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ジュエルイアンとイルルミューラン


 リズディアに連れられて移動した先の部屋には、2人の男性が居た。


 待っていたのは、リズディアの夫である、イルルミューランと、ヒュェルリーンの夫である、ジュエルイアンだった。


 リズディアが、2人に軽くスカートを摘んで会釈だけすると、フィルランカ、エルメアーナ、イルーミクも同じように会釈をした。


 それは、知っている間柄の会釈なので、モカリナは、驚いていた。


(ちょっと、フィルランカとエルメアーナ、あなた達が、そんな礼で入って良いわけがないでしょ)


 イルーミクは、リズディアの義妹であるので、面識があって不思議ではない。


 ただ、モカリナは、2人の男性が誰なのか、知らないので、フィルランカとエルメアーナの挨拶に驚いていたのだ。


 しかし、モカリナは、2人の態度について指摘する事なく、自分は、挨拶を始めた。


「初めまして、私は、ナキツ・リルシェミ・モカリナと申します。 ナキツ家の四女です。 この度は、リズディア様にご面会の機会を賜りました」


「これは、失礼をいたしました。 私は、スツ・メンサン・イルルミューランと申します。 侯爵家の方から先にご挨拶を賜り、大変申し訳ございません。 スツ家は、爵位の無い、ただの、貴族でございます。 この度は、嫁のリズディアの誘いに応えていただき、誠にありがとうございます」


 リズディアは、元皇女だったとはいえ、今、嫁いだ家は、爵位のない貴族となる、そうなると、侯爵家のナキツ家は、格上に当たるので、イルルミューランは、丁寧にモカリナに挨拶を返した。


「いえ、帝国一の商家であらせる、スツ家にお招きいただき、感謝しております」


 お互いに、貴族らしい、挨拶が終わると、イルルミューランは、モカリナに興味があったのか、すぐに話しかけることにしたようだ。


「そういえば、モカリナ様は、とても優秀だと聞きました。 私の時代は、10位で、やっと、女子が居たのに、モカリナ様も、フィルランカさんも、片手で数えられるなんて、とても凄いことですね」


 イルルミューランは、優しい口調で、モカリナに話をしていた。


「いえ、私は、そこのフィルランカさんと一緒にいられたことで、成績を伸ばすことができました。 私1人では、入学時の成績を維持できたかも怪しい次第です」


 侯爵家のモカリナが、ただの帝国臣民である、フィルランカを立てたので、イルルミューランは、意外そうな表情をした。


「そうですか。 しかし、ご自分の成績は、ご自分が勝ち取ったものです。 誰かが居たからではなく、お互いに切磋琢磨した結果だからじゃないでしょうか。 今の成績は、あなたの実力ですよ」


「ありがとうございます」


「ところで、モカリナ様は、帝国大学へ進む予定ですか?」


 モカリナは、イルルミューランの質問を聞いた瞬間、表情が変わった。


「はい、そのつもりでおります。 できれば、経営学について学びたいと思っております」


「そうですか。 それなら、卒業後は、うちの商会に来て欲しいね。 リズを助けてくれたら、とても助かるよ」


 モカリナは、リズディアの夫であるイルルミューランからの誘いを聞いて喜んでいた。


「おい、イルル。 そんなに優秀な女性なら、こっちにも紹介してくれよ。 それに、エルメアーナとフィルランカは、カインクムの店の娘達だ。 その友達なら、うちの商会で面倒を見るよ」


 ジュエルイアンの横槍が入った。


 モカリナは、自分の思惑とは違う所からの話に、少し驚いていた。


「初めまして、南の王国で商人をしているジュエルイアンだ。 帝国にも、うちの商会の支店がある。 カインクムとは、昔からの知り合いで、そこにいるエルメアーナとは、昔からの付き合いだ。 フィルランカやエルメアーナと組んで何かをしようと思った時は、俺の方で、いくらでも面倒を見させてもらうよ」


 モカリナは、更に驚いた。


 ジュエルイアンと言えば、南の王国の商人ではあるが、大陸中の国という国に支店を持つ大商人である。


 そんな人からのお誘いが受けられるとは思ってもみなかったのだ。


「そこのエルフは、俺の嫁で、筆頭秘書だ。 何か、有れば、俺でもヒュェルリーンでも構わないから、いつでも声をかけてくれ」


(あのエルフの人は、ジュエルイアンさんの奥様だったのか。 皇族では無いけど、ジュエルイアン商会の筆頭秘書? ひょっとしたら、この人達って、私のような学生が、簡単に会える人じゃ無いわ)


「失礼致しました。 ジュエルイアン様、とてもありがたいお申し入れ、痛み入ります」


 モカリナは、その先の言葉に困ってしまった。


 イスカミューレン商会もジュエルイアン商会も、商人達からしたら、雲の上の存在なのだ。


 その重鎮が、4人もモカリナの周りに居るのだ。


 その事で、モカリナは、どちらにも角が立たないように答える方法を探してしまっていたのだ。


「先輩。 ダメですよ。 モカリナ様は、私が、先に話をしたのですから、優先権は私に有ります」


「おいおい、俺だって、優秀な人材は欲しいんだよ」


「ダメです。 彼女は、帝国貴族の家の人なのですから、ここは、イスカミューレン商会で、リズディアの片腕として働いてもらいます」


「「ちょっと、待って」」


 ジュエルイアンとイルルミューランが、モカリナを巡って、言い争いになりそうだったのを、リズディアとヒュェルリーンが、止めに入った。


「こんなところで、話す事じゃないですわ」


「そうです。 モカリナ様は、まだ、帝国大学を卒業してません。 入学もしてない状況で、卒業後の話はないと思います」


 ジュエルイアンとイルルミューランは、頭を冷やしたようだ。


「そうだな。 まだ、先の話か」


「そうですね、先輩」


 すると、2人は、モカリナを見る。


「すまなかった、モカリナ様。 まあ、何か有れば、俺も、ヒェルも力になるよ」


「私も、申し訳なかった。 帝国で、商会の仕事がしたい時は、いつでも言ってきてくれ。 必ず、力になります」


 モカリナは、驚いているが、2人の嫁達は、呆れた様子で、お互いの夫を見ていた。


 そして、ヒュェルリーンとリズディアは、お互いの顔を見て、ガッカリした表情をした。


(これって、私、帝国大学を卒業したら、リズディア様の下で働けるって事なの? え、リズディア様の旦那様が、言ったのだから、確定事項って事なのかしら。 さっき、リズディア様の片腕として働いて欲しいって、言ってたわ。 えーっ! 私、リズディア様と働く事ができるの?)


 モカリナは、顔を赤くしていた。


 そして、徐々に顔が綻び出していた。


「モカリナ。 顔が、少し変よ」


 隣にいた、フィルランカが、モカリナを突っつきつつ、注意を促した。


「あ、ごめん。 フィルランカ。 なんだか、夢でも見ているみたい」


 フィルランカは、モカリナのそんな態度を、どうやって、対処しようか困った様子だ。


 エルメアーナをフィルランカは、見るが、エルメアーナは、フィルランカが、何で自分の方を見ているのか分からなそうな表情をした。


 イルーミクを見るが、イルーミクは、フィルランカの視線を見ると、その目には、私を巻き込むなというような表情をして、視線を逸らされてしまった。


 フィルランカは、エルメアーナの言動も心配だったのだが、モカリナが、貴族らしからぬ事をしないかと不安になったようだ。


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