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ギルドへの登録 5


 メイリルダは焦った。


 それは、シュレイノリアが、ギルドへの登録を行う魔道具を見て構造なり原理なりを教えろと聞いてきた事にある。


 それを聞いていた受付嬢達も、転移者の少女が、そんな事を聞いてくるのかと驚いていた。


「あ、あのね、シュレ。これは、本部から支給されている魔道具なのよ。だから、この魔道具の中がどうなっているかは、ここに居る誰も知らないの」


 メイリルダは、恐る恐るシュレイノリアに答えた。


 メイリルダとしたら、そんな魔道具に対して、その中身がどうなっているかなんて事は、全く関心がなかった事だった。


 むしろ、言われた通りに使えていたら自分の受付嬢としての仕事はこなせるわけだから、その魔道具が、どんな原理で動いているかとかは考えたこともなかったので、シュレイノリアに原理を聞かれて困っていた。


「シュレ、そんな事を、メイに聞いてもかわいそうだよ。メイは、魔道具を作る人じゃないんだ。使う人なんだよ。道具を使うからといって、その道具が、どんな方法で作られたかとか、誰も知ろうとはしないよ」


 メイリルダに食って掛かるように質問していたシュレイノリアを、ジューネスティーンが宥めたのだが、シュレイノリアは納得できないという表情をしていた。


「世の中の道具は、全て、便利にするためにあるけど、それを誰もが原理も構造も作り方も知って使っているわけじゃないよ」


 ジューネスティーンの言葉にシュレイノリアは、納得したいようだが納得できずにいるようだ。


 それは、シュレイノリアの知識欲が、その魔道具の原理を知りたいと願っているので言われている事は、もっともな事なのだが、自分の知識欲が、それを上回ってしまい納得できずにいるのだ。


「じゃあ、この魔道具の中を見てみたい」


 シュレイノリアは、代案を出してきたが、それを聞いていたメイリルダも、周囲の受付嬢達も顔を青くしていた。


「シュレ、それは、絶対にダメよ。だって、これは、本部から支給されたものだから、もし、壊れてしまったら、本部の人に直してもらわないといけないのよ。だから、絶対にダメよ」


 メイリルダは、慌ててシュレイノリアに言うのだが、シュレイノリアの知識欲は抑えられないようだ。


 シュレイノリアとしては、初めてみる魔道具を何としても知りたいと思う気持ちは抑えられずにいた。


「だったら、誰に聞けば良い?」


 シュレイノリアなりの妥協案を出したつもりのようだが、メイリルダは、何だといった様子でシュレイノリアを見た。


 それが、シュレイノリアにはもどかしく感じたようだ。


「だから、この魔道具についての説明を誰に聞けば良いのかと聞いている」


 メイリルダは、その質問の答えを知らないので、困って助けを求めるように周りにいる受付嬢達の方を見るのだが、誰もメイリルダと目を合わそうとしなかった。


 それは、周囲の受付嬢達もメイリルダも、その答えを知らないからなのだが、そのことに、ジューネスティーンは気がついたようだ。


「なあ、シュレ。これは、ギルドマスターのエリスリーンに相談した方がいいんじゃないか? ここにいる人達は使い方は知っていても、それを自分たちで作ったわけじゃないだろうし、中身の事まで聞いても答えは出ないよ」


 それを聞いて、シュレイノリアの表情が少し晴れたようだ。


「エリスリーンなら、説明してくれるのか?」


 ジューネスティーンは、エリスリーンなら説明できなくても、何かヒントになる事か、教えてくれそうな人を紹介してくれるかもしれないと思って提案したのだが、シュレイノリアは、それを通り越してしまって答えを求めているようだった。


「あ、いや、エリスリーンも説明は無理だと思うけど、説明できる人を紹介してくれるかもしれない、……、かな」


 流石にジューネスティーンも最後の方は不安そうに答えた。


「だったら、今から、エリスリーンのところに行こう!」


 そう言うと、シュレイノリアは動き出そうとしたのだが、それを、メイリルダは慌てて止めた。


「ね、ねえ、シュレ。説明を受けるにしても、その前にギルドへ登録しておかないかな。あ、ほら、使ってみた感じとかを覚えておいた方が、説明を聞くにしても、いいんじゃ、ないかなぁ〜、なんて、思うんだけど」


 メイリルダとしては、シュレイノリアのギルド登録を早く済ませたいということと、ギルドマスターであるエリスリーンに、アポイント無しで面会するのは良くないと思ったようだ。


 そして、同僚の受付嬢の方に視線を送ると、今度は、先輩が1人目を合わせてくれたので、慌てて顔の前に手を合わせてお願いするような仕草をしたので、その先輩は分かったというように笑顔をメイリルダに向けると奥の方に歩いていった。


 メイリルダは、シュレイノリアに視線を移すと、シュレイノリアの興味は登録のための水晶に目が行っていた。


「メイ、さっさと済ませろ。登録の時の状態も確認しておくのだ」


 メイリルダは、エリスリーンへのアポイントを頼めた事と、その時間を得るために、シュレイノリアのギルドへの登録という僅かな時間を稼げたことに安堵した。


 そして、魔道具の操作を始めた。


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