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ギルドへの登録


 メイリルダは、ジューネスティーンとシュレイノリアを連れて冒険者として登録のためギルドの受付に向かった。


 ギルドへの登録を行うことで、2人の身分を証明する手段となる。


 メイリルダは、2人を連れてカウンターに行くと、ジューネスティーンはカウンターから顔が出たが、シュレイノリアはカウンターより低かった。


 それを見て、メイリルダは困ったような表情をした。


(ギルドカードの発行は、カウンターではできないわね)


 メイリルダは、2人の身長とカウンターを見比べると、カウンターの脇から中に入って奥のテーブルに2人を座ららせた。


「それじゃあ、ギルドカードを作るから、ちょっと待っていてね」


 メイリルダは、2人を椅子に座らせて2人のギルドカードを作る準備を始めるため、新品のカードを用意すると血液を取るための物をどうしようかと思い机の上を物色していた。


「ねえ、メイリルダ。あの子達のギルド登録でしょ」


 メイリルダは、同僚の受付嬢から声をかけられたのだが、何で分かったのかという表情で同僚の受付嬢を見た。


 そして、手には小刀を持っていた。


 小刀は、大人が片手で握れば柄が完全に隠れる程度しかなく、鞘の長さも柄の長さとほぼ一緒の物だった。


 武器として使えるような大きさではなく、むしろ、キャンプ中に何かを切り分けたりする程度にしか使えそうもない大きさだった。


「ほら、これ2人用に用意しておいたわよ」


 そう言って、同僚の受付嬢は小刀を手渡した。


「え、でも、何で?」


 メイリルダは、小刀を受け取りつつ自分の疑問を訴えたのだが、同僚の受付嬢は当たり前のような表情のままだった。


「だって、ギルマスが、そろそろ転移者の名前が決まるからって言ってたわよ。だから、近いうちにギルドに登録しに来るから小刀を用意しておけって言われたわ」


 メイリルダは、小刀を見つつ納得したような表情をした。


(ああ、エリスリーンは、ここのギルドに来て何百年も経っているから、転移者に何をするか仕事の手順も頭に入っているのね。だから予め用意させておいたのか)


 そして、小刀を渡してくれた同僚の受付嬢に笑顔を向けた。


「ありがとう、助かったわ」


「どういたしまして」


 同僚の受付嬢は、それだけ言うと自分の机に戻って仕事を再開していた。


 メイリルダは、有難そうに同僚の受付嬢を見た後、2人を残してきたテーブルに戻った。




 メイリルダは、ギルドカードと小刀を二つずつ用意した。


「本当なら、国の発行したカードが必要なのだけど、転移者には無いので、そのままギルドのカードを発行するからね。それと、あと南の王国の国民としての登録もあるから同じ事をするから覚えておいてね」


 メイリルダは、登録するための説明を始めた。


「ギルドカードは、名前を記入してから、その人の血をカードに押印するのよ。あ、押印は利き腕とは反対側の親指ね。一般的には人差し指の先端を軽く刺して、少し血が出たら親指に滲ませてからカードの右下の枠の中に押すのよ」


 そう言いつつ、小刀を鞘から抜き、尖った小刀の先をメイリルダは指示して、いかにもこの部分を使うんだと言うと、ジューネスティーンは納得するような表情で見ていたが、シュレイノリアは嫌そうな表情をした。


(やっぱり、女の子ね。小刀でも刃を見たり、それで傷付けるのは嫌なようね。私も王国のカードを発行してもらう時は嫌だったわ)


 メイリルダは、少女に同情するような目を向けた。


「ああ、この小刀は、ギルドから、あなた達に与える物の一つね。使い終わったら、動物の解体とか、果物を切る時とか、冒険者になって活動する際にでも使ってね」


 メイリルダは、何気なく2人に言ったのだが、いまいちピンとこないという表情をした。




 まだ、転移してきてから、3ヶ月しか経過しておらず、言葉を覚えた程度だった2人なのであり、接触できる人は限られていた事から、冒険者とは全くと言って良いほど接触できてはいなかった。


 ギルドの図書館においても、書物は高価だったので、冒険者の行動について記載された書物も無かった。


 ギルドが求める転移者とは、前世の記憶の断片から開発される新たな発明品であり、その恩恵を大陸全土に広めることにある。


 そして、そうでない転移者には冒険者として活動してもらうことで、魔物のコアを収集してもらいたい事もあり、図書館には魔法や魔道具に関する書物が多めに置いてある。


 ギルドとして一番ありがたいのは、転移者の技術を利用した商品を世に出す事であり、ギルドは、その販売においても大きな利益を得ている。


 しかし、転移者全てが才能を持って転移してくることは無い。


 今までは、そんな技術を世に出してくれる転移者は、10人に1人程度と言われていた事から、何かを生み出しそうもない転移者には冒険者になるように誘導している。


 ジェスティエンが転移者として現れる前は、長い間、発明をしてくれるような転移者は現れていなかったが、彼は火薬と銃が発明してくれた。


 その性能を聞くと、どの国も次の転移者はギルドに囲い込まれる前に確保しようと考えていた。


 しかし、転移者が現れるまでの期間は不定期であり、ジューネスティーン達が現れる1年程前までは、国の息のかかった人々が、この始まりの村を使って転移者が現れるのを待っていたが、ジェスティエンが転移してきてから7年間も転移者は無く、その長さのため転移者の出没する岩の付近で、転移者を待っていた各国の人々も、途中で諦めてしまい待つことは無くなっていた。


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