リズディアのお誘いを話すフィルランカ
フィルランカは、リズディア達との食事が終わった後、家に戻り、カインクムに話をした。
フィルランカとエルメアーナがリズディアに招待されている事を聞くと、カインクムは、二つ返事で了解してくれた。
この時点で、エルメアーナは、自分の不安は消えたのだが、フィルランカには、モカリナへ話を通す必要があったので、エルメアーナほど、嬉しそうにはできなかった。
(これで、カインクムさんの許可は取れたから、私とエルメアーナが、リズディア様の家にお泊まりする事ができるわ。 あとは、モカリナだけね)
モカリナは、問題ないと思うのだが、話もしてないので、モカリナが、どう思うのかと不安があった。
ましてや、偶然とはいえ、リズディアと食事までしてしまったのだ、その席で、今度は、お泊まりの約束を取り付けているのだが、その経緯を考えると、モカリナに申し訳なく思ってしまうのだった。
「ちょっと、学校に行くのが、憂鬱だわ」
フィルランカは、独り言を呟いた。
フィルランカは、学校に行く。
教室に入るが、まだ、誰も登校していなかった。
遠くから通うフィルランカとしたら、駅馬車の時間があるので、その時間に合わせてしまうと、誰よりも早く着いてしまう。
生徒の大半は、貴族なので、家の馬車での登校する。
そのため、フィルランカ程、早く登校する生徒はいない。
フィルランカが登校してくると、徐々に他の生徒も登校してくる。
登校してきた生徒に挨拶をするなか、今日の授業の確認と、前回の授業の内容を復習していると、モカリナが、登校してきた。
「フィルランカ、おはよう」
その声は、1年間、聞き慣れたモカリナの声だった。
フィルランカは、ビクリとした。
「お、おはよう。 今日も、いい、天気、ね」
フィルランカは、辿々しく答えた。
「どうかしたの?」
「ん、あ、いえ、何も」
フィルランカは、言いにくそうに答えた。
それが、モカリナは、一瞬、気になったようだが、それ以上気にする事なく、モカリナは、授業の用意を始める。
「あ、あの、あのね。 モカリナ」
「何? さっきから、フィルランカ、少し変よ」
「あ、ああ、そうかな」
フィルランカは、言いにくそうに答えた。
(ああ、でも、ちゃんと、伝えないといけないわ)
フィルランカは、開き直った様子で、モカリナを見る。
「あのね、モカリナ。 リズディア様なのだけど」
そのリズディアというワードを聞いたモカリナが、ピクリとすると、フィルランカを見る。
「リズディア様と会う機会を、イルーミクは、手配してくれたかしら。 本当に楽しみだわ」
「え、ええ、そうね」
フィルランカは、言いそびれた。
そこに、教室に入るなり、声をかけてくる少女がいた。
「フィルランカ、モカリナ。 今週の週末は、一緒に過ごせるわ」
その声は、イルーミクだった。
フィルランカは、困ったような表情で、声の主を見た。
そして、モカリナは、何の話か分かってない様子で、イルーミクを見る。
「ねえ、何のお話なの?」
モカリナは、話の意味が分からないので、聞き返してしまった。
「リズディアお姉様の事よ。 今度の週末に、泊まりで遊びに来るようにって、話よ」
モカリナは、驚いていた。
「え! どう言う事なの?」
「何の話って、リズディアお姉様が、今週末に泊まりで遊びにおいでって話よ。 フィルランカが、約束を取り付けてくれたのよ。 フィルランカ、モカリナ、それと、エルメアーナだったかしら、フィルランカの家の娘さんでしょ。 あと、南の王国のジュエルイアン商会、ヒュェルリーンさんでしょ。 それと、わ、た、し」
イルーミクは、最後に嬉しそうに自分を指差していた。
「……」
しかし、イルーミクの言葉を聞いて、モカリナは声を失っていた。
モカリナは、呆然とした表情で、イルーミクの顔から、フィルランカに視線を移した。
「フィルランカ。 私、リズディア様に会える」
「ええ、そうよ」
フィルランカは、答えるが、表情は少し引き攣っていた。
「会うだけじゃなくて、お泊まりに来なさいって。 ……。 夢みたい」
「良かったわね。 モカリナの希望が叶ったのよ」
「そうね。 叶ったわね。 それ以上の形でね」
ただ、今の一言を言うモカリナの表情は、一変していた。
「でも、何で、フィルランカが、約束を取り付けた。 リズディア様と? ……。 ねえ、何で、フィルランカが、リズディア様と、約束を取り付けられのよ」
フィルランカから、モカリナに話ができていたら、何も問題ないはずなのだが、フィルランカが、話そうとした瞬間にイルーミクが話してしまったので、様子がおかしくなってしまった。
「あ、それは、そのー」
「フィルランカは、リズディア様と面識があったのかしらぁ。 ああ、そうよね。 噂が有ったわね。 皇帝陛下の落とし子。 実は、あれ、事実だったのかしら」
「え、いえ、そうじゃなくて」
「そうじゃなくて、だったら、何?」
そのモカリナの表情に、フィルランカは、青い顔をする。
「何で、あなたが、リズディア様とのお泊まりを、手配できるのよ。 あの噂が、真実だとしたら、今回の話も頷けるわよね。 あなたのお姉様なのだから」
イルーミクも、そのモカリナの様子を見て、不味いと思ったようだ。
「あ、あのー、フィルランカ。 モカリナに、話してなかったの?」
フィルランカは、モカリナから、イルーミクに視線を、ゆっくり、移す。
その視線には、助けを求めていた。
「ああ、ごめんね。 タイミングが悪かった見たいね」
イルーミクは、申し訳なさそうに、フィルランカに言った。




