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ヒュェルリーンの過去とフィルランカの思い


 フィルランカは、ヒュェルリーンの話を考えていた。


(どう言う事なの? ヒュェルリーンさんは、3歳のジュエルイアンさんの世話を、母親のように接していたけど、今は、つ、妻として、世話をしているの)


 フィルランカは、少し、顔を赤くしていた。


「でもね。 エルフと人でしょ。 私は、ジュエルイアンを看取る事になるのよね」


 ヒュェルリーンは、ため息を吐いた。


「ジュエルイアンが、長生きして80歳まで生きたとして、私は、148歳なのよ。 私は、その後、300年は生きるのよね。 ジュエルイアンが、ヨボヨボのお爺ちゃんになっても、私は、人の30代半ばなのよ。 ……。 まあ、男の人にしたら、若い嫁が、いつも横に居るから、嬉しいのかもしれないけど、……、私は、何だか、40年先、50年先の事を考えると、憂鬱でもあるのよ」


(ああ、そうか。 種族の違いから、子供が出来ない事もあるけど、寿命が数百年も違うと、相手が居なくなった後が、とても長いのよね)


 フィルランカは、ヒュェルリーンの黄昏た表情を見て、感慨深いものを感じたようだ。


「でもね。 子供の時からの付き合いだから、それもいいかなって思うの。 ……。 だって、その後、また、別の誰かと恋してもいいかなって思うのよ」


 フィルランカは、びっくりした。


「そうなったら、ジュエルイアン商会をヒュェルリーン商会に、名前を変えて、私がトップよ。 エルフの150歳なら、まだまだ、現役、少なくとも、その後、150年は、働けるわよ。 商会のトップの未亡人なら、きっと、ひくて数多よ」


(ヒュェルリーンさん、それは、ちょっと、ジュエルイアンさんが、可哀想なのでは、……)


 フィルランカは、少し引き気味で、ヒュェルリーンの話を聞いている。


「でも、きっと、ジュエルイアンが、死んだ後、何かのタイミングで、思い出してしまうでしょうね」


(ああ、やっぱり、気になるのね。 そうよね。 何十年も添い遂げた人なら、きっと、思い出も残っているでしょうね。 忘れようと思っても、忘れる事なんてできないでしょうね)


 少し寂しそうな表情になったヒュェルリーンを見ていたフィルランカも、その表情につられて、寂しそうな表情をした。


 フィルランカは、ヒュェルリーンの話を自分の事のように聞いていたようだ。




 フィルランカは、食事に集中しているのか、真剣な様子で、料理を食べていた。


(ヒュェルリーンさんは、異種族間の結婚ということでの悩みがあったのね。 それに、リズディア様は、10歳の時から、イルルミューラン様の事を思っていたのね。 その為に、自分の婚期を逃してしまったのかしら、……。 ひょっとして、リズディア様は、イルルミューラン様と一緒になる為に、不自然な形にならない為に、自分の婚期を逃してまで、策を講じたとも言えるのかしら、……)


 フィルランカは、リズディアの方を見ると、リズディアは、モカリナと楽しく話をしながら、食事を楽しんでいた。


(そういえば、リズディア様って、今年、34歳なのよね。 ご結婚されたのが、去年の事だから、33歳、……。 え、10歳から、33歳まで、……。 23年間、思い続けていたって事よね)


 フィルランカは、物思いに耽った様子でリズディアを見た。


 そして、ため息を吐いた。


(皇族の方が、自分の思った結婚をするには、そんなに時間が掛かってしまったのね。 23年間、我慢し続けて、やっと、願いが叶ったわけね)


 すると、フィルランカは、何かを思い出したような表情をする。


(そういえば、私も、10歳の時からよね。 そうよ。 約束したのよ。 孤児院を出る時、カインクムさんは、10年経って、同じ思いだったら、け、け、結婚してくれるって言ってくれたのよ)


 フィルランカは、顔を赤くした。


(そうよ。 私は、10年だから、後3年なのよ。 3年経ったら、願いが叶うのよ。 リズディア様の23年に比べたら、私の方が、条件は、良いわ。 それに、ヒュェルリーンさんのように、異種族でもないわけだから、普通に子供も作れるのよ。 きっと、エルメアーナのような可愛い子が授かるわ)


 フィルランカは、含み笑いを思わずしてしまったのだが、当人は、その事に気がついてない。


(で、でも、エルメアーナのように、途中で、学校に行かなくなってしまわないかしら。 エルメアーナは、なんで、学校に行かなくなったのかしら。 ……。 でも、いいわ。 今度は、私が、何とかしてあげればいいわけだから、きっと、大丈夫よ)


 不安そうな様子で、隣のエルメアーナを見るが、すぐに、表情に、何か強い意志のようなものを感じられた。


(そうよ。 私が、しっかりしたら、きっと、子供にも良い影響を与えられるわ。 私は、学校に通うようになって、貴族の方々と知り合えたのよ。 それに、いま、こうやって、元皇女であるリズディア様と、おはなししたり、お風呂にまで入ったのよ。 そうよ、私は、勉強した事で、こんな、素敵な方々とお話ができているのよ。 この経験を、私の子供に伝えればいいのよ)


 フィルランカは、納得した様子で、天井を見上げた。


(あら、なんで、カインクムさんの子供の話になっているのよ。 ま、まだ、10年経っていないわよ。 もう直ぐなのよ。 カインクムさんは、10年経って、私の気持ちが変わらなければと言ったのよ。 だ、だか、だから、私次第なのよ。 ……)


 フィルランカは、不安そうな表情を浮かべた。


(この約束は、孤児院で引き取ってもらう時に交わしたのよ。 私は、お嫁さんにしてもらう為に、カインクムさんの家に入ったのよ。 だけど、孤児院での話し合いの後、カインクムさんは、この話をしてくれてないわ。 ……。 時々、話をしてくれても、いいと思うのに、変ねぇ)


 フィルランカは、隣のエルメアーナを見た。


(あ!)


 フィルランカは、隣で、イルーミクと話をしているエルメアーナを見る。


(そうよね。 娘である、エルメアーナの手前、私と、そんな話をするわけにはいかないのか。 でも、何だか、ちょっと、さみしい気もするわ。 ……)


 フィルランカは、何かを考えているようだった。


(そうよ。 シスターよ。 シスターとカインクムさんと私の3人が、あの場所に居たのよ。 だから、シスターも証人になってくれるはずよ。 うん、きっと、そうよ。 そうに違いないわ)


 フィルランカは、握った拳に力を入れていた。




「ねえ、フィルランカちゃん」


 フィルランカは、自分の名前を呼ばれたので、その方向を見ると、そこには、心配そうにフィルランカを見ているヒュェルリーンがいた。


「どうかしたの? 何だか、とても、バラエティーに富んだ表情をしていたわよ」


 フィルランカは、真っ赤な顔をすると、半ベソ状態になる。


「にゃ、にゃんでも、にゃいでしゅ」


 カミカミで、ヒュェルリーンに答え、ヒュェルリーンから反対の方を向くのだが、そこには、フィルランカの表情を不思議そうに見るエルメアーナとイルーミクがいた。


 フィルランカは、慌てて、両手で顔を隠して、前を向いて、下を向いた。


 フィルランカを挟んで、ヒュェルリーンが、エルメアーナとイルーミクに視線を合わせた。


 ただ、そこには、お互いにフィルランカがどうしてこうなっているのか、理解できないと、お互いの表情を見て、理解したようだった。


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