リズディアとイルルミューラン
フィルランカの、帝国大学卒業まで、結婚の話しは保留となった。
そのお陰なのか、その後、フィルランカは、高等学校以上に授業に真面目に取り組んでいた。
カインクム達との生活も、いつも以上に、普通に接してきたので、カインクムも、最初は、オドオドした様子でいたが、フィルランカが、あまりに普通に接していたので、カインクム自身も、落ち着いた様子で、フィルランカの大学時代は、2人の結婚について、話をすることなく過ごしていた。
そして、フィルランカは、結婚の話をしない代わりに、学校の授業に集中するようになった。
その甲斐あり、高等学校時代と同様に、帝国大学でも良い成績を残すことになった。
そして、フィルランカは、常にモカリナとイルーミクと行動を共にしていたこともあり、フィルランカの勉強熱心さが、2人にも良い方向に影響を与えた。
フィルランカが、空き時間に授業の復習を行う事が、多いこともあり、2人もそれに付き合うことが多くなった。
特に昼休みの食事中も、フィルランカは、授業の復習をする事が多くなり、2人がそれにつられて、一緒に勉強をする。
最初こそ、フィルランカにつられて、復習していたようだが、それが、いつの間にか、3人とも、積極的に、行うようになっていた。
そんなこともあり、3人の成績は、常に上位に君臨していた。
そのため、リズディアは、フィルランカをイスカミューレン商会に呼ぼうと必死だった。
義妹のイルーミク、それと、帝国大学卒業後は、イスカミューレン商会に入る約束をしている、ナキツ侯爵家の四女のモカリナと、同時にフィルランカも、イスカミューレン商会に入れようと誘っていた。
しかし、フィルランカは、リズディアの話を、毎回、断っていた。
リズディアとしたら、何とか、ジュエルイアン商会の傘下から、イスカミューレン商会の傘下に引き入れようと、フィルランカにも、カインクムにもアプローチは続けていた。
カインクムは、ジュエルイアンに個人的な恩を感じていることもあり、そのため、イスカミューレン商会に、全く、靡く様子は無かった。
そして、フィルランカについても、カインクムへの恩は、一生をかけても返しきれないと、リズディアの誘いを断っていたのだ。
ある時、リズディアは、自分達夫婦の寝室で2人でくつろいでいた時、夫であるイルルミューランに愚痴をこぼした事があるのだ。
「もう、カインクムさんも、フィルランカも、なんで、あんなに頑なに私の誘いを拒否するのよ! カインクムさんには、今の3倍の広さの工房と、それとは別に家も用意するって言ったのよ。 家だって、下級貴族が住める程度の、良い物件だったのに、断られてしまったわ」
リズディアは、ムシャクシャした様子で、イルルミューランの前で、独り言のように言うと、イルルミューランは、リズディアのそのイライラした様子を、可愛い子供でも見るような目で見ていた。
「ねえ、リズ。 君は、北の王国の皇太子からの縁談を2度も断ったけど、それは、何でだったの?」
イルルミューランは、面白そうにリズディアに聞くと、北の王国との縁談の事を思い出して、少し、ムッとしたような表情をした。
「それは、……。 政略結婚が、イヤだったからよ」
リズディアにしては、珍しく、話し方が、ギクシャクしていた。
そして、時々、イルルミューランを上目遣いで見ていた。
「本当に、そうだったの?」
その言葉を聞いて、リズディアは、顔を赤くしていた。
30歳をとっくに過ぎたリズディアが、まるで、思春期の少女のような表情で、恥じらいを見せていた。
「それは、……。 嫌! 言いたく無い!」
そう言って、そっぽを向くと、イルルミューランは、そのリズディアを可愛いと思った様子で、クスクスと笑った。
「リズ。 きっと、その時の気持ちと、フィルランカの気持ちは一緒なんだよ。 だから、どんなに、フィルランカを、うちの商会に誘っても、なびいてくれないよ」
イルルミューランは、少し可笑しそうに話すと、リズディアは、面白くない表情をした。
「な、なんで、なのよ!」
リズディアは、膨れた様子でイルルミューランに聞き返した。
だが、イルルミューランは、答えるではなく、可笑しさを堪えながら笑うだけだった。
「ねえ、ちょっと! ちゃんと、説明しなさいよ!」
リズディアが、少し怒り気味に、聞くので、イルルミューランは、仕方なさそうに、笑いを堪えていた。
「じゃあ、リズ。 北の王国の縁談を断った時の、建前じゃなくて、本当の理由を、ここで、話してくれたら、私も、フィルランカについて、私の見解を話すよ」
イルルミューランは、可笑しくて仕方がなさそうに、リズディアに聞いた。
一方、リズディアは、その話を聞いて、面白くないと思ったようだ。
(ば、バカな事を! 何で、私が、当人の前で、好きな人が居たから、縁談は断りましたって言わなきゃいけないのよ!)
そのリズディアの様子を見ていたイルルミューランは、何を考えているのか分かったらしく、堪えていた笑いを抑えきれなくなり、大きな声で笑い出してしまった。
それが、リズディアには、気に食わなかったようだ。
自分の椅子から立ち上がると、イルルミューランの座っている椅子の前にきて、真っ赤な顔で訴えるような表情をする。
そのリズディアを、笑いながら、イルルミューランは、見上げる。
「そ、そんなこと、本人の前で、言える訳ないでしょ」
そう言うと、リズディアは、イルルミューランの両頬を両手で抑えると、イルルミューランの唇を自分の唇で覆うようにして、笑いを止めた。
イルルミューランは、突然、リズディアが、キスをしてきたので、驚いていた。
しばらくして、リズディアは、イルルミューランから、唇を離す。
「理由を、あなたの前で、言うことはできません」
その様子を見て、イルルミューランが、微笑みつつ、リズディアに腕を回して、自分の膝の上に座らせた。
「分かっただろ。 人には、誰にでも言えない秘めた思いが有るのだからね。 君なら、分かるはずだろ」
リズディアは、恥ずかしそうにした。
「はい、旦那様」
そう言うと、リズディアは、イルルミューランに両腕を回して、体を密着させた。
そして、イルルミューランの耳元に口を近づける。
「今日は、私が気がすむまで、付き合ってもらいます」
それを聞いて、イルルミューランは、ゾッとしたようだ。
「朝まで、時間はたっぷりありますから、2人で、隅々まで、確認しましょう」
リズディアは、イルルミューランに夜のお誘いをしたのだが、イルルミューランは、少し引いている。
(あー、しまった。 こんな時のリズは、朝まで、止まらないんだ。 何とか、リズを満足させないといけないけど、腰だけじゃあ、絶対に無理だよなぁ。 ……。 からだ全体を使って、喜ばせなきゃいけないのか)
イルルミューランは、自分の妻の淫らな行為と、その後の行動について、思いを巡らせたみたいだ。
(ええい。 ここまできたら、徹底的にリズに、女の喜びを与えてやる)
そう言うと、自分の膝の上に座っているリズディアを両手で抱えると、一気に立ち上がった。
リズディアは、突然、イルルミューランが動いたので、慌てて、抱きついたままの腕をキツくした。
立ち上がったイルルミューランは、そのまま、ベットの前に来ると、リズディアをベットに放り投げる。
「キャッ!」
リズディアは、小さな悲鳴を上げっると、その上にイルルミューランが、覆いかぶさるようにして、ベットに入ってきた。
2人は、軽いキスをする。
「それじゃあ、今日は、朝まで楽しもうじゃないか」
「はい、旦那様」
2人は、それだけの言葉を交わすと、また、キスをして、リズディアは、両手をイルルミューランに回すと、イルルミューランは、リズディアの衣装を脱がせていた。
ただ、リズディアは、頭から、かぶるタイプの膝丈のワンピース型のネグリジェだけだったので、それを脱がせると、全てが露わになった。
それを脱がせると、自分の寝巻きも脱ぎ捨て、リズディアに体を密着させていくのだった。




