離れている。


 自分の筋書きが、もう使うことができない。


 完全にジュエルイアンに負けてしまったのだ。


 その事を痛感させられている。


 リズディアは、帝国大学を卒業後に、南の王国の大学へ留学している。


 その時、1年前に入学したジュエルイアンを、イルルミューラン経由で知り合い、一つ上の首席のジュエルイアンとは、ライバル関係にあった。


 そんなジュエルイアンに、自分の思惑とは違う方向で話を決められてしまった事に腹が立ったようだ。


 ただ、それは、ジュエルイアンに向けられたものではなく、自分の不甲斐なさに向けられていたのだ。


 しかし、その様子は話が終わって、徐々に改善されたように見えた。


 そして、イスカミューレンにジュエルイアンが絡んでいた事を告げられると、肩の力が抜けた。


「そうでしたか。 やはり、ジュエルイアンが、裏で糸を引いていたのですね」


 リズディアは、もう、どうでもいいといった表情をする。


「また、ジュエルイアンに負けてしまったのですね。 私より、年下のくせに、いつも、一歩先を歩いているみたいだわ」


 まるで、子供が拗ねるような表情で、リズディアは、愚痴をこぼした。


「ああ、ジュエルイアンも、色々、筋書きを考えていたようだが、まさか、フィルランカが、突然、あんな行動をするとは思ってなかったようだ。 フィルランカが、そんな事をかけなければ、ジュエルイアンの筋書きも、まだ、進行途中だったと思われる。 ……。 これは、女の一念が、時間を早めたようだな」


 その話にリズディアも納得するような表情をした。


「そうですね。 フィルランカが、夜這いなんてかけなければ、私にもチャンスがあったみたいですね」


 リズディアを宥めるようにイスカミューレンが答えると、リズディアもそれに同意したようだ。


「本当に、思い人を持った女の一念には、驚かせられる」


 そう言って、イスカミューレンは、リズディアに、思惑あり気な表情を向けた。


 リズディアは、視線を受けて、イスカミューレンの真意が、何なのか図りかねている様子で、イスカミューレンに視線を返した。


「リズディア、フィルランカも、お前と同じように、小さな時から思っていた人と結ばれたんだ。 ジュエルイアンの話を聞いていたら、昔を思い出してしまったよ」


 それを聞いて、リズディアは、顔を赤くするが、イスカミューレンは、そんな事を気にする事なく話を続ける。


「おお、そう言えば、リズディアがイルルと始めて会ったのは、リズディアが10歳で、イルルが6歳の時だったな。 フィルランカもカインクムの嫁になると決めたのは、10歳の時だったみたいだから、リズディアより、早く、フィルランカは、思い人と結ばれたという事だな」


 イスカミューレンは、何気にリズディアの昔の事を思い出したように話したのだが、それを聞いたリズディアは、顔を耳まで赤くして恥ずかしがっていた。


 そして、両隣に座っているイルーミクとモカリナは、興味深く聞いていた。


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