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カインクムを呼びに行くフィルランカ


 用意できた料理は、エルメアーナがリビングのテーブルに運んでくれた。


 フィルランカは、自分のお弁当を鞄に入れると、カインクムとエルメアーナのお昼を保管庫に入れておく。


 エルメアーナが、朝食を運んでいると、フィルランカは、カインクムが、まだ、リビングに来てないことに気がついたようだ。


「エルメアーナ、カインクムさんは?」


「ああ、部屋の中で物音がしていたから、多分起きていると思う。 工房にでも行っているんじゃないのか?」


 フィルランカは、何か、気になったようだ。


「じゃあ、カインクムさんを呼んでくるから、エルメアーナは、料理を並べておいてね」


「わかった」


 フィルランカは、エルメアーナにお願いすると、リビングを出て、工房に向かった。


 昨夜の事があったので、あまり、カインクムに対して、顔を合わせにくいようでもあるが、フィルランカは、それ以上に、カインクムと距離が開いてしまう事を嫌ったようだ。


 工房に入る前に、一瞬、躊躇ったようだが、大丈夫だと、言い聞かせるような表情をすると、工房の扉を開いた。




 工房の中には、カインクムが、黒板を睨んでいた。


 フィルランカは、昨日の話しは無かったように、いつものように笑顔をカインクムに向けた。


「おはようございます、カインクムさん。 朝食の準備ができましたから、一緒に食べませんか」


 そのフィルランカの、いつも通りが、カインクムには、少し怖かったようだ。


「あ、ああ」


 フィルランカは、カインクムの返事を聞くと、ホッとした様子で、帰ろうとする。


「な、なあ、フィルランカ」


 カインクムは、帰ろうとしたフィルランカを、慌てて、引き止めた。


 フィルランカは、いつもの表情で、カインクムを見て、カインクムの次の言葉を待っていた。


「あ、いや、なんでもない。 すぐにいくよ」


 フィルランカは、笑顔を向けた。


「はい、じゃあ、お待ちしております。 私も、学校に行くので、早く、食べて、片付けたいと思います」


 昨日の事は、何も無かったというように、フィルランカは、対応した。


 その様子を見て、カインクムは、何とも言えない表情をした。


 そして、フィルランカは、工房を出ようとする。


「あ、あのな!」


 カインクムは、また、フィルランカを引き止めた。


 フィルランカは、今度は、返事をする代わりに、視線をカインクムに向けて、何でしょうかという表情をした。


「あ、あのなぁ、片付けが、間に合わない時は、俺とエルメアーナがするから、言ってくれ」


 それを聞いて、フィルランカは、不思議そうな表情をした。


「それは、今までも、お願いしていましたから、時間の無い時は、よろしくお願いします」


 カインクムは、時間の無い時は、エルメアーナと2人で、朝食の片付けをおこなっていたので、フィルランカは、そんな事を、今更言われてもと思ったようだ。


 そこまで言うと、フィルランカは、工房を出て行ってしまった。


 それをカインクムは、名残惜しそうに見送っていた。


(あー、行ってしまった。 フィルランカに、ちゃんと話をしておかないと、よくない。 今が、チャンスだったはずなのに、言いそびれしまった)


 カインクムは、残念そうな表情をする。


(だが、あのフィルランカのいつも通りは、何なんだ。 昨日の事など、何も無かったような様子だったじゃないか。 何も影響は無いのか。 ……。 まるで、俺は、フィルランカに手球に取られているようだ)


 カインクムは、自分の情けなさに、ガッカリしたような表情をした。




 一方、カインクムとの話を終わらせた、フィルランカは、工房の扉を閉めると、頬を両手で覆っていた。


(きゃー、カインクムさんと話をしてしまった。 いつものように振る舞ったけど、カインクムさんに、私のドキドキは、伝わって無かったよね。 もー、顔、赤く無かったかしら)


 フィルランカは、そのまま、廊下を歩き出すと、今度は、リビングの扉を見た。


(いけない! 今度は、エルメアーナに、バレないようにしないといけないわ。 まだ、エルメアーナに、私とカインクムさんの事を、知られてはいけないのだから、……。 そうよ、いつもの表情よ。 ちゃんと、いつもフィルランカじゃないと、いけないのよ。 さあ、冷静に、冷静に)


 フィルランカは、深呼吸しつつ、廊下を歩いて、リビングの扉の前に立つと、更に、もう一度、大きく深呼吸すると、扉を開けて、中に入っていった。


 リビングには、エルメアーナが、朝食の準備を終えるところだった。


「カインクムさんも、直ぐに来るわ。 さあ、席に付きましょう」


 フィルランカは、何も無かった様子で、エルメアーナに声をかけた。


「おお、フィルランカ。 父を呼んでくれたのか?」


「ええ、工房に居たわ」


「ありがとう。 さあ、今日も、フィルランカの美味しい朝食からはじまる。 フィルランカの朝食は、とても美味しいから、本当に今日の活力に繋がるんだ」


 エルメアーナは、嬉しそうに、フィルランカに答えた。


「はいはい、ありがとう。 じゃあ、3人揃ったら、食べましょう」


 フィルランカもテーブルの自分の席の方に行く。


 2人は、嬉しそうにしつつ、席について、カインクムの来るのを待っていた。


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