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ジュエルイアンの提案とフィルランカ


 ジュエルイアンに、店の移転を迫られたカインクムは、唖然としている。


 空いた口が塞がらないと言うのは、今のカインクムの為にあるようだ。


 ジュエルイアンは、カインクムを、第3区画から、第9区画へ移動させ、ギルドの近くで、冒険者のための、武器や防具の、販売とメンテナンスをする鍛冶屋を用意する必要があった。


 ギルドからの要請によって、腕の良い鍛冶屋を、ギルドの近くで営業させる事になっていた。


 カインクムなら、問題無いので、誘っていたのだが、頑なに、ジュエルイアンの誘いを断っていたのだ。


 ジュエルイアンとしたら、フィルランカの希望である、カインクムの嫁になることと、その事で、問題になりそうなエルメアーナを、うまく利用して、口八丁で、カインクム達を言い含めるつもりだったのだが、店に入った時、カインクムがフィルランカに手をつけたらしい事を、エルメアーナに知られて、修羅場になっていた。


その事が、ジュエルイアンにとって、かなり、優位な状況になっていたのだ。


 ジュエルイアンは、カインクムを第9区画に移転させ、エルメアーナを、南の王国の王都で仕事をさせようと考えていたのだ。


 ジュエルイアンは、南の王国の始まりの村に転移してきた、ジューネスティーンのパワードスーツに使うパーツの加工を行う鍛冶屋か職人を探していたが、全く、見つからなかったのだが、ヒュェルリーンの提案で、エルメアーナを、連れてくることを考えていたのだ。


 そして、カインクムとエルメアーナを説得しに、早朝から、カインクムの家に来たのだが、カインクム達が、思った以上に進展していたことで、ジュエルイアンの思惑通りに、事が運ばれようとしているのだ。


 ジュエルイアンとしたら、この状況は、かなりの好機と見ていた。


 エルメアーナには、少し寂しい思いをさせる事になるが、フュェルリーンに懐いているエルメアーナなので、ヒュェルリーンを一緒に連れてきたことで、傷心のエルメアーナを説得できる、良い機会だと思えるのだった。


 ジュエルイアンは、自分にとって、とても都合の良い状況なのだが、それを表に出して、カインクムの不況を買うことを恐れ、表情は、深刻な表情をしている。


 だが、内心では、笑いが止まらないといった状況なのだ。




 カインクムは、ジュエルイアンの提案を聞いて、戸惑っている。


 ジュエルイアンとしたら、フィルランカの事もあり、まともな思考を巡らせられていない、この状況で、話を決めてしまいたいと思っているのだ。


「なあ、お前は、押しかけ女房といえど、娘の友人を嫁にもらうんだ」


 ジュエルイアンは、諭すように言うと、カインクムは、ドキッとしたようだ。


 その様子を、ジュエルイアンは、見逃さない。


「孤児のフィルランカなので、親は居なくとも、お隣の孤児院のシスター達は、どう思うかだ。 フィルランカは、10歳までは、あそこで暮らしていたんだろ。 ここに、このまま、住んでいたら、お隣さんとは、何らかの形で顔を合わせる事になるが、お前、お隣のシスター達と、まともに挨拶とか、話とかできるのか? エルメアーナが、顔を合わせる事になったら、エルメアーナは、どんな気持ちで、挨拶する事になると思うんだ?」


 カインクムは、反論できない。


 例え、フィルランカが、望んだ結果だったとしても、男のカインクムが、何食わぬ顔で、お隣のシスター達と話ができるとは、到底思えなかった。


 ましてや、エルメアーナが、ここで1人で暮らしたとしたら、今までとは違い、外に出る機会も増える事になる。


 そうなると、エルメアーナの気持ちは、どうなのかと考えると、カインクムは、やりきれない気持ちになったようだ。


 ジュエルイアンは、そんな部分を突いたのだ。


 案の定、カインクムは、黙ってしまったところみると、図星を突かれたと考えて良い。


 しかし、ジュエルイアンの提案は、カインクムには、都合の良い話なのだ。


 ただ、それについて、引っ掛かるのは、娘達2人のことになる。




 カインクムに都合の良い話が、娘達2人にも言えるのか?


 そんな疑問が、カインクムは考えているのだろう。


 その為、カインクムは、答えを出せないでいる。




 そんなジュエルイアンとカインクムの2人だけで、今後の話をしていると、台所から、フィルランカが、申し訳なさげに、リビングに入ってきた。


 2人のやり取りを台所から聞いていて、精神的に耐えられなくなったようだ。


 今回の顛末について、フィルランカが、カインクムに、夜這いをかけなければ、起こらなかった事件なので、フィルランカは、当事者として、申し訳なさそうにしつつ、2人の座るテーブルの前まで歩いてきた。


「今回は、私の軽率な、行いのせいで、ご迷惑をおかけして、大変申し訳ございませんでした」


 フィルランカは、頭を深々と下げた。


「今回の事に関して、カインクムさんには、一切の、落ち度はありません。 全ての責任は私にあります。 ですので、エルメアーナとカインクムさんを、一緒に生活できるようにさせてはいただけないでしょうか? その為なら、私が、ここを出て行きます」


「却下だ」


 フィルランカの話に、ジュエルイアンが即答する。


 フィルランカの提案は、ジュエルイアンの考えている内容から大きく外れる。


 カインクムとエルメアーナの親子を、一緒に暮らすようにさせるとなると、帝都か、南の王国の王都のどちらかで、暮らす事になる。


 そうなった場合、ジュエルイアンは、ジューネスティーンとギルドからの話の全てを解決する案を、また、新たに考える必要がある。


 そして、帝都においても、ジューネスティーンにおいても、必要なのは、技術のある職人なのだ。


 その両方の要求を満たす人を、探す苦労も増える事になる。


 ジュエルイアンとしたら、この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかないのだ。


「これは、ビジネスなんたよ。 感情で話をしているわけじゃない」


 ジュエルイアンは、強い口調でフィルランカの否定する発言をした。


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