リズディアのお誘い
エルメアーナの反応に、周りは、ホッコリしていると、フィルランカは、一つ疑問が浮かんだ。
(ミルミヨルさんの服もだけど、カンクヲンさんの靴も、ティナミムさんの髪の毛のセットも、とても素敵だったわ。 それなのに、何で3人は、私に、色々、提供してくれたのかしら。 私の噂に便乗したって、言ってたわ。 それに、この4人は、私を知っていた)
フィルランカは、ジュエルイアンとイルルミューランを見る。
2人は、もう、自分達の話に入っていた。
そして、視線を横に移すと、リズディアが、嬉しそうにフィルランカを見ていた。
フィルランカは、あまりに綺麗な笑顔なのだが、その裏に何か思惑がありそうだと察したようだ。
(この笑顔、何だか、モカリナが、意地悪を考える時とか、面倒臭い事を言う時の表情に似ているわ)
フィルランカは、視線が合った事を、後で後悔しない事を祈ったようだ。
「ねえ、フィルランカさん。 後で、あなた達、うちに来ない? それで、ちょっと、あなた達の採寸をさせてもらいたいのよ」
フィルランカは、ミルミヨルの店での採寸の事を思い出した。
下着の状態で、一通りの寸法を測るのだが、初めて出会ったリズディアの前で、下着姿になるのかと思ったようだ。
「あのー、本当に採寸が必要なのですか?」
フィルランカは、少し嫌そうな表情をする。
「ええ、そうよ。 ミルミヨルが、フィルランカの体型と、衣装の寸法を確認したら、体型の補正をする為のノウハウが見えてくるのよ。 だから、お、ね、が、い」
(しまった。 これって、絶対に逃げられないやつだ)
フィルランカは、リズディアの表情を見て、困ったような表情をした。
「それじゃあ、今度、モカリナと一緒に会ってもらえますか?」
「ええ、問題無いわ。 その代わり、その時は、今日とは違う服を着てきてね」
(リズディア様ったら、ひょっとして、ミルミヨルさんの服を、全て調べるつもりなんじゃ、……)
フィルランカは、引き攣った笑いを浮かべる。
「ああ、そうだ、その時、エルメアーナさんも一緒よ」
エルメアーナは、ヒュェルリーンと話をしていたのだが、自分の名前が出たので、リズディアの方を見た。
「私が、どうかしたのか?」
「エルメアーナさん。 今度、私の家に遊びに来ませんかと、フィルランカさんと一緒に」
リズディアは、ニタァと笑うので、フィルランカは、嫌な予感しかしないのだが、エルメアーナは、嬉しそうに、身を乗り出した。
「本当なのか。 私をリズディア様の家に招待してくれるのか。 あ、いや、ですか?」
「ええ、エルメアーナさんも、フィルランカさんも、モカリナさんも、招待するわ」
「おお、皇族の方だった人と、お話ができるだけでなく、家に行けるのか。 モカリナの家も素敵だった。 あの庭も、建物も、何もかも素敵だった」
フィルランカは、モカリナの家に行った時の事を思い出しているのか、困ったような表情をする。
(ああ、また、モカリナの家の時のようになるのかしら)
「ああ、でも、私は、今は、ナキツ家と比べたら、落ちるかもしれない、……。 まあ、似たようなものかもしれないわね」
リズディアは、ナキツ家と自分のスツ家を比べたようだ。
スツ家は、帝国一の商会ともなれば、下級貴族といえども、商売での稼ぎは、他の貴族の荘園からの上がりより大きくなっている。
そのため、侯爵家のナキツ家と同等の力は持っているのだ。
リズディアは、その事を考えると、下級貴族ではあっても、かなりの経済力を有している事を考えたようだ。
「そうね。 早い方がいいわね。 フィルランカさんは、モカリナさんに、今度の休みの日に、私の家に遊びに来るように伝えておいて、私は、イルーミクに伝えておくわ。 それと、フィルランカさんとエルメアーナさんは、私の家の馬車で迎えに行って上げるから、心配しないでね。 そうね。1日、いえ、お休みの前の日に、お泊まりでおいでなさい。 フィルランカさんとエルメアーナさん、それに、モカリナさんと、義妹のイルーミクでしょ。 それに私と、ヒュェルリーンよね」
リズディアが、どんどん、話を進めていく。
「そうね、フィルランカさんは、学校の制服のままでいいわ。 だから、モカリナさんと一緒に学校がおわってからにするわ。 そうなると、イルーミクと3人を学校で拾えばいいわけよね。 じゃあ、エルメアーナさんは、家に迎えに行けばいいわね。 だから、学校が終わる前にピックアップするわよ」
すると、ヒュェルリーンを見る。
「ヒェルは、旦那さんと一緒に、私の家に来るのよ。 旦那たちは、男同士で酒でも飲ませておきましょう。 それで、私たちは、皆んなでパジャマパーティーね。 久しぶりにヒェルとお風呂に入りたかったのよ」
その風呂と言うワードを聞いて、フィルランカとエルメアーナは、お互いを見た。
2人は、常に桶で湯浴みをする生活なので、風呂と言う単語を聞いたことはあるが、入った事は無い。
その2人の様子を見て、リズディアは、何を焦っているのか、よく分からないような表情をする。
「ああ、楽しみだわ。 女子会よ、家で女子会なんて、できるとは思って無かったから、とても楽しみだわ」
リズディアは、勝手に話を進めてしまったので、フィルランカは、自分の疑問を聞く事ができずにいた。




