ギルドへの登録 2
メイリルダに言われて、ジューネスティーンとシュレイノリアは、ギルドに登録してカードを作ることになった。
カードを作るには、ギルドカードに自分の血による押印をする必要がある。
そのために用意した小刀を、2人はメイリルダから受け取り自分の前に置いたが、シュレイノリアは、小刀を少し嫌そうに手に取って自分の前に置いた。
シュレイノリアは、ジューネスティーンの翌日に転移してきた。
今まで転移者が現れた翌日に、新たな転移者が現れたことは無かった。
そのため、周囲は転移者が現れた翌日に、その場所へ行くことはないので、翌日に転移してきたシュレイノリアは、最初に現れていたサソリの魔物と、自分が転移してきた時に現れる、もう1匹のサソリの魔物も相手にしていた。
全裸で放り出された状況で、武器も防具もなく周囲にその代替えになるような物も無かった。
その結果、シュレイノリアは身体中に深い傷をおった。
サソリの魔物は、尻尾に毒針ではなく刃物のようになっていた。
その尻尾の攻撃で身体中を傷だらけにされたところを、セルレイン達のパーティーに助けられギルドに担ぎ込まれ、ギルドの医療班によって辛うじて助けられた。
シュレイノリアにとって、刃物はサソリの魔物の尻尾を連想させる物になっているのか、メイリルダが持ってきた小刀には、その恐怖を思い出させていた。
ただ、シュレイノリアの表情は、それほど大きく変化は無かったのだが、ジューネスティーンは、その様子に気がついたようだ。
メイリルダは、2人のギルドカードに名前と必要事項を記入していたので、シュレイノリアの変化に気が付かずにいた。
そして、1枚目のカードが完成すると、その出来栄えを確認するようにカードを右手に掲げるとジューネスティーンに渡し、もう一枚のカードに移った。
ジューネスティーンは、渡されたカードを確認していった。
名前を確認すると、生年月日を見つけた。
「ねえ、この生年月日なんだけど、どうやって決めたの?」
ジューネスティーンは、自分のカードを見ながらメイリルダに質問するが、もう一枚のカードに集中していた。
「ああ、ちょっと待ってね」
メイリルダは、今の作業を区切りの良いところまで作業を進めようとしていた。
区切りの良いところまでくると、メイリルダは、視線をジューネスティーンに向けた。
「ああ、基本的には転移してきた日の10年前が誕生日になるのよ。でもね、今回のように、翌日にはシュレが現れたでしょ。それと、2人の身長も体つきも全然違うから、シュレの場合は8年前の日を誕生日にしたわ」
ジューネスティーンは、ふーんというような表情をした。
「だから、あなた達の生まれた年は、ギルド暦791年とギルド暦793年になるのよ」
それを聞いて、ジューネスティーンは何かを考えたようだ。
「ああ、今年はギルド暦801年になるのよ。それと暦は、それぞれの国毎に違う事もあるから違う国に移動したら、その時は、その国の暦を確認しておくといいわ」
ジューネスティーンは、メイリルダの話を聞いて自分のカードを見るとシュレイノリアを見た。
「そうだね。シュレと僕じゃあ、身長も違うから、そうなるのか」
そう言って、納得するような表情をした。
ギルドは、転移者について、一般的には転移した日の10年前を誕生日としているが、基本として、そうしているだけで今回のように翌日に転移してくるようなことは無かったことと2人の成長の違いから、そのような判断を下した。
今までのように1人の転移者が現れてから、数年の月日が経った後に現れているなら、単純に10年前を誕生日にするが、今回のように翌日に現れた事と、シュレイノリアがジューネスティーンより小さい事から、このような判断になっていた。
過去に例が有るとしたら、二卵性双生児と思われる少年と少女が同時に転移してきた事が有った際は、どちらも体つきは変わらなかった事もあり同じ年齢として登録されていた。
その前も後も、ジューネスティーン達のような例は無かった事もあり、体つきの様子を加味して、ジューネスティーンを10歳とし、シュレイノリアは8歳として登録することに決定していた。
年齢の違いについて2人から反論は無かった事から、メイリルダは、ギルドで決まった通りにシュレイノリアの登録も同じようにギルドカードに記載していった。
2人のギルドカードの記載が終わると、メイリルダは、先ほど渡した小刀を指してからギルドカードの右下の枠を指差した。
「それじゃあ、利き腕の反対側の親指の指紋を登録するから、小刀で人差し指か中指の先を傷つけて、血を親指の指紋に塗ってから、自分のカードに指紋を押し付けるようにしてちょうだい」
そう言われると、ジューネスティーンが、小刀を手に取って鞘から引き抜き小刀の先端に人差し指を軽く刺した。
直ぐに血が出てきたので、そのまま、親指に擦り付けていた。
ジューネスティーンは、親指全体に血が馴染むと、それをメイリルダに見せた。
「この程度で構わない?」
ジューネスティーンは、親指の血のつき方をメイリルダに確認したので、メイリルダは、満遍なく血が付いている事を確認すると満足した表情をした。
「うん、いい感じね。それで、こんな感じでカードの枠の中に親指を押し付けてね」
メイリルダは、自分の親指をギュッとテーブルの上に押しつけたので、その様子見て、ジューネスティーンも真似するように、ギルドカードの枠の中に左手の親指を押し当てた。
ギルドカードが、ジューネスティーンの血に反応して淡く光ると直ぐに消えた。
「はい、ジュネスのカードは、それで完成よ」
メイリルダに言われて、ジューネスティーンは親指をカードから離した。




