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カインクム家の昼食


 フィルランカの昼食ができる頃、匂いにつられたのか、エルメアーナがリビングにきた。


 リビングに入ったエルメアーナは、テーブルに座って、水を飲んでいるカインクムを見ると、一瞬、ムッとしたような表情をした。


(父のやつ、また、飲んで……。 ああ、水差しが有るから、水でも飲んでいるのか。 それに酒瓶も無いから、酒は飲んでないな)


 だが、直ぐに、表情は和んだ。


「父、やっと、起きてきたのか。 昨日は、頭が痛いと言って、起きてこなかったが、今日は、大丈夫なのか?」


 何気ないエルメアーナの言葉だが、二日酔いで寝込んでいたカインクムにとっては、あまり、嬉しくない言葉だった。


 エルメアーナは、カインクムの飲んだ翌日に、二日酔いの時は、そんな事を言って、いつもからかっていたので、戻ってくる言葉も、いつもの不貞腐れた態度の言葉だと思ってなのか、身構えていた。


「ああ、すまないな。 やっと、起きれたよ」


 カインクムの答えに、エルメアーナは、意外な反応だったと思ったようだ。


 身構えていたエルメアーナは、カインクムの反応を見て、力を抜いて、ホッとしたようだ。


(うん、戻ったみたいだ。 だが、いつもと違うなぁ)


 エルメアーナは、カインクムの様子を見て、安心したようだが、何か引っ掛かっているようだが、直ぐに気を取り直した。


「ちょっと、フィルランカを手伝ってくる」


 カインクムは、台所に向かったエルメアーナを、目だけで追うが、直ぐに視界からエルメアーナは消えた。


 そして、4人掛けのテーブルを見る。


(これからは、あいつらの婿を探さないとな。 できれば、2人に婿を取れれば、朝夕はダメでも、昼は、ここで、フィルランカとエルメアーナと、2人の婿達とここで、昼食を取ることもできるだろう。 ……。 年を重ねたら、フィルランカもエルメアーナも子供ができて、昼間は、ここに子供を連れてきて、育てながら、店番と鍛治をするのか)


 カインクムは、物思いに耽りつつ、二日酔いで渇いた喉を、水で潤していくので、台所から戻ってきたエルメアーナに気がついていなかった。


「父、食事だ。 ボーッとせずに、さっさと食べるぞ」


 黄昏気味のカインクムを見たエルメアーナが、声をかけた。


「ボーッとしていても、仕事は終わらない。 父が二日酔いの間、私が、頑張ったのだ、寝ていた間の分は、父にも、働いてもらうからな」


 カインクムは、エルメアーナの言葉で、現実に戻ったようだ。


 テーブルに昼食を置いているエルメアーナをカインクムは見た。


「ああ、そうだたな。 休んでいる間、仕事をしてくれて、ありがとうな。 午後からは、いつも通りにさせてもらうよ」


 カインクムは、素直にエルメアーナに答えた。


 すると、エルメアーナは、まるで、不思議なものを見たような表情をして、カインクムを見た。


 その視線を受けて、カインクムは、驚いたようだ。


「な、何だ?」


 カインクムは、エルメアーナの表情を見て、思わず、声を発したが、エルメアーナは、一瞬、戸惑ったような表情をした。


「あ、ああ、父が、なんだか、素直な反応をしたから、少し驚いている」


 その答えにカインクムは、ムッとしたような表情をした。


「いや、お前の表情は、幽霊でも見たような表情だったぞ。 そこに、居てはいけないものを見たような顔をしていたのに、少し、驚いているはないだろう」


「あ、ああ、すまない」


 エルメアーナも、素直に謝った。


(今日の父の様子は、なんだか、変だ。 卒業祝いの宴会で、誰かに何かを言われたのか? いつもの、二日酔いの後は、不貞腐れたような態度なのに、なんで、今日は、こんなに素直なんだ?)


 エルメアーナは、カインクムが気になったようだ。


 テーブルに台所から持ってきた食事を並べながら、エルメアーナは、時々、カインクムの様子を伺っていた。


 すると、残りの料理を持って、フィルランカが、リビングに入ってきた。


 そして、エルメアーナが、なんだか、カインクムを気にしているので、不思議そうに思ったようだが、持ってきた料理をテーブルの上に置いていった。


 フィルランカは、手際よく料理を置くと、自分の席に座るのだが、エルメアーナは、まだ、終わってなかったので、立ち上がってエルメアーナの残りの料理をテーブルに置いた。


(なんなのかしら、エルメアーナったら、……。 変なの)


 不思議そうにエルメアーナを見た。


「エルメアーナ。 料理も揃ったから、食べましょう。 だから、トレーを置いて、座りましょう」


 フィルランカの言葉で、エルメアーナは、我に返ったようだ。


「あ、ああ、すまない。 そうだな。 昼食を食べよう」


「うん。 食べましょう」


 フィルランカは、エルメアーナに笑顔を向けた。


「そうだぞ、エルメアーナ。 フィルランカの作った美味しい料理を食べようじゃないか」


 カインクムもエルメアーナに昼食を促した。


 だが、エルメアーナには、そんな、カインクムが、いつもと違うと思ったようだ。


 エルメアーナは、苦笑いをカインクムに返すと、自分の席に座って、昼食に手を付けるのだが、父であるカインクムが、妙に気になるようだった。


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