報告を聞くイルーミク
フィルランカのよく分からない心情によって、エルメアーナとイルーミクが、何かわからず、対応に困っていたが、結局、フュェルリーンのに対応を任せたことで、フィルランカも落ち着いたようだ。
モカリナは、リズディアと楽しく、食事を楽しんでいたので、フィルランカの事は、よく分かってない様子で、食事は、終わった。
その頃には、使用人であるメイドも執事達も落ち着いた様子で、対応をしていた。
時々、リズディアのところに来ては、何やら、耳打ちをしていた。
その話をリズディアは、うなづいて聞いていた。
ただ、時々、その報告を聞いては、顔を引き攣らせている時があった。
周りは、その事を周りの客人は、気にする者は居なかったが、イルーミクだけは、時々、何の事なのかと気にしているようだった。
(大丈夫かしら? 義姉様ったら、時々、イラついた表情をしているけど、何か、あったのかしら?)
イルーミクは、リズディアのイラついた時のことが、妙に気になったようだ。
イルーミクは、お皿を交換に来たメイドが、顔を前に出した時に聞いた。
「リズディア義姉様が、報告を聞いていた時、時々、イライラしていたみたいだけど、何かあったの?」
イルーミクの食事を差し替えていたメイドが、仕方なさそうな表情をした。
「実は、イルルミューラン様とジュエルイアン様が、あの後、2人だけになったら、タガが外れたように飲みだしてしまったんです。 今、別の部屋で出来上がってしまって、大騒ぎをしているんです」
「あら、お兄様らしくないわね」
「ええ、ジュエルイアン様と、ご一緒ですと、イルルミューラン様も一緒にお酒を飲み出すので、それで、飲み過ぎてタガが外れるみたいなのです」
「えっ!」
「以前から、ジュエルイアン様が、お見えになった時は、大騒ぎですから、慣れたものですよ」
(あら、うちのメイド達って、優秀なのかしら。 お客様について、かなり詳しく把握しているのね。 それに、お兄様の酔っ払った姿なんて、私、見たことないわ。 えっ! お兄様って、飲むと手がつけられないのかしら)
イルーミクは、納得したような表情をするが、すぐに、何かを考えるような表情をした。
「まあ、あの2人が、一緒の時は、昔から、どうやって隔離するかでしたから、基本は、執事達に仕事を任せて、メイド達は、外されるんですよ」
その一言でイルーミクが、嫌そうな顔をした。
(どう言うことなの? お兄様とジュエルイアンさんの間に、一体、何があるのよ)
イルーミクは、リズディアとヒュェルリーンの様子を伺った。
(2人の奥様達に聞いても仕方がないわね。 それに、モカリナもフィルランカ達も居るのだから、そんな話をするわけにはいかないわね)
イルーミクは、困ったような表情を浮かべた。
「以前、酔っ払って、メイド達を追い回したりしましたから、あの2人だけの時は、近寄ることを禁止されています。 あの2人で、飲み出した時は、気をつけるようにしてますわ」
イルーミクは、呆気に取られた。
兄であるイルルミューランの、そんな醜態を初めて聞いたのだ。
「でも、今日は、どうだったの? 私たちが来る前に飲んでいたと思うのですけど」
それを聞いて、メイドは、困ったような表情をするが、聞かれてしまったので、仕方がないと思ったのか、素直に答える。
「今日は、リズディア様もヒュェルリーン様もいらしたので、メイド達も安心していたのです。 ただ、周囲にお酒を置いて置かなかったのですけど、どうも、ジュエルイアン様が持ち込んだみたいなんですよ。 何だか、新しいお酒だとかって言ってたと思います。 試飲するとかって言ってました」
「ああ、そうだったの」
(つまり、今日は、お兄様達は、お酒を飲むつもりではなかったのだけど、ジュエルイアンさんが、新しいお酒が手に入ったから、味見のために持ってきて、2人で味見をしてたってことなのかしら)
イルーミクは、メイドの言葉を聞いて、考えるそぶりをしていた。
「ただ、最初は、本当に試飲だけだったみたいなんですよ。 リズディア様達が到着した時は、味を確認していただけだったみたいなのですけど、リズディア様に見つかって、追い出されたら、タガが外れたみたいだったのです」
そのメイドは、大変そうな表情をした。
(そうだったわね。 あの時、お兄様もジュエルイアンさんも、飲酒を義姉様に見つかった後、有無を言う暇もないまま、追い出されていたわね)
「リズディア様の一声で、予定が変わって、段取りが、終わったった後、執事達が大慌てで、今度は、イルルミューラン様とジュエルイアン様に対応のために移動したのです。 そしたら、執事達に、ジュエルイアンさんが持ってきたお酒を飲ませてしまったみたいなんです。 それで、執事達とイルルミューラン様、ジュエルイアン様とで、大宴会中なんです」
「ああ、それで、義姉様の様子が、変なのね」
イルーミクは、リズディアの心中を察して、困った表情をした。
(1人1人なら、問題無くても、2人が一緒になると、問題が発生するって、何だか、あの2人って、子供みたいね)
「今、あっちは、男だらけで、大宴会中です」
イルーミクは、リズディアを見た。
イルーミクは、状況が把握できたせいもあるのか、リズディアの笑顔の下に、僅かに怒りのような表情が、見えているように思えたのか、一瞬、びくりと肩を震わせた。
(きっと、義姉様は、怒っていらっしゃるわ。 でも、客人の手前、そんな事を、見せないように必死に、隠しているのね。 ……。 でも、お兄様が、そんなにお酒を飲んで大暴れをするなんて、思ってもいなかったから、驚いたわね)
イルーミクは、話をしてくれたメイドをみる。
その表情には、何か、申し訳ないといった表情がうかがえた。
(このまま、終わってほしいけど、大丈夫なのかしら。 変なことにならなければいいわね)
ただ、イルーミクには、イルルミューラン達の酒の席を何とかできるわけではない。
イルーミクは、一つ、ため息を吐くと、出された食事に手をつけていくのだった。




