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カインクム


 カインクムは、フィルランカの告白があって、直ぐは、どうしたら良いのかと、悩んでいたのだが、翌日からのフィルランカの対応が、そんな話が無かったかのような対応だったため、カインクムも、それに合わせるように、普通に接するようにした。


 いや、フィルランカのお陰で、カインクムも普通に接する事ができたのだ。


(あの後、フィルランカが、意識してしまったら、俺も、きっと、意識してしまっていただろうが、フィルランカが、いつも以上に普通に接してくれたから、助かった)


 カインクムには、もし、フィルランカが、恥ずかしそうにしたり、視線を意識して逸らすような対応をされてしまったら、完全に、フィルラんかを意識してしまい、その様子は、娘のエルメアーナにも、分かってしまったと思われるのだ。


 もし、エルメアーナが、2人の様子がおかしい事を、カインクムに聞いてきた場合、カインクムは、エルメアーナに、シラを切り続ける自信がなかったのだ。


 そのフィルランカが10歳の時の約束を、エルメアーナに知られた場合、3人の関係は、最悪な状況になってしまっていたと考えられるのだ。


(フィルランカの、あの普通すぎるほどの対応があったから、ここまで、いつも通りの3人家族でいられたのだろうな。 本当に、フィルランカには助けられた)


 カインクムは、フィルランカの対応があったことで、ホッとしていたのだ。




 そして、フィルランカの行動に、カインクムは感謝したのだが、10年後の約束について、卒業後まで延長したのだが、その期日が来た時、対応をどうするか悩んでもいた。


 カインクムとしたら、フィルランカに、どこかの商人の三男坊以下と、恋仲になり、できれば、カインクムの店をフィルランカと一緒に引き継いでいってもらいたいと思っていた。


 それが、フィルランカは、10歳の時にした、カインクムの嫁になるという約束を、叶えてもらいたと思っていた事で、カインクムの思惑は崩れ去ったのだ。


(何で、俺なんだ。 24歳も歳の差がある。 しかも、エルメアーナと同じ歳だぞ。 何で、あいつは、俺なんかを選ぶんだ)


 カインクムは、素直に、フィルランカの願いに応えることは、難しいと考えている。


 一般的に考えて、親子程の歳の差のある結婚は、皇族と貴族であれば、後妻か側室であれば、大いにありうるのだが、帝国臣民となると、そんな例は、かなり低くなり、カインクムには、そんな夫婦があることを知ることはなかった。


 そんなこともあり、フィルランカの望みを叶えた時に、周囲に、そのような事例が無いこともだが、それ以上に隣の孤児院に対しても、あまり、良い気がしないのだ。


 フィルランカを養女として、カインクムの家に向かい入れたのだ。


 その際、フィルランカは、カインクムの嫁になりたいから、養女は嫌だから、嫁にしろと言ったのを聞いているのだが、カインクムにしても、孤児院のシスターにしても、24歳下のフィルランカを、カインクムが嫁にするわけはないと思っていた。


 その時の、フィルランカの話に合わせるために、カインクムは、10年後の約束としたのだと、シスターも分かっていた。


 シスターとしても、カインクムが、そんな10年後の約束を果たすとは思っていなかったと思われるのだ。


 子供を、程よくあしらうためについた嘘だと、思っているに違いないのだ。


(もし、フィルランカを嫁にするとしたら、シスターに何と言って、言い訳をしたらいいんだ。 しかも、隣に住んでいるんだぞ。 フィルランカを嫁にしてから、シスターに、どんな表情をして、顔を合わせればいいっていうんだ)


 カインクムとしたら、世間体が非常に気になっているのだった。


(それに、そんな歳の離れた後妻をもらったなんて話を、この帝都で、聞いたことなんて無いぞ。 そんな事になったら、フィルランカの食べ歩きの噂どころじゃないぞ。 ……。 ん、フィルランカの食べ歩きの噂は、いいお嫁さんになるために、美味しい味を覚えるために、食べ歩いていた。 ……。 その、フィルランカの食べ歩きって、……。 俺の為に行っていたのか? ……)


 カインクムは、フィルランカの考えていたことが、徐々に繋がってきた。


 食べ歩いていたのは、美味しい味を覚えるためにあって、そして、それは、良いお嫁さんになる為だと言っていた。


 それは、周りには、健気な少女というイメージを植え付けていた。


 カインクムは、フィルランカの未来の為に、お小遣いまで渡して、良い嫁になる為の努力に協力していたとなっていたのだが、そのフィルランカをカインクムが嫁にしてしまったら、10歳の少女を家に入れて、10年かけて、手懐けていたと思われるだろう。


 それで済むなら、構わないが、下手をしたら、10歳のフィルランカをベットに呼ぶために養女という名目で引き取ったと言われかねないのだ。


 カインクムには、そんな趣味は無い。


 純粋に、フィルランカの才能を伸ばしたい。


 そして、あわよくば、エルメアーナと一緒に、カインクムの鍛冶屋を2人で、継いでもらえればと思っていたのだ。


 それが、崩れかけているのだ。


 カインクムは、そんな下心があって、フィルランカを養女にしたのではなかった。


 純粋に娘であるエルメアーナの事を考えて、フィルランカを迎え入れたのだ。


 それが、フィルランカを嫁にすることになったら、そんな美談のような話が、卑猥な男が幼い女の子を、身体目当てで家に招き入れたとか、自分の思ったように育てて、一番美味しく熟したところで、自分のものにしてしまったとかという噂が飛び交うことが、目に見えていた。


 娯楽に飢えた人達にとって、こんな面白い話は無い。


 それをカインクムが提供する事になるのだ。


 カインクムとしたら、そんな話題を提供する事に耐えきれないのだ。


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