表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

773/1356

ジュエルイアンの提案とフィルランカ 2


 本来、カインクムとフィルランカの問題と、それに伴った、エルメアーナとの間に起こった問題は、家庭内の問題なので、ジュエルイアンが、口を挟むような事ではない。


 しかし、それを3人に気が付かせてしまったら、ジュエルイアンは、これ程、良い条件下で、カインクム達に交渉可能とは思えなかったのだ。


 よって、フィルランカが家を出て、カインクムとエルメアーナが、一緒に暮らすという提案を、ジュエルイアンは、フィルランカに考えさせる余裕を与えないで、一気に否定する必要があったのだ。


 特にフィルランカは、帝国大学でも優秀な成績を収めている。


 そんなフィルランカを、正常な思考に戻してしまったら、ジュエルイアンの提案についての矛盾を指摘され、自分の描いた筋書きとは違う提案をされたら、ジュエルイアン自身も反論できない可能性がるのだ。


 ジュエルイアンは、フィルランカが、カインクムとの情事を、エルメアーナに知られて動揺している、この状況を最大限に利用する必要があるのだ。


「お前達、2人のお陰で、こっちは、頭を使っているんだ。 全員が、幸福になる方策を提案している。 だから、フィルランカ、お前1人の感情で、計画を変更するわけにはいかない。 これは、お前の描く、幸せの為でもあるんだ。 だから、ここは、俺に、従ってもらう」


 ジュエルイアンの言葉に、言い返せないフィルランカは、俯いてしまっている。


 彼女にしてみれば、勇気を振り絞って、親娘の為にと思って、お願いしたのだろうが、その提案はあっさありと、ジュエルイアンに否定され、なおかつ、この提案は、フィルランカ自身の幸せの為でもあると言われてしまうと、言い返せないようだ。


(まだ、フィルランカの思考は、停止したままだな。 だったら、このまま、一気に話を持っていった方がいいだろう)


 だが、ジュエルイアンの提案には、3人の思惑以上に、ジュエルイアンの思惑が、大きく乗っているが、フィルランカには、そんな事は、感情の昂りからか、気がついていなかったようだ。


 ただ、ジュエルイアンの提案を受ければ、フィルランカは、カインクムの嫁として、この帝都で、新たな家と店で暮らす事になるのだ。


 結婚して、新たな家で、カインクムと2人の生活が送れると考えたら、ジュエルイアンの提案を強く否定することは、できずにいるのだ。





 確かに、自分の愛する人と一緒に暮らす事ができるのなら、それは有難い事だと、誰もが思う事なのだから、フィルランカにはメリットしかない。


 そして、新たな家で、新たな生活が可能となるなら、フィルランカには、願ってもないことになる。


 ただ、フィルランカとしたら、自分の希望が、好条件で叶うような方向で、話が進んでしまっているのだが、その条件の中に、エルメアーナと別れて暮らす事がある。


 フィルランカとカインクムの新生活の為に、エルメアーナが去っていく事になるので、フィルランカは、エルメアーナに対して、カインクムと別れさせる事になる。


 それか、フィルランカには、後ろめたさを感じさせているのだ。


 フィルランカは、カインクムとエルメアーナを別れさせる事が、たまらなく、切ない事だと思えたので、勇気を出してジュエルイアンに提案をしたのだが、ジュエルイアンに、あっさりと、否定されてしまったので、黙って、俯いたままでいた。


 そんなフィルランカの表情を見て、ジュエルイアンも困った様な顔をする。


「エルメアーナだって、もう大人なんだ。 お前とカインクムの行為は、驚いただろうけど、それは、人として、……。 いや、生物としての本能なんだ。 誰もが、必ず通る道なんだ。 時間が経てば、エルメアーナも、お前の事を理解してくれるはずだ。 ……。 だから、今は、俺に任せてもらえないか。 これは、きっと、時間が解決してくれる内容なんだ。 エルメアーナも、大人になれば、お前のことも許してくれるさ」


 今度は、優しくジュエルイアンは、フィルランカに伝えるので、フィルランカも、少しだけ、気持ちが楽になったのか、肩の力が、抜けたように見えた。


「それと、これは、俺だけの考えかもしれないが、生物的に考えると、夫婦になる為に、選ぶ権利は、雌に有ると俺は考えている。 鳥でも何でも、雄は雌にアピールして、自分の子供を宿してもらいたいと考えて、他の雄より、強くだったり、綺麗さを競って、雌の気をひく努力をしているんだ。 お前が、カインクムを選んだなら、カインクムには拒否権は無いんだよ。 だから、その辺は、安心しろ。 それに娘は、自分の親を夫として、選ぶ事は無い。 エルメアーナも男を選ぶが、エルメアーナが実の親であって、血のつながりのあるカインクムを選ぶことは無い。 今後、エルメアーナに好きな男ができても、それはカインクムではない。 エルメアーナが、男を選んだ時、お前が、エルメアーナの父親の面倒を見ているなら、エルメアーナも、その時は、安心して、好きな男に、嫁げることになる」


 フィルランカは、そこ迄、聞くと、さっきよりは心が晴れてきたようだ。


 その様子を見たジュエルイアンも、フィルランカが、少しずつ、落ち着いてきた事に、安心したように、表情を柔らかくしている。


「多分、今は、エルメアーナも、気が動転している。 ……。 うちのヒュェルリーンが見ているが、エルメアーナには、お前達の行為を見た以上の、何かがありそうだ。 小さい時に何かあったのかもしれない。 まあ、少し冷却期間を置けば、また、元通りになるかもしれないな。 だから、今は、エルメアーナの事は、俺達に任せておいて欲しい」


 今の一言で、ジュエルイアンは、自分の思惑を隠しつつ、3人に対して、正当性のある提案ができたと思ったようだ。


 そして、フィルランカは、少し間を置いてから、ジュエルイアンの話に頷いた。


「わかりました。 私は、ジュエルイアンさんの提案を、受け入れます」


 それを聞いて、ジュエルイアンは、ホッとした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ