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少年少女とエリスリーンの指示


 転移してきた少年と少女がギルドに保護されてから3ヶ月が過ぎ、その間に、メイリルダが言葉と一般常識を教えていた。


 そんな中、2人の覚える速度は驚くほど早く、3ヶ月なら片言でも話せれば程度に思われていたのだが、その頃になると少年も少女も完全に会話ができるようになっていた。


 一般的に、同じ言語を話す人が1人居ると、言葉を覚えにくいと言われるので、少年と少女の2人は、転移前の言葉が同じだろうと思われていた事もあり、今回は、覚え難いだろうと周囲は予測していた。


 しかし、その予想に反して、2人は過去の転移者と比べても言葉を覚える期間が短かった。


 そして、シュレイノリアの文字の読解力も早く、ギルドの図書館の書物を全て読み終えていた。


 ただ、羊皮紙や木板に書かれた書物なので文字数も少なく、図書館といっても小さな物置部屋程度だった事もあり大した蔵書数は無かった。


 図書館が設置されているのは、始まりの村ではギルド支部だけであって、その理由も転移者のためにというものだった。


 今まで、それ程利用されることも少なかったこともあり、結果として図書館の蔵書数は増える事は無かったのだが、少女は全部の蔵書を読み切ってしまっても通い、同じ本を二度三度と読み返しているとの事だった。


 それをメイリルダが、なんで何度も読み返すのか聞いた事が有った。


 それを聞いた少女は、メイリルダに何を当たり前の事を聞くのだというような表情をした。


「一度読んでも、それだけでは理解にまで至らない。最初に読んだ時に気がつかなかった事が、2回、3回と読むことで新たな発見ができる。それは、知識を得てから読むから理解に及ぶ!」


 メイリルダは、そんなものなのかと思いつつ書物を読む少女を見ていた。




 少年は、少女と一緒に図書館へも行く事もあるが、一通り読み終えると庭で剣を振る事もあるが、それ以上に武器や防具を見る事が好きだった。


 特に、店に展示されているフルメタルアーマーを見ることが多く、時には展示されているフルメタルアーマーの掃除を手伝っていた。


 その時に、少年は不思議そうに、その店の店主に聞いていた。


「これだと、装備するまでに時間が掛かり過ぎるから、もっと、簡単に着け外しができないと緊急事態に対応できないよ」


 少年は、店主にそう言ったが、それを聞いた店主は少年の意味が分からなかった。


 フルメタルアーマーは、昔から各部のパーツを自分の体に一つ一つ取り付けていくので非常に時間がかかるものだと誰もが思っていた。


 それは、過去から今に至るのだが、未来も同じ構造だと誰もが思っていた事なのだが、少年には別の何かをフルメタルアーマーから感じ取っていたようだ。


 そして、フルメタルアーマーには1人でつけられない部分もあり補助が必要な部分もある。


 そんなフルメタルアーマーを少年は、鬱陶しそうに見ては、時々、展示されているフルメタルアーマーに棒を当てたり、その当てた棒を自分に当てて、何やらぶつぶつと呟いていた。




 少年と少女の生活は、言葉を覚えたことで、新たな展開を迎えていた中、ギルドマスターのエリスリーンは、少年と少女の様子を見に寮を訪れた。


 少年と少女の様子を確認すると、メイリルダに指示を与えた。


「あの2人は、言葉を話しているなら、ちょっと早いけど、2人に名前を付けて、ギルドに登録してくれないか? ああ、あの2人に聞いて、自分の付けたい名前が無いようだったら、メイリルダ、お前が付けてあげて」


 エリスリーンは指示だけすると、さっさと、寮を後にしてしまったので、メイリルダは反論し損ねてしまった。


 今まで名前をつけるなんて事が無かったメイリルダとしたら、2人にどんな名前をつけたら良いのかと思い悩んでしまっていた。




 メイリルダは、仕方なく少年と少女と食事をする時に名前の話をした。


「あのね。私には、メイリルダという名前があるのだけど、あなた達2人には、まだ、名前が無いのよ。だから、2人にも名前を着けて欲しいのよ」


 メイリルダは、少し引き攣ったような表情で2人に伝えた。


(あー、どうしよう。これ、2人に断られたら、私が名前を付けなきゃいけないのよね。ファーストネーム・ミドルネーム・ファミリーネームまで、全部考えなきゃいけないのよね。それに、私は、名前なんてつけた事なんて無いから、なんて付けたらいいか分からないわ)


 ただ、少年と少女の様子は、特に困った様子もなくメイリルダを見ていたが、お互いの顔を見ると、また、メイリルダを見た。


「分かったよ、メイリルダ。2人で決める」


 少年がそう言うと、少女は何かに気がついた様子で少年を見た。


「私達は、1日違いで転移してきた。ファミリーネームは、一緒でいい」


「ああ、そうだね」


 少年は納得したように言うと考え出した。


「フォーエバ、フォーマル? ちょっと違うか。……。フォーチュン。……。うん、じゃあ、ファミリーネームは、フォーチュンでいいかな」


「ああ、それでいい。じゃあ、ファーストネームを付けてくれ」


 少年は、何かを思いついた様子で出てきた単語から、ファミリーネームを決めると、少女は直ぐに了承すると、少女は、自分の名前まで少年に付けるように言った。


(何よ。私の心配は、どうしてくれるのよ)


 少女の様子にメイリルダは、呆気に取られて見ていた。


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