リズディアを見たモカリナ
モカリナは、リズディアに出会えて、感動している。
校門から入ってきた馬車が、玄関に来るまで、瞬きもせずに見つめてしまったことで、感激の涙(?)まで流していた。
モカリナのナキツ家が、貴族であって、しかも侯爵家だからといって、皇女殿下だったリズディアに、そう簡単に出会えることは無かった。
モカリナと、リズディアは、17歳の年の差があるのだから、チェルエールのように御学友として付き合うことも、あり得ないのだ。
モカリナが狙っていたのは、リズディアが、行政区において、公務を行なっていた事もあったので、リズディアの下で働こうと、帝国大学を卒業して、行政関係の仕事に就く予定でいた。
しかし、それは、リズディアの結婚によって、モカリナの進路は、方向転換を余儀なくされた。
リズディアの結婚の話は、モカリナが高等学校に入学する前に、噂話としてあった。
イスカミューレン商会のイルルミューランに嫁ぐ話が出たが、公爵家から、横槍が入ったのだ。
皇帝である、ツ・リンクン・エイクオンが、リスディアとイルルミューランの結婚させると言い、話を進めさせたのだが、3大公家としたら、どうという事はないが、その下の公爵家としたら、只事ではなかった。
公爵家となれば、皇帝の血筋であり、3大公家程近くはないが、数世代遡れば、何代目かの皇帝に行き当たる。
皇帝陛下の娘であるリズディアが、イルルミューランの元に嫁ぐとなれば、イルルミューランが、公爵家になる最低条件の資格を得るのだ。
他の公爵家としたら、新たな公爵家の設立は、明らかに邪魔でしか無いのだ。
リズディアの夫であるイルルミューランは、爵位は無い貴族の家の後継であり、そして、イルルミューランの父親であるイスカミューレンは、皇帝エイクオンの幼馴染で、今でも交流がある。
今まで、爵位の授与の話が、何度も有ったが、その都度、イスカミューレンは、断ってきた。
しかし、今回、イルルミューランとリズディアの結婚となったら、話は別になるのではいかと、様々な憶測が飛び交った。
イスカミューレンは、息子の結婚に際して、貴族の間を奔走して、様々な根回しをおこなっている。
皇帝の鶴の一声で、話は進むが、周りは、はい、そうですかと、簡単に納得はしない。
そのため、この結婚を成立させるために、貴族の間をイスカミューレンが、動き回っていた事によって、リズディアの結婚の話は、貴族の間では、広く知れ渡っていた。
高等学校入学当時のモカリナは、リズディアの結婚にあたり、行政関係の仕事に就いてもリズディアに出会えることは無くなった事を知っている。
噂のイスカミューレン商会に就職する事を念頭に入れてはいたが、ただ、高等学校、帝国大学を卒業しても、イスカミューレン商会の目にとまるとは思えなかったが、入学すると、次席入学者のフィルランカを知る事になった。
フィルランカは、ただの帝国臣民だった。
一般的には、貴族でも無いただの臣民が、次席入学するなど、稀な話なのだ。
貴族でもない帝国臣民が、皇帝の命によって、貴族の勉学が奨励され、貴族は、常に帝国臣民の見本たれと言われるようになり、貴族の子女が、こぞって、家庭教師をつけて学力の向上に努めさせられた中、次席での入学なのだ。
そんな、貴族社会の子女を押し退けて、帝国臣民であるフィルランカの次席入学は、稀な例なのだ。
モカリナは、自分より成績上位である、フィルランカに近づき、自分の成績も上げている。
そして、フィルランカと一緒に学校生活を送ることで、飛び級に関する方法は、モカリナが、兄と姉から聞いて、2人で一緒に同じ授業を受けることで、上級生のクラスに行く不安と、フィルランカという成績上位者と一緒に行動する事によって、不安だった授業内容の確認を行い、授業に遅れる事なくついていくことができたのだ。
モカリナは、フィルランカに飛び級の具体的な方法を伝えることで、フィルランカに恩を売る事に成功して、自分も授業を受けるために2人で行動することで、不安を排除し、授業の復習も常に2人で行うようにしたことで、授業に遅れる事もなく1年を過ごしたのだ。
モカリナは、今後、帝国大学へ進むにしても、その先の卒業後の事をを考えても、帝国臣民のフィルランカは、都合が良いと考えていたのだ。
リズディアのいる、イスカミューレン商会に就職できれば、それに越した事はないが、万一、ダメだった場合は、フィルランカと、何かの事業を興して、イスカミューレン商会に認められれば、リズディアに出会える可能性は残る事になる。
それに、フィルランカは、ミルミヨルの宣伝塔となって、ミルミヨルの成功を手助けしており、ミルミヨルの店は、イスカミューレン商会の傘下に入り、大きな貢献もしているなら、そんな成功例の一角を担うフィルランカの価値は、モカリナからしたら、とても高いのだ。
モカリナは、あらゆる手を尽くしていたのだ。
しかし、それが、大きく動いたのは、新学年になってからになる。
1年の時は、ただ、ひたすら、勉強をしただけだった。
1学年の授業の他に、上級生の補修授業に参加して、必死に授業についていくだけだった。
上級生の授業を一緒に受けるという事は、場合によっては、教わっている事が前提の上での、授業もあるので、授業についていくために、教わってない部分を先に予習する必要もあったので、全く、余裕が無かったといえる。
2学年になると、イスカミューレン商会の末娘であるイルーミクに出会えたことで、イルーミクから、モカリナの話をリズディアにしてもらうことができて、機会を持ってもらえるようになった。
約束が取り付けただけでも、モカリナとしては、大いなる進歩だったのだ。
最悪の場合、10年以上掛かると思われていたリズディアとの面会が、約束を取り付けられただけでも、大いに進歩したと思っていたのだが、そう思っていたら、偶然にも、フィランカが、知り合いであるジュエルイアンとヒュェルリーンによって、リズディアと出会う事になり、そして、モカリナも、リズディアに出会えるどころか、家にお泊まりのご招待を得られたのだ。
モカリナにとって、この高等学校に入学したことで、幸運に恵まれて、そして、2学年に進級したら、それが、一気に加速したのだ。
元皇女殿下であるリズディアに出会える機会を作るために、モカリナは、必死に画策していたのだが、モカリナ自身の考えでは、出会えるのは、10年以上先、帝国大学の卒業後の話だと思っていたのだが、それが、高等学校2年の、たった今、出会えてしまったのだ。
モカリナにとっては、人生で一番の時間を、堪能している。
自分の計画より、かなり早く、自分の最初の願いが叶い、そして、声まで掛けられてしまったのだ、モカリナの感情は、一気に上がっていた。




