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浴室にて


 リズディアは、一番端に座ったので、左を見るだけで全員の様子が分かる。


 自分を洗ってくれているメイドが、自分の右側に寄った時、メイドの耳に顔を寄せる。


「終わりは、周りに合わせるようにしてください」


「かしこまりました、奥様」


 メイドも分かっているというように、リズディアにだけ聞こえるように答えた。


 今日の主催であるリズディアが、早めに終わらせてしまうのは、客人達に満足させられず、焦られて、早めに終わらせてしまうことから、リズディアは、メイドに指示をしたのだ。


(それにしても、フィルランカとエルメアーナは、人に肌を触られるのに慣れて無かったのは、意外だったわね。 同じ歳なら、湯浴みの時、一緒に遊んでいるかと思ったけど、そうでも無いのね)


 リズディアは、体を洗うのをメイドに任せ、少し後ろに下がるようにして、左の方を確認し始める。


 隣は、モカリナは、侯爵家の令嬢なので、身体を洗ってもらう事にも慣れているようだ。


 ただ、表情は、とても嬉しそうに頬を赤くして、メイドにされるがまま、ただ、全身を洗われていた。


(さすが、侯爵家ともなったら、家でも、メイドに洗ってもらうでしょうね。 人に身体を洗われる程度は、どうってことは無いようだわ)


 リズディアは、安心した様子で、その先に居る、フィルランカと、エルメアーナを見る。


 2人は、先ほど、体の前を洗おうとされ、驚いて声をあげていた。


 その後の様子を確認するように、リズディアは、体を動かした。


(フィルランカと、エルメアーナは、もう、自分の洗う所と、洗ってもらう所を分けているわね。 ヒュェルリーンは、最初に伝えていたから、問題なさそうだわ)


 そして、一番反対側にいるイルーミクを見ようとすると、イルーミクは、体を前に倒して、前から客人達の様子を窺っていた。


(うん。 イルーミクは、同じ家の人間だということを、わきまえているわね。 ちゃんとフォローしてくれるつもりでいるようだわ)


 すると、エルメアーナが体の泡を流してもらうために、お湯をかけてもらうと、フィルランカとヒュェルリーンもメイドに頼んで、体に湯をかけてもらおうとしていた。


 それを見ていたイルーミクも合わせるようにして、石鹸の泡を流させ始めた。


 すると、リズディアは、自分の体を洗ってくれていたメイドに視線を送ると、そのメイドは、分かっているという表情をすると、リズディアの体を流し出した。


 リズディア達は、体に付いた石鹸の泡を流して、湯船に向かおうと思ったようだ。


 しかし、ただ、1人だけを除いて。




 モカリナは、リズディアの隣に座れたことで喜んでいた。


 そして、湯船に浸かる前に体を洗われることにも抵抗がない。


 メイドにされるがまま、頭から爪先まで、任せっきりで、後ろから手を回されて前を現れようが、足の間に手を入れられようと、気にすることなく、何をされているのかも気づいていない様子で、自分の世界に入っていた。


(と、とな、隣に、リ、リズ、リズディア様が、……。 ああ、隣で、リズディア様が、体を洗っているのよ。 はーっ、リズディア様が、何も付けずに、座って、体を洗っている。 どうしましょう。 見たい。 ……。 うーん、でも、それは、失礼な事なように思える……。 でも、見たい。 あーっ、ダメ。 それは失礼よ)


 モカリナは、ニヤニヤとしつつ、嬉しそうに表情を変えていた。


「モカリナさん。 湯船に行くわよ」


 モカリナは、耳元で、自分を呼ぶリズディアの声を聞いた。


「はい」


 モカリナは、答えると、声のする方向、リズディアのいる方向に視線を向ける。


 モカリナは、隣で座っているであろう、リズディアを見るのだが、そこに、リズディアは居なかった。


 モカリナは、不思議に思うのだが、リズディアは、モカリナに声をかけると、すぐに、後ろに避けて、湯船に向かって、後ずさっていたのだ。


 そのリズディアは、子供がイタズラに成功した時のような表情で、モカリナの様子を伺っていた。


 モカリナは、リズディアが居たであろう場所を見て、不思議そうにしているので、そんなモカリナを見ていたリズディアは、子供がイタズラを成功したといった様子で見ていた。


 すると、モカリナの左側に居た、体を洗ってくれているメイドが、モカリナに声をかける。


「あの、皆様、もう、石鹸を流して湯船に向かってます」


 そのメイドは、モカリナに何も言われてなかったので、モカリナの身体を洗い続けていたのだ。


 そして、そのメイドは、モカリナの右足の太ももの付け根と、膝の裏まで丁寧に洗っていた。


「すみません。 私も湯船に入ります」


「かしこまりました」


 メイドは、急いで、モカリナの石鹸の泡を流し始めた。


(私、嬉しすぎて、リズディア様が、何をしていたのか見てなかったのね。 あー、失敗。 私、舞い上がってしまっていたみたい)


 お湯をかけられながら、泡を流されているモカリナは、恥ずかしそうにしていた。


(侯爵家の御令嬢でも、さすがに、股間や、胸を知らないメイドに洗われるのは、少し恥ずかしかったのかしら。 でも、何も言われなかったから、特に問題は無かったようね。 でも、やっぱり、イルーミク様といい、10代の肌を触れるなんて、幸せだったわ。 やっぱり、この年齢の締まった身体の触り心地は、至宝ね)


 モカリナの身体を洗っていたメイドも、少し、赤い顔をしていた。


「さあ、済みました」


 モカリナの身体を流し終わるとメイドは、一言、モカリナに伝える。


「ありがとう。 とても気持ちよかったわ」


 モカリナは、社交辞令的にメイドに応えると、そのまま、湯船に向かった。


 そこには、大人が、8人程並んで横になれるほどの大きさの湯船があり、リズディアとヒュェルリーンが、並んで湯に浸かっており、離れたところにイルーミクが、湯船に浸かっていた。


 ただ、湯船の淵に呆然と立ち尽くしているフィルランカとエルメアーナが居た。


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