表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

663/1356

リズディアのお誘いを話すフィルランカ


 フィルランカは、リズディア達との食事が終わった後、家に戻り、カインクムに話をした。


 フィルランカとエルメアーナがリズディアに招待されている事を聞くと、カインクムは、二つ返事で了解してくれた。


 この時点で、エルメアーナは、自分の不安は消えたのだが、フィルランカには、モカリナへ話を通す必要があったので、エルメアーナほど、嬉しそうにはできなかった。


(これで、カインクムさんの許可は取れたから、私とエルメアーナが、リズディア様の家にお泊まりする事ができるわ。 あとは、モカリナだけね)


 モカリナは、問題ないと思うのだが、話もしてないので、モカリナが、どう思うのかと不安があった。


 ましてや、偶然とはいえ、リズディアと食事までしてしまったのだ、その席で、今度は、お泊まりの約束を取り付けているのだが、その経緯を考えると、モカリナに申し訳なく思ってしまうのだった。


「ちょっと、学校に行くのが、憂鬱だわ」


 フィルランカは、独り言を呟いた。




 フィルランカは、学校に行く。


 教室に入るが、まだ、誰も登校していなかった。


 遠くから通うフィルランカとしたら、駅馬車の時間があるので、その時間に合わせてしまうと、誰よりも早く着いてしまう。


 生徒の大半は、貴族なので、家の馬車での登校する。


 そのため、フィルランカ程、早く登校する生徒はいない。


 フィルランカが登校してくると、徐々に他の生徒も登校してくる。


 登校してきた生徒に挨拶をするなか、今日の授業の確認と、前回の授業の内容を復習していると、モカリナが、登校してきた。


「フィルランカ、おはよう」


 その声は、1年間、聞き慣れたモカリナの声だった。


 フィルランカは、ビクリとした。


「お、おはよう。 今日も、いい、天気、ね」


 フィルランカは、辿々しく答えた。


「どうかしたの?」


「ん、あ、いえ、何も」


 フィルランカは、言いにくそうに答えた。


 それが、モカリナは、一瞬、気になったようだが、それ以上気にする事なく、モカリナは、授業の用意を始める。


「あ、あの、あのね。 モカリナ」


「何? さっきから、フィルランカ、少し変よ」


「あ、ああ、そうかな」


 フィルランカは、言いにくそうに答えた。


(ああ、でも、ちゃんと、伝えないといけないわ)


 フィルランカは、開き直った様子で、モカリナを見る。


「あのね、モカリナ。 リズディア様なのだけど」


 そのリズディアというワードを聞いたモカリナが、ピクリとすると、フィルランカを見る。


「リズディア様と会う機会を、イルーミクは、手配してくれたかしら。 本当に楽しみだわ」


「え、ええ、そうね」


 フィルランカは、言いそびれた。




 そこに、教室に入るなり、声をかけてくる少女がいた。


「フィルランカ、モカリナ。 今週の週末は、一緒に過ごせるわ」


 その声は、イルーミクだった。


 フィルランカは、困ったような表情で、声の主を見た。


 そして、モカリナは、何の話か分かってない様子で、イルーミクを見る。


「ねえ、何のお話なの?」


 モカリナは、話の意味が分からないので、聞き返してしまった。


「リズディアお姉様の事よ。 今度の週末に、泊まりで遊びに来るようにって、話よ」


 モカリナは、驚いていた。


「え! どう言う事なの?」


「何の話って、リズディアお姉様が、今週末に泊まりで遊びにおいでって話よ。 フィルランカが、約束を取り付けてくれたのよ。 フィルランカ、モカリナ、それと、エルメアーナだったかしら、フィルランカの家の娘さんでしょ。 あと、南の王国のジュエルイアン商会、ヒュェルリーンさんでしょ。 それと、わ、た、し」


 イルーミクは、最後に嬉しそうに自分を指差していた。


「……」


 しかし、イルーミクの言葉を聞いて、モカリナは声を失っていた。


 モカリナは、呆然とした表情で、イルーミクの顔から、フィルランカに視線を移した。


「フィルランカ。 私、リズディア様に会える」


「ええ、そうよ」


 フィルランカは、答えるが、表情は少し引き攣っていた。


「会うだけじゃなくて、お泊まりに来なさいって。 ……。 夢みたい」


「良かったわね。 モカリナの希望が叶ったのよ」


「そうね。 叶ったわね。 それ以上の形でね」


 ただ、今の一言を言うモカリナの表情は、一変していた。


「でも、何で、フィルランカが、約束を取り付けた。 リズディア様と? ……。 ねえ、何で、フィルランカが、リズディア様と、約束を取り付けられのよ」


 フィルランカから、モカリナに話ができていたら、何も問題ないはずなのだが、フィルランカが、話そうとした瞬間にイルーミクが話してしまったので、様子がおかしくなってしまった。


「あ、それは、そのー」


「フィルランカは、リズディア様と面識があったのかしらぁ。 ああ、そうよね。 噂が有ったわね。 皇帝陛下の落とし子。 実は、あれ、事実だったのかしら」


「え、いえ、そうじゃなくて」


「そうじゃなくて、だったら、何?」


 そのモカリナの表情に、フィルランカは、青い顔をする。


「何で、あなたが、リズディア様とのお泊まりを、手配できるのよ。 あの噂が、真実だとしたら、今回の話も頷けるわよね。 あなたのお姉様なのだから」


 イルーミクも、そのモカリナの様子を見て、不味いと思ったようだ。


「あ、あのー、フィルランカ。 モカリナに、話してなかったの?」


 フィルランカは、モカリナから、イルーミクに視線を、ゆっくり、移す。


 その視線には、助けを求めていた。


「ああ、ごめんね。 タイミングが悪かった見たいね」


 イルーミクは、申し訳なさそうに、フィルランカに言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ