浴室に入ると
ヒュェルリーンとイルーミクは、浴室に入ったところで、固まっているフィルランカと、エルメアーナの後ろ姿を見た。
2人は、目の前にある浴槽に目を奪われていた。
浴室には、濡れても構わなそうな、薄い布だけで出来た簡単な服を着たメイドが数人、立って待っている。
そして、リズディアは、すでに、同じ姿のメイドに体を洗ってもらっていた。
そこへ、モジモジしながら、同じ姿のメイドに手を引かれて、リズディアに近付いていくモカリナを見た。
(モカリナは、お風呂の使い方を知っているから、体を洗いに行こうとしているけど、義姉様が居るから、恥ずかしがっているみたいね。 そして、この2人は、初めて見るお風呂に、唖然としているのね。 まあ、腰を抜かさなかっただけ、良かったってところかしら)
イルーミクは、一緒に来たヒュェルリーンを見ると、やはり、唖然としている2人を見て、ヤッパリという様子で見ていた。
その2人を見ていた担当のメイドは、困った様子で、遠巻きにしている。
すると、ヒュェルリーンは、唖然としていた2人を両手で肩を抱えて、リズディア達の方に連れて行ったので、遠巻きにしていたメイドも後を追うように移動していった。
(よかったわ。 今日のモカリナは、役に立たないけど、ヒュェルリーンさんが居てくれるから助かったわ。 そうじゃなければ、……。 あれは、私の役目だったのよね。 まあ、あの2人、普通だったら、私と一緒のクラスで勉強していたかもしれないのよね)
モジモジしながら、洗い場に行ったモカリナも椅子に座らされて、お湯をかけられ洗われ始めると、そこにヒュェルリーンに連れられた、フィルランカとエルメアーナがメイドに渡された。
そして、モカリナと同様に、椅子に座らされて、体を洗われようとしていた。
フィルランカとエルメアーナを、メイドに渡したヒュェルリーンも、その隣に座ると、自分を担当しているであろうメイドに指示を出しつつ、慣れた手つきで、自分担当する部分と、メイドにお願いする部分を使い分けていた。
「お嬢様もこちらで、お身体をキレイにしましょう」
入り口付近で、周りの様子を眺めていたイルーミクにも、別のメイドが声をかけてきた。
「ありがとう。 じゃあ、いつものように、お願いするわ」
イルーミクは、声をかけてきたメイドに返事をすると、イルーミクも洗い場に移動した。
イルーミクは、メイドに体を洗われつつ、気になっていたフィルランカとエルメアーナの方を確認する。
様子が分かっていない2人は、されるがまま、お湯をかけられて、背中を洗われていた。
その際、石鹸を使われていて、その匂いにうっとりしている様子だった。
(まあ、あの2人は、お風呂に圧倒されてしまったようね。 それに湯浴みは2人で体を洗ったりしているでしょから、人に洗われるのは、抵抗がないみたいね)
イルーミクは、安心して、自分もメイドに体を洗うのを任せた。
「ふんぎゃーーーっ!」
突然、訳の分からない悲鳴のような奇声が上がる。
「ふみゃーーーぁ!」
さらに変な声が上がった。
イルーミクは、その声の方向を見る。
横に座っていたヒュェルリーンは、向こう側を見ていたので、イルーミクは、顔を少し前に出して先の方を見ると、一番向こう側にいたリズディアも気になって覗き込んでいるのが見えた。
(あーっ!)
イルーミクは、リズディアの顔を見て、納得した様子で、ヒュェルリーンの先にいる2人を見た。
そこには、背中を洗い終わって、後ろから手を回して、前を表れているフィルランカとエルメアーナを見た。
2人は、背中を洗ってもらうだけだと思っていたらしく、何も言われてなかったメイド達によって、体の全てを洗われ初めていたのだ。
メイドの手が脇から前に動くたびに、くすぐったさを2人は我慢していた。
ただ、最初は、ビックリして、2人とも声が出てしまい、今は、それを我慢しているようだった。
(あら、2人とも、人に体を洗ってもらうことは無かった見たいね。 仲が良さそうだから、てっきり、一緒に洗うこともあったのかと思ったけど、そうじゃなさそうね。 ……。 きっと、1人じゃ洗えない背中とかだけを、お互いに洗うだけの関係だったのね。 そうじゃなければ、脇とか、前を洗われて、あんな反応はしないわね)
イルーミクは、納得したような表情をしている。
「あのー、すみません。 フィルランカとエルメアーナは、人に体を洗われることに慣れていないので、2人を洗うところは、背中と腕だけにしておいてあげてください」
ヒュェルリーンが、2人の後ろに居て、片手を脇から前に回して洗っていたメイドに声をかけた。
「「かしこまりました」」
2人のメイドは、答えると、前に回していた手をゆっくりと引き抜いて、また、背中を丁寧に洗い出した。
フィルランカもエルメアーナも、顔を赤くしていたが、ホッとした様子をしていた。
2人のメイドは、その後、腕から手までを洗い始めた。
その頃には、フィルランカもエルメアーナも落ち着いたようだ。
「あのー、前と足を洗いますから、それを貸していただけますか?」
「あ、私にも」
フィルランカが、メイドに声をかけると、エルメアーナも、それに倣った。
そして、泡の付いたタオルを受け取って首から胸・腹と、そして、足までを、お互いに洗い出した。
(2人とも、浴室の使い方、……。 と、いうより、上級貴族達の習慣がわかったみたいね)
イルーミクは、ヒュェルリーン越しに覗いていた、フィルランカとエルメアーナを、ホッとしながら見ていた。
ただ、イルーミクは、リズディアやモカリナと同様に、片足を伸ばされて、太ももから爪先まで、足を綺麗に表れていた。




