表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

662/1356

リズディアのお誘い 2


 フィルランカと、エルメアーナは、今まで、他人の家に泊まった事が無いので、どうしようかとお互いを見つつ、どうやって、答えてよいのかと困った様子だ。


「フィルランカ。 頼む。 何とか言ってくれ」


「ちょっと、私に振らないでよ。 私だって、どうしたらいいのか、分からないわよ」


 2人は、小声で、話している。


「ねえ、次のお休みは、前日から開けておいてね。 必ず来てもらいますから」


 リズディアは、2人が断らない事を前提に話しているが、エルメアーナは、家以外で寝泊まりした事はなく、フィルランカにしても、孤児院とカインクムの家以外で寝た事は無い。


 突然のリズディアの提案に驚いてしまったのだ。


 フィルランカは、初めてのお泊まりのお誘いに驚きつつ、そんな事をしても良いのかと、後ろめたさを感じていたのだ。


 それは、エルメアーナも一緒だった。


 そんな中、フィルランカは、ふと、友人の顔が浮かんだ。


「あのー、リズディア様。 まだ、モカリナに話をしてないのですけど」


 恐る恐る、フィルランカが言うのだが、リズディアの表情は、全く気にしてない様子だ。


「ああ、モカリナさんに、話してダメだったら、諦めるわ。 その時は、5人で楽しみましょう」


 モカリナは、どうでもいいような発言をしてしまった。


(えっ! ちょっと、待ってよ。 モカリナとセッティングしなければ、絶対にモカリナが怒るわよ。 リズディア様が、何と言おうと、モカリナを連れていかなかったら意味がないわ。 ……。 困ったわ。 モカリナに、何も予定が無い事を祈るしかないのかしら)


 フィルランカは、困ったような表情をしているが、モカリナの事を考えたら、エルメアーナの事も、自分の後ろめたさも忘れてしまったようだ。




 リズディアとしたら、フィルランカ達が着ている服を確認できれば良いので、モカリナは、そのついでなのだ。


 今、リズディアの頭の中には、大人向けの衣装のデザインをどうするかと、ここに居る女子4人で女子会をしたいだけなのだ。


 ナキツ家の四女であるモカリナという名前は、聞いただけだったので、それまでなのだ。


 話もした事のない、義妹のイルーミクに面会を頼まれている侯爵家の四女は、今は、どうでもいい。


 ただ、フィルランカとしたら、ここで、リズディアと出会って、更に、次の面会の約束まで付けられたのだから、何としても、モカリナを連れてきたいと思っている。


(でも、来週なら、どうなのかしら? モカリナの予定なんて、知らないけど、リズディア様が誘ってくれたのなら、きっと、喜んで来てくれるわよね)


 フィルランカは、モカリナが了承してくれるか、少し心配をしていたが、相手が、元皇女のリズディアなので、モカリナも了承してくれるのではないかという、希望的観測はあったようだ。


「す、すみ、すみま、せん。 わ、私も、一緒、なの、でしょう、か?」


 フィルランカの横で、緊張しきったエルメアーナが、リズディアに話しかけた。


「何を言っているの? フィルランカさんとエルメアーナさんが、一緒じゃないと意味がないわ。 2人のうちのどちらかが、来れないなら、この話は無しね」


 リズディアは、強い口調で答えた。




 その様子を見て、ヒュェルリーンは、少し残念そうな表情をする。


「エルメアーナ。 リズが、あの口調の時は、断っちゃダメよ。 後で、酷い目にあうわよ」


 それを聞いて、エルメアーナは、酷い目が何なのか気になった様子で、ヒュェルリーンを見た。


「ちょっと、ヒェル。 その言い方は、少し酷いわ。 私は、楽しい女子会を計画しているのよ。 だから、誰も外れてほしくないのよ。 食事も寝る所も、ちゃんと用意するから、お願い。 学生時代の時みたいに、楽しみましょうよ」


 ヒュェルリーンは、その一言で、リズディアが、留学中に行った女子会を、帝都で行いたいのだと理解したようだ。


「もう、仕方がないわね」


 リズディアは、羽根を伸ばすつもりだと分かったヒュェルリーンは、エルメアーナを見る。


「あまり、気にする事は無いわ。 リズは、あなた達と話がしたいのよ。 きっと、女子だけの時にしか話せない話をしたいだけなの。 悪いけど、少し付き合ってあげて」


 ヒュェルリーンは、仕方ないような表情で伝えたのだが、リズディアは、それが気に入らなかったようだ。


「ヒェル、何だか、私がワガママを通しているみたいじゃないのよ」


「いえ、みたいじゃなくて、これは、あなたのワガママに付き合うだけなのよ」


 ヒュェルリーンの返事に、リズディアは、少し拗ねたような表情をする。


「いいじゃないのよ。 あなただって楽しめるのだから、むしろ、ヒェルには感謝してほしいほどだわ。 こんなに若い子達とお話ができるのよ。 あなたの大好きな女の子たちが4人もいるのよ。 そんな事を言うなら、お話好きのヒェルは、呼ばないわよ」


 そう言われて、ヒュェルリーンも、拗ねるような表情をした。


「もう、ヒェルの意地悪。 私が、この子達と話す事が楽しみだってわかっているくせに」


 ヒュェルリーンは、若い世代の女子と話す事が楽しみなのだ。




 空いた時間を埋めるには、人と話す事、特に、噂話などをする事が多いので、世代の違う人からの話は、ここでは喜ばれている。


 それ以外となると、外でスポーツをする、室内でゲームをする程度の娯楽しか無いので、彼女達にしたら、話をするというのは、娯楽として大きな意味を持っているのだ。


 特に、若い女子達の話は、バラエティーに富んでいるので、ヒュェルリーンには、楽しみの一つなのだ。


「だって、ヒェルが、意地悪を言うからでしょ。 だから、私も意地悪をしただけよ。 お互い様じゃないの」


 リズディアは、ヒュェルリーンとの会話を思い出した。


 その話を冷静に思い出すと、ヒュェルリーンの言うことにも納得できたようだ。


「分かったわ。 じゃあ、お互いに言い合ったところで、これで終わりね」


「そうね。 終わりね」


 そう言うと、2人は、お互いに笑い合った。


(2人は、とても仲が良いのね)


(ヒェルは、本当に、リズディア様と仲が良いのだな。 さすが、私のヒェルだ)


 フィルランカは、感心したような表情をするが、エルメアーナは、ホッコリした表情をしていた。




 ただ、フィルランカには、一つ困った問題があった。


(ああ、でも、モカリナの事、どうしよう。 でも、この様子でリズディア様に相談しても、何か、アイデアをもらえそうも無いわ。 やっぱり、モカリナと相談して、予定を合わせてもらうしかないのかもしれないわね)


 フィルランカは、次に学校でモカリナに、どう話そうかと思ったようだ。


(でも、モカリナの予定って、どうなんだろう。 ……。 いっその事、黙っていたら、……。 ああ、ダメよ、イルーミクから、話が漏れた時の事を考えたら……)


 フィルランカは、青い顔をする。


(ああー、絶対、これ、後からバレたら、とんでもないことになるわ。 後でバレたら、モカリナは大激怒だわ)


 フィルランカは、この世の終わりのような表情をしていた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ