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商会の娘 イルーミク


 モカリナの百面相に戸惑ってしまったフィルランカとエルメアーナと同様に、ジュエルイアンとイルルミューランのモカリナ争奪戦に、しらけた様子のリズディアとヒュェルリーンだったのだが、イルーミクは、そんな中、取り残されてしまった感が強く出ていた。


(私、この雰囲気の中、何だか、取り残されているわ)


 この2組のグループの中に入る勇気が、イルーミクには、無い様子で、少し強張った表情をしている。


(お兄様の、あんな表情、それにジュエルイアンさんと、あんな話をするのね。 少し、意外な感じだったわ)


 フィルランかと、エルメアーナは、モカリナを気にしていたが、リズディアとヒュェルリーンは、それぞれの夫の様子を伺っていた。


 それは、まるで、フィルランカが、エルメアーナを見るように、心配そうにお互いの夫達を見ているようだった。


(そうよね。 フィルランカは、ジュエルイアンさんの系列に入るのだろうけど、モカリナだって、学年5位まで上げているなら、貴重な人材よね。 フィルランカが、ジュエルイアンさんの方に近いなら、うちの商会として、モカリナは、確保しておきたいのかしら? ジュエルイアンさんがお見えになった時にする、2人の話を、時々、聞いたけど、お互いに話をするのは、人の話だったわね)


 イルーミクは、モカリナ達を見る。


(そういえば、商会の中でも女性の存在って、あまり、多くはないわね。 そういえば、帝国大学に進学する女子の比率が低いと聞いた事があるわ。 そうなると、これから、帝国大学に進もうとしている、モカリナとフィルランカは、貴重な人材という事なのかしら)


 イルルミューランは、リズディアに、そして、ジュエルイアンは、ヒュェルリーンに小言を言われている。


 そんな様子をイルーミクは、見ている。


(さっきの、モカリナを商会に誘ったのは、2人のリップサービスかと思っていたけど、本当に必要だという思いもあったみたいね。 あの話し方なら、後で、あの時の話は無かったことにもできるし、その逆も有りよね)


 仮にも商人の家の娘であるイルーミクである。


 兄のイルルミューランの応対方法も、よく見ているようだ


(あの言い回しをするのは、これから先、モカリナが、どうなるのかによって、対応も変わるのだろうから、確定させる話をしていないわ。 それに、モカリナが、今年度の卒業となって、帝国大学に入学するにしても、うちの商会だろうと、ジュエルイアン商会であろうと、入会して仕事を始められるまで、4年もあるのよ。 その間にどうなるか分からない)


 イルーミクは、何かを思い出したようだ。


(そうよ、確か、リズディア様とお兄様が、南の王国に留学した際、一緒に留学した人の中に、御家騒動でお取り潰しになった貴族の娘さんが居たはずよ。 今の帝国は、皇帝陛下が、貴族の不正を本当に嫌っているので、モカリナのナキツ家が、何かに引っ掛かる事だって考えられるのよ。 昔ほど、貴族だからといって、何でも許されるなんて事は無いのだから、お兄様もジュエルイアンさんも、どちらも、モカリナに対して、相談に乗ると言ったけど、どちらも、自分の商会で働かせるとは言ってなかったわ。 きっと、あれが、商人の二枚舌なのね)


 モカリナに対する、イルルミューランとジュエルイアンの話は、かなり、雑な部分が有った。


 イルーミクが考えるように、モカリナは、まだ、学位を取得したわけではないのだから、これから先、モカリナの状況に応じて、対応が変わってくるのだ。


 もし、このまま順調に進んで、モカリナが、帝国大学を卒業して、ジュエルイアンなり、イルルミューランに話に行けば、あの時の約束通りにという話になるだろう。


 しかし、それが、思ったような成績でなかった場合や、何らかの不具合が生じた場合は、あの時の話は、リップサービスだと言って、反故にしても構わないように対応していたのだ。


 イルーミクは、イルルミューランとジュエルイアンの強かさを、感じ取っていたのだ。


 商人として、必要な事は、利益を出すことなので、モカリナが、今の段階でどれだけの利益を出すかは、未知数である。


 現段階で計れないが、大きな稼ぎになる可能性は、ゼロではないのだ。


 ジュエルイアンとイルルミューランは、ここで、その可能性をゼロにしてしまう事はせず、どちらも、今後のモカリナの成長をも見て、4年後にどれだけ成長したかを確認してから、自分に取り込むべきかを判断するつもりでいるのだ。


 その時のために、ここで、自分達から、モカリナが自分達に向く可能性を潰すような事はせず、その時に必要なら取り込む事を考えているのだ。


 人を切るのは簡単だが、良い人材を取り込むには、取り込む側も、取り込みやすいようにしておくのだ。


 そのために、面識を持っておくのだ




 現時点で、次席のフィルランカと、学年5位のモカリナである。


 飛び級で、帝国大学に進んだとして、大きく成績を落とすとは考えにくいと、ジュエルイアンもイルルミューランも睨んでの話だったのだ。


(私も、卒業後には、この商会で働くことになるでしょうから、お兄様達の駆け引きのようなお話は、しっかり、聞いておく必要があるわ。 きっと、その頃には、お父様にも、そのような対応を要求されるのでしょうね)


 モカリナへ、誘いをかけた中に垣間見る、大人の思惑をイルーミクは、感じ取っていたのだ。


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