脱衣所にて
イルーミクと、ヒュェルリーンに連れられたモカリナも大浴場に入ると、リズディアは、もう、下着姿で居た。
その姿だったせいもあり、さっき、3人を呼びに来た時、顔だけを出したようだ。
フィルランカとエルメアーナは、2人で、衣装を脱ぐため、お互いに紐を緩めたり、形を崩さないように心掛けて脱いでいた。
すると、リズディアは、全て脱いでしまうと、全裸のまま、脱衣所から浴室へと歩いて行ってしまった。
6人が揃ったので、リズディアは、周りの様子を気にすることもなく、スタスタと歩いていた。
「あー、やっぱり」
ヒュェルリーンは、少しガッカリ気味にリズディアを見て呟いた。
「どうかしましたか?」
がっかり気味にしていたヒュェルリーンにイルーミクが、気になったようだ。
「あの様子は、きっと、何か考えているわ。 だから、自分の世界に入っているのよ。 これから、何をするか考えているから、今は、周りが見えてないのよ」
ヒュェルリーンは、自分の衣装を脱ぎつつ、この後のリズディアの行動を想像すると、嫌な予感がする様子で、イルーミクに答えた。
その答えを聞いて、イルーミクは、不思議そうに浴室のドアの方に顔を向ける。
(よく知らなかったけど、義姉様って、なんだか、イタズラ好きの子供みたいなところがあるのね。 なんだか、意外な一面を見ているようだわ)
「ねえ、早く脱いで浴室に行きましょう。 リズをイライラさせると、何、イタズラされるか分からないわよ」
ヒュェルリーンは、イルーミクが、ボーッと浴室のドアを見ているので、声を掛けたようだ。
声の方向にイルーミクは、顔を向けるのだが、その表情には、何やら不安そうな様子が伺えた。
脱衣所には、メイド長も入っており、リズディアの着ていた衣装を片付けていた。
イルーミクは、その様子を見た。
(そういえば、義姉様の衣装、床にばら撒かれていたわね)
メイド長は、床に落ちているリズディアが、最後に脱いだ、小さな布を指でつまむようにして持ち上げると、イルーミクの視線に気づいたようだ。
メイド長は、ニコリとする。
「リズディア様は、緊張感のある時と無い時の差が激しいのです。 きっと、皆様には、とても心を許していらっしゃるので、リラックスされているのだと思います」
(まあ、そうなの。 私は、義姉様から、家族だと認められたって事なのかしら)
メイド長の説明を聞くと、イルーミクは、一瞬、考えるような表情をしたが、直ぐに嬉しそうな様子になった。
その様子を見て、メイド長は、安心した様子で、自分の仕事を進めていく。
最初に脱衣所に入って、2人で協力しつつ、脱いでいたフィルランカとエルメアーナが、脱ぎ終わって、どうしようかと思った様子で、残り3人を伺っていた。
「ねえ、フィルランカ。 ちょっと、手伝ってもらえないかしら」
モカリナが、衣装を脱ぐのに手間取っていた。
通常なら、ナキツ家と取引のある洋品店の衣装を着るのだが、今日は、リズディアからのお誘いによって、モカリナもミルミヨルの衣装を着てきたのだ。
衣装の様子も、いつもと違い、家に戻れば、メイドが手伝って着替えるので、今日は、全く勝手が違い、上手く脱げずにいるのだ。
フィルランカは、エルメアーナを見ると、2人とも、この後、浴室に行っても良いのかと思っていたようなので、フィルランカとエルメアーナは、助かったと思った様子で、モカリナの衣装を脱ぐのを手伝いに行った。
2人は、ミルミヨルの衣装だけしか着ることはないので、ミルミヨルの作る衣装の特徴もわきまえているから、お互いに簡単なところも、難しいところも分かっている。
2人は、モカリナの脇に来ると、お互いの動きに応じて、自分の行う作業が理解できている様子で、手際よく、モカリナの衣装を脱がしていく。
上着を脱がせて、スカートを脱がせると、モカリナはブラウスだけの姿になる。
後は、ブラウスと下着を脱ぐだけになると、モカリナは、1人でも出来ると思ったようだ。
「ありがとう、後は、1人でも脱げるわ」
モカリナは、ブラウスのボタンを外すと、ブラウスを脱ぎ、下着に手をかけた。
最後に足から引き抜いた下着を、衣装とまとめて置くと、モカリナは、フィルランカとエルメアーナの方に向く。
「さあ、私たちも浴室に行きましょう」
フィルランカとエルメアーナは、初めて見る風呂なので、直ぐに浴室へ向かえずにいたのだ。
モカリナが、浴室に誘ってくれたことで、安心した様子で、モカリナの後について、浴室に向かった。
イルーミクは、そんな3人の様子を見ながら、自分も脱いでいたので、少し時間をかけていた。
(あの3人って、不思議な関係なのね。 モカリナは、学校でフィルランカと同級生だけど、フィルランカとエルメアーナって、帝国臣民なのよね。 貴族と臣民が、あれだけ親しくしているって、珍しいわよね)
イルーミクは、足から引き抜きつつ、浴室へ行く3人を見送っていた。
(あら、そういえば、エルメアーナは、学生じゃなくて、フィルランカと一緒に住んでいるのよね)
「妹なのかしら?」
「ん?」
隣で、衣装を脱いでいたヒュェルリーンが、イルーミクの呟きに反応した。
「え、ああ、エルメアーナは、フィルランカの妹なのかしら?」
「ああ、エルメアーナは、カインクムさんの娘で、フィルランカは、養女なのよ。 2人とも、同じ歳だから、16歳かな」
それを聞いて、イルーミクは、ヒュェルリーンの顔を覗き込んだ。
「えっ! あの2人、私と同じ歳なのですか」
「そうよ。 フィルランカは、エルメアーナの代わりに学校に通うようになったのよ。 エルメアーナが不登校になって、カインクムさんが心配して、仲の良い2人ならって、フィルランカを隣の孤児院から引き取ったの」
「あら、フィルランカって孤児だったのですか」
(そんな生まれの人が、学年次席って事なの)
イルーミクは、少し驚いた様子で、ヒュェルリーンを見る。
「そうなのよ。 エルメアーナが不登校になってしまったから、店を任せられる人が欲しいって、将来、店番をさせるために、フィルランカを引き取って、店の経営を任せるつもりらしいわ。 ……。 ああ、これ、うちの旦那が、カインクムさんから聞いた話なのよ」
(だけど、フィルランカが、カインクムさんの嫁にして欲しいと言った話は、……。 この娘に言ったら、学校中に広まりそうね。 ……。 うん、黙っていた方がいいわね)
そんな話をしていると、ヒュェルリーンも足から下着を脱ぎおわると、屈んでいた体を引き戻す。
その瞬間、プルンと大きく揺れるものが、イルーミクの目の前に広がった。
それを目の当たりにして、イルーミクは、顔を赤くする。
(ま、大きい)
目の前に広がっている、二つの膨らみから目が離せず、顔を赤くしているイルーミクを、ヒュェルリーンは、不思議そうに見る。
(あら、この子、何を恥ずかしがっているのかしら?)
「さあ、私たちも、浴室に行きましょう。 リズを待たせると、ろくな事ならないから、急ぎましょう」
ヒュェルリーンは、最後に残ってしまい、イルーミクも遅れてしまった。
お互いに脱ぐのが遅れたので、ヒュェルリーンに促されるとイルーミクも浴室に向かった。




