ギルドへの登録 3
ギルドカードに自分の血で濡らした左手の親指を押したことで、ジューネスティーンのギルドカードは完成した。
メイリルダは、満足気にその様子を見ていたが、ジューネスティーンは左手の人差し指と親指を交互に舐めていた。
親指は、血を塗っただけなので傷にはないから血が取れると、人差し指の傷を舐めていた。
ただ、指先の出血なので、中々止まる様子も無いので困ったように指先を見ては、また、舐めていた。
その様子をシュレイノリアは青い顔をして嫌そうに見ていた。
すると、メイリルダは手のひらより小さめな正方形のタオル地の布をジューネスティーンに手渡そうと差し出した。
「これで、指の血を止めて」
ただ、ジューネスティーンは少し困ったような表情をした。
メイリルダは、ジューネスティーンが何でそんな表情をするのか気になったようだ。
「ん? どうした?」
すると、ジューネスティーンは小刀の先端で切った人差し指をメイリルダに見せた。
メイリルダは、タオル地の布を差し出しつつ、その指を見ると指の血は止まって傷が治っていた。
「あらま、綺麗に治っているわ」
メイリルダは、少し驚きつつ指の先端を見て、持っていたタオル地の布を戻した。
その治りの速さを少し不思議に思ったようだが、小さな傷だったからだろうと、メイリルダは思った様子で、それ以上気にするつもりは無かったようだ。
そして、ジューネスティーンのギルドカードを確認した。
「うん、いい感じね」
すると、メイリルダはシュレイノリアを見た。
「じゃあ、今度は、シュレね」
そこには、嫌そうに青い顔をしたシュレイノリアがいた。
今まで、隣でジューネスティーンが、カードを作っていたので2人は気がついていなかったのだが、シュレイノリアはジューネスティーンが、小刀で指を刺すところを見て恐怖を感じていたようだった。
シュレイノリアは、青い顔をして目の前のカードと小刀を見て固まっていた。
メイリルダは、その様子を見て困った表情をした。
すると、ジューネスティーンが、シュレイノリアの膝の上で自分のスカートを握っていたその手に自分の手を乗せた。
それによって、少しシュレイノリアは落ち着きを取り戻しつつあった。
ただ、テーブルを挟んで座っていたメイリルダには、ジューネスティーンが、シュレイノリアを見つつ近寄った程度に見えた。
そのことによって、シュレイノリアの表情も落ち着き始め、ジューネスティーンの方にゆっくりと向いたので、メイリルダは、ジューネスティーンが、助けてくれるかと思ったようだ。
「じゃあ、ジュネス。シュレを手伝ってくれるかしら。やっぱり、お兄ちゃんが手伝ってあげれば、シュレの登録も簡単に終わるわよ」
メイリルダは、シュレイノリアの年齢を考えたら、小さな痛みでも嫌だという、小さい女の子の特有の痛いものを嫌う習性を思い出していた。
(ああ、私にも有ったわ。この時代の女の子って、本当に小さな痛みだって嫌だったわね)
メイリルダは、思い出すような表情でシュレイノリアを見た。
すると、ジューネスティーンは、ゆっくりとシュレイノリアの手をテーブルの上に乗せた。
(あら、ジュネスったら、する事が早いわ)
乗せたシュレイノリアの手は右手だった。
シュレイノリアは、左利きだった事もあり、メイリルダが、利き腕とは反対側の手の人差し指か薬指と言ったので、ジューネスティーンは、シュレイノリアの右手を持って、テーブルの上に乗せると少し恥ずかしそうにしていた。
そして、ジューネスティーンは表情など意に介さない様子で、左手でシュレイノリアの右手の人差し指を握るようにしてから指の先端だけ出して握った。
そして、もう片方の手でシュレイノリアの小刀の鞘を器用に抜いて、シュレイノリアの右手の人差し指に軽く小刀の先端を軽く当てた。
「ブミャッ!」
シュレイノリアは、びっくりして切られた指を引っ込めようとしたのだが、ジューネスティーンは、その事も予測しており、シュレイノリアがビクリと動いた瞬間、握った指にグッと力を入れて小刀を指から離していた。
そして、シュレイノリアは涙目になっていた。
「ごめん、ちょっと痛かったね」
ジューネスティーンは申し訳なさそうに言うと、シュレイノリアはムッとしたような表情になった。
「そうだ! お前が悪い。痛かったじゃないか!」
シュレイノリアのクレームにジューネスティーンは、気にする事もなく、シュレイノリアの人差し指の血を親指に馴染ませていた。
「私は、何だか尖ったものが嫌なんだぞ。それなのに、お前は、私に何も言わずに、私の指に傷をつけるとは、何事かぁ! 痛かったし、びっくりしたし、このボケがぁーっ!」
シュレイノリアは猛抗議をするのだが、ジューネスティーンは、気にする事なく血を馴染ませたその親指をギルドカードに押していた。
その様子をメイリルダは、2人の様子を微笑ましく見ていた。
そして、シュレイノリアのカードをメイリルダの前に出したので、メイリルダは、慌ててシュレイノリアのカードを確認した。
少し残念そうにシュレイノリアのカードをメイリルダは確認した。
(うーん、もう少し、2人の様子を見ていたかったのだけど、まあ、仕方がないか)
メイリルダは、残念そうにギルドカードを確認した。
(何も問題無いわね)
納得したような表情をした。
「うん、大丈夫、……、よ」
カードから2人の方に視線を向けると、ジューネスティーンが、メイリルダの方を向くのだが、その口には、シュレイノリアの右人差し指がくわえられており、その先には恥ずかしそうにしているシュレイノリアがいた。
思わず、メイリルダは、しまったといった表情で声を上げるのだが、ジューネスティーンは、ただ、血を止めようとしていただけなので、メイリルダが、見ちゃいけないような顔をしていることが判らなかったようだ。




