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カインクムの不安とフィルランカの思い


 フィルランカは、経済的な負担について、カインクムが否定してくれたことに、ホッとしたようだ。


 学校の学費については、奨学金を受けることも、フィルランカは、考えていたので、学校に確認したところ、成績的な問題は無い事を確認していた。


 そして、申請が必要な場合は、直ぐに、手続きができると、確認していたのだ。


 その際は、カインクムにも学校を訪れてもらう必要があったのだ。


「そうでしたか。 私の学費が、カインクムさんの負担になっているのだったら、奨学金を受けて、卒業しようかと思ってたんです。 カインクムさんのお店を大きくするためなのだから、きっと、大学の授業の内容は役に立つと思ったので、卒業だけはしたいと思ってたんです」


 フィルランカは、帝国大学の卒業を目指している事を、あらためてカインクムに伝えた。


「あ、ああ、卒業して、この店を大きくしてもらうのだから、そのための学費は、俺が、絶対に出させてもらうさ。 だから、奨学金を借りなくても大丈夫だ」


 カインクムは、帝国大学の学費の話なので、少し、ホッとしたのか、落ち着いた様子で答えた。


(でも、最近のカインクムさんは、どうしたんだろう。 以前のように、私達と、お話ししてくれないのは、なんでなんだろう)


 フィルランカは、カインクムの様子が、フィルランカの学費についてでは無かったことで、ホッとしたのだが、最近のカインクムの様子がおかしい原因が、何なのか気になった。


(カインクムさんは、何で、最近、お話ししてくれないのかしら。 私が大学に入ってから、私ともだけど、エルメアーナとも、お話しする機会が少なくなっているわ)


 フィルランカは、カインクムの様子のおかしい理由について、思い当たる事が無くなってしまった。


 そのため、フィルランカは、不安になった。


(約束の日が近くなってきたのだから、私は、もっと、カインクムさんとお話がしたいし、そう、エルメアーナも含めて、3人で団欒がしたいのに、なんでなのかしら)


 フィルランカは、これからの事を、時々、考えていた。


 フィルランカは、カインクムとエルメアーナの3人で、楽しく暮らすことを思い描いていたので、その中で、カインクムとも、楽しく話しながら生活がしたいと思っていた。


 それが、最近、カインクムが、2人を避けているように思えた事が、フィルランカに不安を与えていたのだ。


(カインクムさんは、何か不安なことがあるのかしら? 私は、もう直ぐ、カインクムさんの、……。 奥さんに、なるんだから、少し位は、カインクムさんの、心配している、事を、聞いても、いいのかも、しれないわ)


 フィルランカは、少し恥ずかしそうな表情をしていたが、何か自分を奮い立たせるようにしつつ、カインクムを見る。


「あ、あのー」


 フィルランカは、恥ずかしそうな表情のまま、カインクムに話しかけた。


「ん? どうした?」


 カインクムは、奨学金の話によって、約束の事が、頭から離れたので、いつもの様子で答えた。


「あ、あのー、実は、最近、カインクムさんと、会話が、少なく、なったと、思って、……。 何か、悩んでいらっしゃる、のか、な、と、思って、……」


 フィルランカは、恥ずかしそうなまま、カインクムに話しかけた。


 すると、カインクムの表情は、引き攣ったようになった。


「私で、よければ、話、位は、聞いて、あげられ、ると、思い、ま、す」


 カインクムに話終わると、フィルランカは、下を向いてしまった。


(きゃー、恥ずかしい。 なんだか、私、カインクムさんを気遣っているわ。 うわー、これ、絶対に顔が、赤くなっているわ)


 フィルランカの言葉に、カインクムは、固まってしまったようだ。


 カインクムとしたら、フィルランカとの約束の事が気になっていた事と、そして、年頃になった、フィルランカが、とても綺麗に見えていた事もあり、そして、自分の娘である、エルメアーナも、同様に可愛く見えてしまっていたのだ。


 そんな年頃の娘達が、カインクムには、眩しくて、話をするだけでも、意識してしまい、まともに話すこともままならない状況だったのだ。


 そんな自分の気持ちを2人に知られてしまうことが、恥ずかしく思っていたので、可能な限り、2人の娘達から距離を取るようにしていたのだ。


 しかし、今、カインクムにフィルランカは、悩みを聞くと聞かれて、自分の悩みの事を思い出して、カインクムも恥ずかしくなってしまっていたのだ。


 そのため、カインクムも言葉を返せずにいると、フィルランカは、その間が、とても、耐えられないでいた。


(ど、ど、どう、しよう。 カ、カインクムさんに、……。 な、なんだか、不味い事を聞いてしまったのかしら?)


 フィルランカは、この場を、どう取り繕おうかと、思案を巡らせていた。


「あ、あのー、わ、わた、しは、……。 もうすぐ、10年になります。 その時は、カインクムさんの、……。 カインクムさんの、……」


 フィルランカは、顔を真っ赤にして、下を向いたまま、カインクムに話しかけていた。


 そして、フィルランカは、顔だけでなく、耳まで赤くしていたのだが、意を結したように、カインクムを見る。


「私は、もう直ぐ、カインクムさんのお嫁さんになるんです。 だから、カインクムさんの、そんな不安そうな態度は、私も不安になるんです。 だから、カインクムさんの不安も、私が、分かち合いたんです」


 フィルランカは、そこまで言うと、顔を両手で覆ってしまった。


(恥ずかしぃ〜っ! 言ってしまった)


 フィルランカの恥ずかしそうな態度とは、裏腹に、カインクムは、そのフィルランカの言葉に、引き気味になってしまった。


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