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ギルドの様子 2


 先輩受付嬢は、メイリルダに2人と手を繋げと言ったのだが、メイリルダには、うまく伝わらなかったことにイラついていた。


「これだと、少女の手が離れたら、あんた分からないでしょ。この子達は、話もできないのだから、話ができるようになるまでは、あなたが手を繋ぐの! 間接的に繋いじゃダメ!」


 そこまで言われて、メリリルダは納得し少年と少女を見ると、2人はメイリルダを見つめていた。


「外は、危ないから、2人とも、私と、手を繋いでね」


 そう言うと、少女の空いている手をメイリルダが取ると3人は輪になった。


 そして、少年と少女の手を離すつもりで、その間をメイリルダが歩いて行こうとするのだが、その手を2人は離そうとしなかった。


 メイリルダは、困った様子で一歩下がって蹲み込んで2人に目線を合わせると、2人が繋いでいる手を見た。


「ごめんね。ここの手を離してくれないと歩けないの。だから、2人の手を離してくれないかしら」


 メイリルダの言葉を、2人はジーッと見つめてから、言われた通りに2人の手を離した。


「ありがとう」


 メイリルダは、2人に言うと玄関の扉を見た。


 すると、両手の塞がったメイリルダに代わって、少年が、その扉を開けてくれた。




 メイリルダは、少年と少女に両手を握ってギルドの寮まで移動する事になり、寮に戻ると門には、出る時には居なかったのに2人の冒険者が、門番として立っていた。


 それも、このギルド内でもランクの高いと言われている冒険者達で、メイリルダも名前と顔は知っている2人だったので、その警戒ぶりに少し驚いていた。


 メイリルダとしたら、そこまでの警備が必要なのか、少し疑問があったようだが、ギルドの意向となれば、メイリルダは従うしかないので、ありがたそうにして寮に入っていった。


 建物の中に入ると、管理人がメイリルダ達を見つけて近寄ってきた。


「メイリルダ」


 管理人は、メイリルダの名前を言うのだが、視線は、メイリルダの連れてきた少女に釘付けになっていた。


 そして、少女の前にしゃがみ込んで様子を伺っていた。


「この子が、昨日転移してきた子供じゃないのか? 昨日は、助かるかどうか分からないって言われていたのに、もう歩けるようになったんだね」


 管理人は驚いた様子で、少女を隅々まで確認するように見ていたが、メイリルダには、管理人が何でこの子が昨日転移してきた少女だと分かったのかと言うように不思議そうな表情を浮かべた。


「あのー、管理人さん? 何で、この少女が、昨日転移してきたと分かったのですか?」


 それを聞いて、管理人は残念な人を見るような目でメイリルダを見上げた。


 メイリルダは、その視線に見つめられて困ったような表情をした。


「本当に、お前さんは、おめでたいね」


 管理人は、メイリルダにガッカリ感を感じつつ、ゆっくりと立ち上がった。


「あのね、メイリルダ。お前は、その少年の担当をさせられているのよ。今回の転移者は、ジェスティエンの後だから警戒を厳重にする必要があるって決まっていたんだよ」


 メイリルダもジェスティエンの事は聞いている。


 ジェスティエンは、火薬と銃を発明したこともあり、転移者の有用性について他国も大いに気にしていた。


 そのため、話もできない時期に誘拐の可能性が考えられた。


 少年が転移してきた当日なら、情報も伝わらないないだろうが、3日目ともなれば、何らかの動きが出てきてもおかしくはないとギルドは考える。


 そのような状況の中、少年の担当をしているメイリルダに、一般人をメイリルダに近づけるようなことはあり得ないが、それでもメイリルダに近づけても構わないとなったら、昨日転移してきた少女しかいない。


 管理人にも重傷で運び込まれた転移者の少女の事は伝わっている。


 その少女もメイリルダに預けることは、管理人にも話が来ていたので、退院後には、メイリルダ達の住んでいる部屋に押し込めば良いだろうと思っていたのだ。


 ただ、重傷で運び込まれた少女なのに、翌日には歩いて寮に来るとは思っていなかったが、ひょっとすると大袈裟に重傷と言われていたのかもしれないと、メイリルダが少女を連れて帰ってきた事から思ったようだ。


「回復は早かったんだね。重症と聞いていたから、寮に貼るのはもう少し後かと思っていたのに……」


 そう言われて、メイリルダは病室でのことを思い出していた。


「ああ、この子と手を握っていたら、何だか、だんだん回復したみたいなんです。医師長も、様子を見て驚いていました。あ、でも、診察が終わったら、さっさと追い出されてしまいました」


 管理人は、ガッカリした。


 管理人は、医師長が退院させたことによって、寮の戸締りなど気をつけなけばならない事が増えたと思ったようだ。


 人手不足の状況なので、医師達も警備を手伝う必要があったのだが、少女が退院してくれたことで、医師達は警備の仕事から解放されたが、今度は、自身の担当する寮になる。


 門番が立ち護衛が居るとはいえ、建物内の管理は自分の管轄なので、不注意から戸締りを忘れるとか火の後始末についても十分気をつける必要が出てきていた。


 管理人は、自分達の負担が増えたような気になったみたいだ。


「ふーん、そうかい。それじゃあ、お前達3人は寮から出せないな。これからは、寮の中と寮の庭だけが行動範囲だ。寮の外に出る時は護衛を付けるから、その時は予め話をするようにな」


 それを聞いて、メイリルダは何でそんな面倒な事になるのかと思ったようだ。


「それって、外に出るには毎回ですか?」


「当たり前だ。ギルドは隣だから、そこの門番をしている冒険者に頼めばいいが、それ以外は必ず護衛をつける。だから、一昨日みたいにお前の家に行く時だって、これからは注意する必要があるの! 必ず護衛をつけさせるからな」


 それを聞いていて、メイリルダは、これから先、どんな時にも誰かがついて回ると思うと動き難いと思い、簡単に外に出ることが叶わない事に、やりきれないような表情をしていた。


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