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放課後の2人


 昼食の時にリズディアの作ったドレスが、話に上がり、授業終了後に見せてもらえる約束を、イルーミクとしたことで、モカリナは、授業中も嬉しそうにニヤニヤしていた。


(まあ、分からないではないわね。 私も、カインクムさんに食べさせる料理を考えている時とか、……。 うーん、そうよね。 新しい料理を覚えて、初めて食べてもらえる時は、料理を作っている時から、本当に、楽しいのよね。 きっと、モカリナも、そんな感覚なのかもしれないわ)


 フィルランカは、モカリナの表情を自分の事と、重ね合わせて見ていた。


(それより、授業に集中、集中。 午後は、3年生の為の2学年の補修授業だけど、これを落としたら、洒落にならないわね)


 フィルランカは、授業に集中することにした。




 午後の3年生の為の補修授業が終わると、モカリナは、立ち上がった。


「さあ、フィルランカ。 一緒に行くわよ」


「えっ!」


 フィルランカは、今日は、モカリナに誘われる事は無いだろうと思っていたのだが、モカリナにノリノリで誘われたことに、驚いていた。


「誘われたのは、モカリナでしょ」


「何、言っているのよ。 あの時、イルーミクは、秘密を誤って話してしまったのよ。 私とあなたの前でよ」


(私は、黙っていたら、平気よね)


 フィルランカは、モカリナの言葉を聞いて、何か考える様子をするが、モカリナは、意気揚々としている。


「あれは、私達が、イルーミクと秘密を共有したのよ。 だから、私達は、セットで、あのドレスを見る権利があるのよ」


「はぁ」


 フィルランカは、気のない返事をした。


 それが、モカリナには、少し不満のようだ。


「フィルランカ! 私達は、とても貴重なモノを見る機会を得たのよ。 だから、私達2人が、セットで見にいく必要があるのよ」


(なんで、私がセットって、私は、モカリナのオマケなのかしら)


 フィルランカは、困ったような表情をしながら、机の上を片付けていた。


 フィルランカは、モカリナの勢いが、少し怖かったのだろう、隙をみて逃げ出す用意をしつつ、少し少し、離れていた。


「さあ、行くわよ。 フィルランカ。 ドレスを見に!」


 フィルランカは、嫌そうな顔をしていた。


(私は、カインクムさんの食事の用意をしたいのよ。 だから、早く帰って、仕込みをしたいのだけど)


 そんなフィルランカの思いを気にすることなく、モカリナは、話を続ける。


「フィルランカも、素敵なものを見ることで、料理に対するヒントにもなるわ。 美味しい料理だといっても、見た目も大事なのよ。 盛り付けとか、見せ方は、良いモノを、沢山見て、それを参考にするのよ」


 その瞬間、フィルランカの目つきが変わると、突然立ち上がって、モカリナに顔を近づけた。


「ええ、そうよね。 食べる時って、料理を見てから、口に運ぶわね。 美味しいより先に、目で見る事が最初よね。 そうだわ、見た目がダメな美味しい料理と、見た目が綺麗な不味い料理。 ……。 そうよね、見た目の綺麗な、美味しい料理なら、無敵よね」


 フィルランカが力説すると、モカリナは驚いた。


 今まで、乗り気で無かったフィルランカが、一変して、真剣にモカリナに力説するので、ビビってしまったようだ。


(まあ、料理に関する、フィルランカの妥協の無さは、こうなのよね)


 今度は、フィルランカが乗り気になり、その勢いに、今度は、逆にモカリナが、焦ったようだ。


(でも、これが、フィルランカなのよね。 料理を絡めたら、本当に変わるわ)


 モカリナが、驚いていると、フィルランカは、そんなモカリナを見る。


「何しているの? 直ぐに行くわよ。 時間は有限なのよ。 ここで、のんびりしているより、ドレスをシッカリと確認するのよ。 細部まで確認するわよ」


 今度は、フィルランカがノリノリで、モカリナを促し、そして、モカリナの手を引くようにして教室を出ようとする。


「フィルランカ、ちょっと、待って! 支度をするから」


「えっ!」


 モカリナは、机の上の教材等を慌てて、自分のバックに入れる。


 その時間ももどかしそうにしているフィルランカなのだが、黙って待っている。


 モカリナが、バックに入れ終わるとフィルランカをみる。


「さあ、ああぁーっ!」


 行こうと言う前に、フィルランカは、モカリナの手を取って、教室を出て、この前、ドレスを見た教室に向かうのだった。




 フィルランカは、モカリナを引っ張るようにして、教室を出た。


(やっぱり、フィルランカには、料理なのね)


 モカリナは、フィルランカに圧倒されていたのだが、直ぐに、自分の目的を思い出す。


(私は、リズディア様の作ったドレスが見れるのよ)


 モカリナは、思いとどまった様子で、引っ張られていた手だったが、落ち着いてフィルランカの歩く速度に合わせられるようになった。


 ただ、引っ張られた手は、そのまま、手を握るようにして、2人は、廊下を急足で移動していた。




 目的の教室に着くと、扉をノックしてから、教室に入った。


 そこには、イルーミクが、待っていた。


「あっ、2人とも、ドレスを作ったのは、リズディアお姉様という話は、部員にも内緒なの。 だから、リズディアお姉様の名前は、内緒ね」


 イルーミクは、2人だけに聞こえるような声で、口の前に右手の人差し指を立てながら話した。


「はい、わかっております。 それで、ドレスは、何処に?」


 いつもは、モカリナが話すことを、今日は、フィルランカが、モカリナよりも早く話をした。


 昼休みの時と、立場が逆転している事に、イルーミクは、少し戸惑った様子で、モカリナを見た。


 モカリナは、バツが悪そうな表情をしていた。


「すみません。 料理の事になると、フィルランカは、人が変わってしまうのよ」


 それを聞いて、イルーミクは、不思議そうな顔をする。


「え、料理? この部屋に食べ物なんて無いわよ」


「いえ、ドレスが有ります。 ドレスを見たら、何か、料理のアイデアに繋がるかもしれません」


 イルーミクは、微妙な顔をしていると、モカリナは、済まなそうな表情を向けた。


「フィルランカは、盛り付けとかの参考にしようと思っているのでしょう」


 それを聞いて、イルーミクは、そう言う事なのかと、納得したようだが、モカリナは、自分が、本当にドレスを見学できるのか、心配になったようだ。


「わかりました。 では、こちらへどうぞ」


 そう言うと、奥の準備室の扉の方に、イルーミクは、2人を招いた。


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