のぼせた2人を癒す人達
イルーミクは、ヒュェルリーンの男っぽい部分を見て、グラマラスな身体とのギャップに少し、驚いていた。
(身長は高いけど、体は本当に女性らしいスタイルをしている。 でも、義姉様を持ち上げた時って、あれ、絶対に男の人並み、……。 いえ、上級冒険者とか、……。 あれは、人の域を超えているわ)
イルーミクは、ヒュェルリーンを、少し怖いと思った様子で、見ていた。
ヒュェルリーンは、体を拭いていたタオルを肩にかけると、両足を肩幅より少し広く開けると、わずかに、体を後ろにそらした。
首を左右に振り、そして、肩の様子を確認するように、片方ずつ、反対の手を肩に当てると、その腕をグルグルと回し始めた。
両方の腕を同じように確認すると、また、首を左右に振ると、首を大きく一回りさせた。
(あれって、仕事が終わった、衛兵達とか、兵士が行う仕草じゃないの?)
イルーミクは、ただ、ジーッと、ヒュェルリーンを見ていた。
イルーミクが、ヒュェルリーンに気を取られている間に、フィルランカは、エルメアーナの方に近寄った。
フィルランカは、エルメアーナが、椅子に座らされて、少しボーッとしているので、気になったようだ。
メイドは、それを対処するように、水で濡らしたタオルを首元に乗せていた。
フィルランカが、エルメアーナに近寄ると、エルメアーナに付いていたメイドが、フィルランカに声をかけてきた。
「お嬢様は、のぼせたみたいです。 お嬢様には、少し、お湯の温度が高かったのかもしれませんね」
「ああ、フィルランカ。 ちょっと、頭がボーッとしている」
エルメアーナに付いたメイドが、フィルランカに話をしていると、エルメアーナが、自分の様子を口にした。
(そういえば、家での湯浴みの時の温度より、高かったかしら)
すると、その横にモカリナも連れて来られると、座らされた。
(あら、モカリナも、エルメアーナと同じような感じだわ)
「少し、のぼせたようです」
モカリナにメイドは、そう言うと、モカリナにもエルメアーナがされているように、水で濡らしたタオルを首周りに乗せられていた。
(ああ、そうなのね。 でも、モカリナって、家にもお風呂があるのに、なんで、初めてのエルメアーナと同じようになってしまうのよ)
「モカリナお嬢様は、奥様と一緒に、頑張って入ってましたから、少し、無理をして入られていたと思います。 いつもの通りなら、こんな事にはならなかったと思いますよ」
(私は、何となく、エルメアーナが気になったから、早く上がったけど、もう少しゆっくりしていたら、私もこんなだったのかもしれないわ)
フィルランカは、メイドの言葉に少し引き攣った表情をした。
椅子に座らされている2人は、ぐったりした様子になっている。
1人のメイドが、もう1人のメイドに何やら、指示を出すと、そのメイドは、浴室を出ていった。
リズディアは、メイドに体を拭いてもらっていた。
その表情は、ヒュェルリーンに入浴を途中で止められたことで、少し不満そうである。
表情は、少し不満そうにしているが、立ったまま、メイドに体を任せるようにして、身体を拭かせていた。
「2人とも、あまり、無理して湯に浸かるのは、ダメよ」
それを聞いて、ヒュェルリーンが、リズディアを睨んでいた。
体をほぼ拭き終わって、モカリナとエルメアーナの様子を伺っていたのだが、リズディアの一言を聞いて、ムッとした様子で、睨んだのだ。
その表情には、罪はお前にあると言いたそうだった。
「うー、ヒェル。 頭がボーッとするぅ」
エルメアーナの一言で、リズディアを睨んでいた目は、声の主であるエルメアーナの方に向いた。
「うーん、エルメアーナは、現役の鍛冶屋さんだから、体温が高いのかもしれないわね。 だから、お湯も周りより、熱く感じたのかもしれないわね」
ヒュェルリーンは、何かを思い出すような表情をした。
「そうね、私も、現役の冒険者の時は、熱い湯は苦手だったかない」
すると、先ほど、浴室を出ていったメイドが戻ってきた。
そのメイドは、手にトレーを持ち、そこには、水差しとコップが置いてあった。
もう1人のメイドの前に行くと、トレーに乗っているコップに、半分だけ水を入れると、そのコップをモカリナとエルメアーナのメイドに渡した。
それを、2人のメイドは、それぞれが担当している相手の前に行くと、コップの水を飲ませるために差し出した。
モカリナとエルメアーナは、差し出されたコップに、口をつけると、一気に飲み干した。
そして、そのコップをメイドが受けとうと、また、トレーを持っているメイドから水差しを受け取って、コップに水を入れると、また、担当するモカリナとエルメアーナに、コップを差し出した。
2人は、お互いのメイドから、コップを受け取って、その水を飲んでいた。
飲み終わると、2人は、少し落ち着いたようだ。
それを見ていたフィルランカは、2人が落ち着いたことで、ホッとしていた。
(よかったわ。 2人が具合が悪くなってしまったら、どうしようかと思ったわ。 最悪、エルメアーナを連れて、家に戻ることも考えなくてはならなかっただろうし、モカリナだって、家に送る必要があったかもしれないし、余計なことを考えなくて済んだわ)
「エルメアーナは、風呂に入ったことは無かったのだから、仕方がないわね。 まあ、湯浴みだったのなら、ぬるめの湯の方が、よかったわね」
「ごめんね、イルーミク。 エルメアーナが、おかしな事になってしまって」
「ううん、構わないわ」
イルーミクとフィルランカは、ホッとした様子で、モカリナとエルメアーナを見ていた。




