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話をするカインクムとフィルランカ


 夕食が終わった後、カインクムは、工房に行った。


 火の後始末の確認と、スケジュールの確認を行う。


 どちらも、エルメアーナが、夕食前に行なっているのだが、カインクムも行う。


 本格的に、エルメアーナが、工房を使い始めてから、火の後始末は、お互いに時間をズラして確認をするようにしている。


 そして、カインクムは、最近、エルメアーナに仕事を任せるようにしていたので、火の後始末と、スケジュールの様子を確認するため、工房に入ったのだ。


 そして、必要であれば、調整を行うようにしていた。


(エルメアーナも、もう、一人前だな。 火の後始末も、スケジュール管理も、全く、危なげないな。 これなら、鍛冶屋としてエルメアーナが、製造を担当して、フィルランカが、店番をすることで、2人でやっていけそうだ)


 カインクムは、エルメアーナの仕事を確認して、安心していると、工房の扉が開いた。


「エルメアーナか? 火の後始末は、確認したから、大丈夫だぞ」


 カインクムは、黒板に書かれたスケジュールを見つつ、声を掛けた。


「ん? どうした、エルッ!」


 カインクムは、扉の方に視線を送ると、そこには、エルメアーナではなく、フィルランカが、恥ずかしそうに立っていた。


「あ、ああ、フィルランカか。 てっきり、エルメアーナかと思った」


 カインクムは、工房にフィルランカが来るとは思ってなかったので、少し驚いた様子で答えた。


 フィルランカは、カインクムに声を掛けられるのだが、恥ずかしそうにしながら立って、カインクムの方に向いていた。


「ど、どうした? 何か、用事か?」


 カインクムは、普通に応対をしたのだが、カインクムには、何か、思い当たることがあったようだ。


(このフィルランカの様子、ま、まさか、10歳の時の約束の事を言いにきたのか!)


 カインクムは、焦ったような表情を浮かべた。


(も、もし、そうだったら、……。 どうしよう。 な、なんて、答えれば、いいんだ)


 カインクムは、最近、ジュエルイアンから、フィルランカとの約束をどうするのかと、聞かれていたことが、頭を過ったのだ。


 そのため、次の言葉が、カインクムには思いつかなかった。


(まずい、どうしよう。 何か、喋らないと、……。 何か、違う話をして、気を逸らさないと)


 恥ずかしそうにしている、フィルランカを見たカインクムは、約束の事が頭から離れないでいたのだ。


「お、そ、そうだ。 だ、大学の授業は、どうだ? 難しいみたいじゃないか」


 カインクムは、夕飯の時にフィルランカが、エルメアーナと話をしていたことから、咄嗟に話の話題を作ったようだ。


「エ、エルメアーナが、言っていた、分からなくても、覚えていると、後で、その分からないことが繋がるってことは、よくある事なんだ。 だから、今は、分からなくても、きっと、後で繋がって、理解できるはずだ。 だから、焦らず、勉強するんだぞ」


 カインクムは、上手く誤魔化したと思ったようだが、フィルランカは、少し寂しそうな表情をした。


(ん、フィルランカの様子が変だぞ。 何か、不味いことを言ってしまったのか?)


 フィルランカの様子にカインクムは、不安になったようだ。


「な、なぁ、何か、あったのか?」


 フィルランカは、モジモジしつつ、少し下を向いていた。


(これは、どういうことなんだ。 ま、まさか、……。 やっぱり、約束の話なのか)


 カインクムは、フィルランカが、一言も話してないこともあって、考えが、一点に向かっていったようだ。


「あ、あのー。 わ、私の学費、家の、負担に、なって、いません、か」


 フィルランカが、口を開いた。


 カインクムは、一瞬、とうとう、約束の話を、フィルランカが、するのかと、覚悟を決めて、緊張していたのだが、話が、自分の考えていた内容と違うと思えたのか、表情から、緊張がとれた。


 肩の力が抜けて、ホッとしたようだ。


(な、なんだ。 学費か。 約束の話じゃ無かったのか)


 カインクムは、少し気が抜けたようだが、フィルランカは、その沈黙が苦痛だった。


 心配そうに、カインクムを見て、今にも、泣きそうな表情になっていた。


「フィルランカ。 学費の心配は、しなくても良い。 今は、俺と、エルメアーナ、2人分の売り上げがあるから、お前と、もう、1人2人位の学費を出しても、お釣りがくる。 だから、安心して構わない」


 フィルランカは、少し安心したようだ。


「ああ、学費は問題ない。 それに、どうだ、学校での付き合いも有るだろうから、毎月の小遣いを少しあげた方が良くないか?」


 その答えに、フィルランカは、驚いた様子で、慌てて、首を横に振った。


 その様子を見て、カインクムは、ホッとしたようだ。


「もし、必要なら、いつでも言ってくれ。 最近は、エルメアーナの作る物も人気があるから、余裕がある。 いつでも、言ってくれ」


「あ、あり、ありがとう、ございます」


 フィルランカは、顔を赤くし、視線を横に向けて、緊張気味に答えた。


 その様子を、カインクムは、恥ずかしそうに見ていた。


(よかった。 約束の話じゃなかった)


 カインクムは、ホッとした。


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