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リズディアの本音とモカリナの本音


 倒れた瞬間、モカリナは前に居たリズディアを抱き抱えるようにして倒れ込んだのだ。


 その時、モカリナの手は、何か、柔らかいものを掴んでいたのだ。


 その柔らかい感覚と、リズディアの背中に顔を沈めたことで、リズディアの匂いを間近で嗅ぐ事ができた事で、とても満足していたのだ。


 なんとも言えない感覚を味わってしまった事で、別の意味で、固まってしまったのだ。


 ただ、リズディアが、声を掛けた事で、自分の状況が、徐々に理解できた。


 モカリナの手はリズディアの何か柔らかいものを鷲掴みにしていたのだが、モカリナは、一瞬、何を掴んでいるのかわからなかったようだ。


そして、モカリナは、自分の掴んでいるものを、軽く揉んでいた。


「あっ!」


 リズディアは、艶かしい声を上げた。


 それを合図のように、モカリナは、自分が、何を掴んでいたのか、理解できたようだ。


 モカリナの表情は、引き攣った様子で、慌てて、両手を離すと、リズディアの背中から、飛び上がるように離れたので、後ろに尻餅をつくように座り込んだ。


 モカリナは、自分が、リズディアに何をしたのか理解できたのだが、その行為が許される事ではないと思ったようだ。


 尻餅をついて、後ろに手を置き、どうしようかと思った様子で、少し離れようと、お尻を床に付け、後ろに付いた両手と、手前に膝を立てた状態で1m程後ずさった。


「ん、もう。 ちょっと、驚いたわ」


 リズディアは、体を起こして、ヘタリ込むように床に座った状態になると、恥じらいながら、リズディアに言った。


 モカリナは、尻餅をついていた格好で、固まって、真っ青な顔をしている。


 モカリナは、M字に開いていた足を前に倒すと、その勢いで体を前に倒し頭を下げた。


「し、しつ、失礼しました」


 モカリナは、慌てて、リズディアに詫びを入れた。


「うーん。 怪我はないみたいだし、ちょっと重かっただけだから、大丈夫よ。 気にしなくていいわ」


 モカリナは、ホッとしたようだったが、頭を上げる様子は無かった。


「ごめんね。 モカリナさん。 頭を上げて。 アクシデントは、つきものだから、それをいちいち気にしていてはだめよ」


 リズディアは、気を遣って、モカリナに声を掛けた。


 モカリナは、ゆっくりと、顔を上げる。


 そして、自分の視界に、リズディアの足元から、お腹、胸、そして、顔が見えてくる。


 モカリナの視界にリズディアの顔が入ると、その表情には、悪戯っぽい表情があった。


「モカリナさん。 私の胸、柔らかかったでしょ」


 モカリナは、その言葉に、申し訳ないと思っていた様子が、唖然とした表情に変わった。


「うふ、私の妹達もほとんどが、他国へ嫁いでしまったから、少なくなってしまっていたから、こんな事できなくなってたけど、これで、また、楽しい時間が過ごせそうだわ」


 そう言って、リズディアは、モカリナを抱きしめた。


「えっ!」


 リズディアは、空いた口が閉められなくなった。


「「「え!」」」


 その様子を見ていた、フィルランカ達も、思わず、声が出てしまった。


 しかし、1人だけ、ヒュェルリーンは、残念なものを見るようにリズディアを見ていた。




 モカリナは、リズディアにハグされてしまった事に驚きつつも、とても幸せそうな表情をした。


「ああ、やっぱり、いいわ。 これで、また、妹たちの世話ができるのね」


 リズディアは、モカリナに頬を擦り付けつつ、楽しそうにしている。


 唖然としている友人達3人に対して、ヒュェルリーンは、何かを考えるような表情をした。


(リズは、昔から、女の子が好きだったから、今回のように若い子達と一緒が好きだったから、結婚して、ここまで、商会の仕事に追い回されていたから、その反動が出たのかしら。 あ、そうか、環境の変化によって、かなりの間、こんな機会を持てなかったものね。 先週の食事会だって、久しぶりだったというし、今のでリズのタガが外れてしまったみたいね)


 そして、ガッカリした表情をしていた。


「今度は、旦那と弟以外の家庭教師をするつもりなの? 弟より、妹の方が、一緒にいれる時間が多く取れるとか、女子同士ならできる遊びも有るとか考えているんでしょ。 あ、今なら、家庭教師というより、可愛い妹達と遊ぶことでも考えているのかしら」


 ヒュェルリーンは、言い終わるとリズディアの方を見る。


 リズディアは、頬を膨らませて、上目遣いで、睨むようにヒュェルリーンを見ていた。


 その表情から、明らかに図星を突かれたといった表情だった。


 ただ、その横には、頬をリズディアにくっつけられて、今にも舞い上がりそうなほど、嬉しそうな表情をしていた。


「あ!」


 ヒュェルリーンは、半分冗談のつもりで言ったようだが、リズディアには、図星だったと理解したようだ。


「ごめん。 冗談だったんだけど……。 本当に、ごめん」


 ヒュェルリーンは、謝ったが、それでも、リズディアは、モカリナから抱きついたまま、その状態を維持していた。


「ヒェル。 この子は、渡さないわよ」


 リズディアは、ジロリとヒュェルリーンを見る。


「エルメアーナさんとフィルランカさんは、ヒェルに持っていかれたみたいだけど、このモカリナさんは、私がもらうわ。 イルーミクとモカリナさん、それと、フィルランカさんとエルメアーナさんで、3対3よ。 これなら、旦那達にも顔が立つでしょ」


「もう、なんの話よ。 彼女達は、物じゃないのよ」


「だって、ヒェルが、変な事言うからぁ」


(ああ、図星だったのね。 照れ隠しで、訳の分からない事言っているのね)


 ヒュェルリーンは、困った表情をした。


「ねえ、リズ。 今日は、そんな未来、いえ、先の話はやめて、今日は、楽しみましょう。 それに、もう、楽しみすぎて、死にそうになっている人も居るみたいだから、リズは、その子の介抱をするのよ。 きっと、その子は、絶対に、あなたのそばを離れたくないはずよ」


 リズディアは、モカリナの頬に顔をつけていたので、モカリナの表情をうかがえなかったのだが、周りは、そのモカリナの様子がよく分かっていた。


 リズディアは、体を少し、モカリナから離して、モカリナの様子を確認した。


 その表情は、とても、侯爵家の四女とは思えないような表情をしていた。


 少し離れたことで、モカリナも自由度が増したので、モカリナも、ニヤけた表情で、リズディアを見た。


 すると、今度は、モカリナが、リズディアに抱きついた。


「リズディアさまぁ! リズディア様。 リズディア様。 リズディア様。 リズディア様」


 その勢いで、リズディアは、後ろに倒れると、モカリナは、リズディアの胸の中に顔を埋める。


「えっ! ちょ、えっ! ええーっ!」


 モカリナは、抱きついたまま、自分の顔を埋めて、「リズディア様」を、ただ、連発している。


(モカリナったら、もう、我慢できなくなってしまったみたい)


 フィルランカは、モカリナの様子を、残念そうに見ている。


「なあ、フィルランカ。 モカリナは、大丈夫なのか?」


「無理」


 フィルランカは、エルメアーナに即答した。


(モカリナったら、きっと、もう、死んでもいいと思っているわよ)


 フィルランカは、モカリナの表情を見て、残念そうにしている。


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