表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

685/1356

モカリナの百面相 再び


 モカリナは、侯爵家の四女ということもあり、他の貴族の家から縁談の話も無い。


 侯爵家であるナキツ家と、縁戚関係が欲しいなら、四女を嫁に欲しいという話もあるだろうが、四女ともなると、爵位が有るかどうかも分からない、下級貴族との縁談になる。


 上級貴族ならば、長女か次女を望んでくるので、四女にもなると、上級貴族は、敬遠する事が多い。


 ナキツ家として、縁戚に欲しいと思えるような家であれば、進んで縁談に応じるだろうが、下級貴族となると、スツ家のように商人として成功した家ならともかく、それ以外は、裕福な暮らしをしているとはいえないのだ。


 そのような家に、モカリナを嫁に出すのもナキツ家としたら、忍びないので、四女のモカリナの成人後の進路について、ナキツ家としても苦慮していたのだ。


 ただ、モカリナは、リズディアを慕っており、自分も同じように、学業で身を立てたいと考えくれたので、ナキツ家としたら、1人で自立できそうなモカリナに対しては、ホッとしている節もあるのだ。


 モカリナとしたら、リズディアと一緒に仕事ができる環境を望んでいたのだ。


 そんな中、スツ家に居た、リズディアの夫であり、次期当主となるイルルミューランから、卒業後の誘いを受け、なおかつ、大陸一と言われる商人である、ジュエルイアンからもお誘いを受けてしまったのだ。


 モカリナとしては、リズディアと一緒に仕事ができる可能性が、できた事が嬉しい事なのだ。


 嬉しい事だが、大陸一の商人と言われるジュエルイアンの商会にも興味が有ったのだ。


(リズディア様の旦那様から、お誘いされて、ジュエルイアン様からも誘われてしまった。 本当なの?)


 モカリナは、こんな幸運があるのかと驚いているようだ。


(大陸一のジュエルイアン商会と、帝国一のイスカミューレン商会、世界的に見たら、ジュエルイアン商会だわ。 でも、私は、帝国人なのだから、帝国貴族の娘なら、イスカミューレン商会を選ぶべきよね。 でも、大陸の全ての国を相手にするなんて、とても素敵な話よね。 そこの頭取様から、私を誘ってもらっちゃったのよ)


 モカリナは、少し舞い上がっていた。


(私は、高等学校の生徒なのに、まだ、帝国大学に入学も決まってないのに、こんなに、私の将来のお誘いを受けてしまって、構わないのかしら)


 そしてモカリナは、何か思いついたような表情をした。


(あれ、でも、これでもし、帝国大学に入れなかったらどうなるのかしら)


 モカリナの表情が、曇りだした。


(だって、そうよね。 今の2人の話は、帝国大学を卒業する事が条件なのよね。 まだ、入学してもいない帝国大学を卒業するのよ。 ……。 もし、飛び級に失敗して、帝国大学の推薦が取れなかったら、……。 え、ダメよね。 これ、絶対にダメよね)


 モカリナは、心配そうに、腕を組んで、そして、片方の手を口元に持っていって隠した。


(今の所、順調に来ているわ。 1学年の時、1学年の授業と2学年の補修授業に参加して、2学年の授業の半分は取得したわ。 だから、今年は、3学年の授業を受けつつ、去年取得できなかった、2学年の不足の単位を取れば、3年で取得する単位を2年で取得できるのよ。 そうよ、お兄様とお姉様から、優先する授業も聞いていたし、それに、担任の先生にも、フィルランカと一緒に相談に行って、確認しているのよ。 だから、今年度には、卒業可能になるはず)


 モカリナは、曇りだした表情が明るくなった。


(そうよ、このまま、今年全ての単位を取れたら、帝国大学へ推薦されるのよ。 まあ、一応は、入学試験も有るらしいけど、調べた中には、通っている高等学校から、飛び級で推薦された生徒は、落ちることは無かったわ。 だから、飛び級で卒業が、推薦入学の条件だと、暗黙の了解のようなものがあるのよ。 そのために私は、フィルランカと一緒に飛び級を目指したのよ)


 モカリナは、納得したような表情をした。


(そうね。 このお泊まり会が終わって、家に帰ったら、もう一度、飛び級に必要な単位の確認をしておきましょう。 もう1年待って、帝国大学に行くより、少しでも早く、帝国大学を卒業して、私の将来を確立しなくてはいけないのよ)


 モカリナは、確信したような表情をした。


(でも、ジュエルイアン様のお誘いも捨て難いわね。 大陸全土に支店を持つ商人なんてジュエルイアン様だけよね。 ……。 いえ、でも、私は、リズディア様あああ。 リズディア様と同じ商会でお仕事ができるの?)


 今度は、顔を赤くし始め、そして、両手で頬を覆うようにした。


(わ、わた、私、リズディア様の片腕としてお仕事ができるかもしれないのよ。 これって、私は、リズディア様の後を歩きながら、仕事を振られて、その仕事を私がこなすって事よね。 わ、わた、私、リズディア様と、毎日、話ができるのよ。 エヘ)


 両手で抑えた頬の間の、モカリナの鼻の下が伸び始めた。


(私、リズディア様と、いつも、一緒に。 ……。 な、なん、なんて、幸せなの)


 モカリナは、今にも笑い出しそうな表情をしていた。


 その一部始終を、フィルランカとエルメアーナが、見ていた。


(このモカリナの表情、……。 ああ、そういえば、リズディア様の作ったドレスを見せてもらった時の表情に似ているわね)


(モカリナ、大丈夫なのか? あんな表情、初めてみるぞ)


 エルメアーナは、心配そうに視線をモカリナから、フィルランカに移した。


(フィルランカ。 モカリナを何とかしないと、不味くないか?)


 フィルランカに目で訴えたのだが、フィルランカは、モカリナの様子を伺っていた。


「おい、フィルランカ。 モカリナの、あれ、大丈夫か?」


 エルメアーナの指摘で、フィルランカも、少し考えたようだ。


「そうね。 ちょっと、心配かも」


 そう言うとフィルランカは、モカリナの腕を掴んだ。


「ねえ、モカリナ?」


 心配そうに聞くと、モカリナは、ビックリした様子で、フィルランカを見た。


「え、何? 何も無いわ。 大丈夫よ。 が、学校の授業について考えていたの。 み、見落としが、無いかとか、飛び級に必要な単位は大丈夫かとか」


 そのモカリナの答えを聞いたフィルランカは、モカリナの答えと、今までのモカリナの表情が繋がらないので、少し困った様子で、モカリナを見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ