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ギルドへの登録 4


 メイリルダは、ジューネスティーンがシュレイノリアの指を咥えているのを見て顔を赤くした。


 それは、シュレイノリアが、大人の女性のとるような恥じらう態度をしていたことにあった。


 シュレイノリアの転移時の設定年齢を、身体つきから8歳としたのだが、それなら恥じらうような仕草ではなく、それより自分の感情に忠実となり有難いと思うのだろうが、今のシュレイノリアの反応は、年頃の女性が異性に対してとる態度のようにメイリルダには思え、それがメイリルダには男女の情事を見たような感覚を思わせていたのだ。


 メイリルダは、何だか恥ずかしさを感じていたのだ。


 ジューネスティーンは、一度、シュレイノリアの右手の人差し指を口から出して傷を確認すると、ジューネスティーンは納得したような表情をした。


「うん、治った」


 そう言ってシュレイノリアの右手を前に置いた。


 シュレイノリアは、恥じらった表情のまま、ジューネスティーンにされるがままにされていた。


「ばか」


 そして、恥じらうようにジューネスティーンに答えた。


(な、何よ。この様子って、大人の恋人同士の反応じゃないの? それを、何で、この子達が?)


 メイリルダは、2人の仕草を恥ずかしそうに見ていたのだが、今は、何故、このような態度を取ったのか気になったようだ。


(まあ、2人とも転移者なのだから、前世も同じ位の歳とも限らないわよね。そうよ、ジェスティエンのように火薬だとか銃とかを考えてしまったのだって、普通に考えたら10代の若造に考えられるようなものじゃないわ。大学のような研究機関だって、あんなものを思いつかなかったのだから、転移者が転移前も同じような年齢だったとは限らないわ)


 そして、納得したような表情をした。


(そうよね。以前が、大人だったとしたら、今の様子も大人の時の感覚が無意識に出たのかもしれないわね)


 メイリルダは、嬉しそうに笑顔を向けていると、後ろに同僚の受付嬢が仁王立ちになっていた。


「ねえ、メイリルダ。カードが完成したら、その後は、ギルドへの登録でしょ。さっさと終わらせてよ」


 それを聞いて、メイリルダは現実に戻されたように表情を変えた。


「ああ、そうだった。教えてくれて、ありがとうございます」


 メイリルダは、同僚の受付嬢に答えた。


「カードは、個人のものだけど、ギルドに登録しておかないと、カードは偽物と言われかねないわね」


 そして、メイリルダは思い出したように立ち上がり、ジューネスティーンとシュレイノリアを見た。


「さあ、カードを持ってカウンターに行くわよ」


 2人は、言われるがまま、メイリルダに倣って立ち上がると自分のカードを手に持った。


 メイリルダは、2人の様子を確認し大丈夫だと判断すると、空いているカウンターに行き席に座った。


「本来なら、ギルドへの登録は、カウンターの向こう側に居てもらうんだけど、あなた達だと身長が足りないから、ここでいいわ」


 受付嬢の椅子にメイリルダが腰を下ろしたところに2人は一緒についてきたので、メイリルダは説明した。


 そして、ギルドへ登録するための水晶をカウンターの内側の机の上に置いた。


「それじゃあ、さっさと始めるわよ。じゃあジュネスのカードを見せて、それと、ジュネスは水晶を覗いてくれるかな」


 メイリルダは、カウンターの奥の方に置かれている平べったい魔道具の手前側の側面に細い隙間があり、そこに、先程作ったギルドカードを差し込むと、その脇についていた指でつまめるほどの金属のレバーを上げた。


 すると、魔道具の上に、ゆっくりとジューネスティーンの顔が浮かび上がった。


 それは、カウンターの下に置いてあるその魔道具の上に浮き上がるように出て、通常の冒険者が立つカウンターの反対側からは、影になって見えることはない。


 それをシュレイノリアが、不思議そうに覗き込んでいた。


 すると、ジューネスティーンの顔が写っている右脇に、もう一つ小さなジューネスティーンの顔が浮かび上がった。


「うん。これで、ジュネスの登録は終わったわ」


 メイリルダは、カードを差し込んだ横のレバーを下げると、カードを引き抜きジューネスティーンに渡した。


「おい、メイ。これは何だ? さっき、ジュネスの顔が、そこに現れたぞ」


 シュレイノリアは、興味深そうにカウンターの下にあるギルドへ登録するための魔道具を見ていた。


 そして、ジューネスティーンの作業が終わるのを待って、シュレイノリアはメイリルダに聞いた。


「これは、ギルドの魔道具よ。全部のギルド支部と本部を繋いでいて、今の登録が完了すると、どこの支部に行っても誰だかわかるようになっているのよ」


 メイリルダは、何だか自慢気味に話をしていた。


 そして、メイリルダの説明を聞いていたシュレイノリアは、少し興奮気味に魔道具を凝視していた。


 その姿を見たメイリルダは、何だか嬉しそうである。


「ギルドカードは、ギルドから依頼を受けたり、魔物のコアを買い取る時に使うけど、それだけじゃなくて、ギルドに自分のお金を預かってもらうときにも使えるのよ。ほら、冒険者って、基本的には魔物と戦うことになるのだけど、戦闘中に沢山のお金を持っていたら重いでしょうし、それに落としてしまったら、大変なことになるから落とさないようにギルドが預かってくれるのよ。それなら、ギルドに戻った時に引き出せるし、こうやって登録してあれば、どこのギルド支部でも出張所でも取り出すことが可能なの」


 そこまで聞いていると、シュレイノリアは面倒臭そうな表情をした。


「そうじゃない。この魔道具は、どういう構造で仕組みになっているのか聞きたかったのだ」


 それを聞いて、メイリルダは困った表情をした。


 受付嬢の仕事ができて魔道具の使い方を知ってはいるが、中の構造がどうなっているのかなんて考えたことも無かったので、構造だの仕組みだとと言われて説明できるわけがない。


 魔法も使えないし魔道具を作る事もできないメイリルダは、その質問の答えを持っていない。


 メイリルダは、困った様子でシュレイノリアを見て黙ってしまっていた。


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