シュレイノリア
少年は、メイリルダに言われて自分達の名前を決める事にし、2人は同じファミリーネームとして、“フォーチュン”を使う事にした。
そして、少女は名前を全て少年に付けさせようとしていた。
少年は嫌だとも言わずに、少女を見つめていた。
「それじゃあ、何か有るかな」
少女も少年をジーッと見ていたので、少年は間を持たせるために言葉を発したようだ。
「シュレディーン? いや、ちょっと違うな。シュレイノ。うーん、イノ。いや、ノリア。ヒューレイ、シューレイ。ディンガー、……。シューレイディングアー?」
少女は少年の言葉を聞きつつムッとしたような表情をしたので、少年は黙って考え始めていた。
そして、少年は少女を見てからメイリルダを見てテーブルの上の料理を見ると困ったような表情をした。
その様子をメイリルダは心配そうに見ていた。
(大丈夫かしら? ちゃんと名前を考えてくれるのかしら? でも、ディンガーってなんなの? どうしよう、とんでもない名前になってしまったら、……。そうなったら、私がダメって言わないといけないわね)
少年を見つつ、メイリルダは不安そうな表情をしていた。
(でも、ファミリーネームはフォーチュンか)
メイリルダは、少し不安な様子は消えた。
(まあ、ダメそうなファミリーネームじゃ無かったから、ファーストネームも大丈夫よね。大丈夫。きっと、大丈夫よ)
そして、メイリルダは、期待を込めたような表情で少年を見た。
少年は、声には出さないが口をゴモゴモと動かして、何か思いついたのかパッと少女を見た。
「なあ、シュレイノリアでどうだ?」
「分かった。私のファーストネームはシュレイノリアで良い。それで、ミドルネームは?」
少女は即答したので、メイリルダは本当にシュレイノリアで構わないのかと驚いて少女を見た。
(えっ、即答なの? まあ、可愛いような感じだから良かったけど、この少女は本当に考えて答えたのかしら?)
そして、心配そうに少女を見るが少女は殆ど無表情だったので、心の内は覗けそうも無かった事が、メイリルダには少し心配に思えたようだ。
(まあ、嫌と言わなかったのだから、ファーストネームはシュレイノリアでいいみたいね)
メイリルダは、ホッとしたのか、諦めたのか、どちらともいえない表情で見ていた。
少女は、自分では全く名前を考えるつもりはなさそうだったが、少年は必死に考えていた。
「うーん、それじゃあ、ディールかな。シュレイノリア・ディール・フォーチュンでどうだ」
少女は、少し考えるような仕草をした。
「シュレイノリア・ディール・フォーチュン」
そして、一言、少年が付けた名前を呟いた。
ファーストネームの時は即答したのだが、ミドルネームまで付けられると何やら考えていた。
(あら? 今度は、考えているわ。でもなんで? ファーストネームは、あれだけ簡単に決めたのに、ミドルネームは考えるの? 普通、逆じゃないの?)
メイリルダには、少女の考えが分からず気になっているようだった。
(ひょっとして、全体の名前の様子を考えているのかしら? それ一つだけなら綺麗に聞こえても、全体だと良く無かったりするから、それで考えているのかもしれないわね。でも、ちょっと長くないかしら。それに、今の名前が気に入らなかったら、私が考えなければならないのか)
メイリルダは、少女を気にしていたようだが、徐々に困ったような表情になっていき、そして、少年も少女が良いのか悪いのかを言ってくれない事から心配そうに少女を見ていた。
少年とメイリルダには、少女が黙って考えている事と、その考える時間が長くなるにつれて不安を覚えたようだ。
少女の考える間が、非常に気になっていたようなので、2人は少女に何か声をかけようとしたのだが、その瞬間、少女が少年に視線を合わせた。
「うん、シュレイノリア・ディール・フォーチュンだな。それで構わない。いい名前だと思うぞ」
その答えに少年は、ホッとしたようにため息を吐いた。
メイリルダは、息をゆっくりと吐き、ホッとした表情をした。
(うわー、助かったわ。これで、私が少女の名前をつける事は無くなったわ。それに、ファミリーネームはフォーチュンに決まったのだから、残ったのは少年のファーストネームとミドルネームだけになったわ)
メイリルダは、少し落ち着いたようだ。
(もし、これで少年の名前が決まらなかったとしたら、少女の名前から考えればいいわよね。そうなれば、少し似てしまう事になるかもしれないけど少し位なら構わないか、な)
メイリルダは、少女を見ると少年の方を見た。
(けど、この少年って何なのかしら、こんな短時間で少女の名前をつけてしまうなんて、私なら何日も考えてしまいそうなのに、……)
メイリルダは、感心した表情で少年を見た。
(これで、少年の名前も考えてくれたら、私が名前を考えなくて済むから助かるわ)
メイリルダとしたら少女の名前が決まったことで、自分の責任が減った事になったが、それを可能な限り表情に出ないようにしていた。
そして、そのまま少年の様子を伺うようにしていた。




