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少女の回復力 4


 メイリルダは、医師長に言われ少女の服と下着を取って、処置用のベットに寝かされている少女のところに戻ってきた。


 医師長の白衣を掛けられた状態で寝かされている少女を見ると笑顔を向けた。


「さあ、お着替えをしましょう。お着替え」


 メイリルダが覗き込み笑顔を向けていたので少女もメイリルダを見ていた。


「お、き、が、え?」


 少女が、メイリルダの言葉に答えるように言ったが、返事が返ってくるとは思っていなかったので、少し驚いたような表情をするが直ぐに嬉しそうに笑った。


「そうよ、お着替えをするの」


 そう言うと、メイリルダは持ってきた服を少女の頭の脇に置いて、少女にかけられている医師長の白衣を剥がした。


 全裸の少女を見て、身体中にできている傷痕を確認すると、緊張するような表情をした。


(女の子に、こんな酷い傷痕が残っているなんて、……。これじゃあ、肌を出せるような服は着れないわね。肩も出せないし半袖だって傷痕が出てしまうわ。足だってスカートは無理よね。なんだか、可愛そうだわ)


 メイリルダは、表情を曇らせまいと必死に表情を変えないように、少女をベットに立たせると持ってきた下着を手に取った。


「じゃあ、下着から着けるから片足をあげるわね」


 そう言って、少女の左足を持ち上げるようにすると、少女は倒れないようにメイリルダの肩に手を置いた。


 上げた足に下着を通してあげると、今度は、右足を上げるように触ると、少女は右足を上げてくれた。


 両足を通したので、下着をあげて腰を隠してあげると、もう一つの下着を手に取った。


そこには子供用のパットの入ってない布製の胸用の下着が有った。


 その下着を見て、少女の胸を見た。


 転移者は、10歳程の少年少女として転移してくるのだが、この少女は少年よりも小さいと思えたようだ。


(これだと、10歳とは言い難いわね。少年と比べたら、2・3歳位下に思えるわ)


 メイリルダは、少女の胸を見つつ何かを思ったようだ。


(登録する年齢は、考えた方がいいのかもしれないわね)


 メイリルダは、少女に胸を隠すだけの少し厚手の布で胸を覆うだけの下着を頭から被せた。


 胸をその下着で隠してあげると、シャツを着せてから上着を着させた。


 そして、スカートを履かせるのだが、そのスカートは膝までの長さしかなく膝から下の傷は隠せ無かった。


 だが、残っていたソックスは長いものを用意されていたので、そのソックスを履かせると、太ももの中ほどまでを隠すことができるハイソックスだった。


 スカートの裾より上まで覆い隠すことができたので、メイリルダの表情は和らいだ。


(これなら、足の傷も隠せるわね)


 メイリルダは、ホッとしたようだ。


 メイリルダとしたら、女の子の体に傷のあるのは耐え難い事で、それが周りに見られてしまうとなると良い気はしなかったのだ。


 それが、用意された服によって全て隠された事でホッとしたようだ。


 メイリルダは、着替え終わらせると医師長の方を確認した。




 そこには、少年の診察を終わらせた医師長が少年をジーッと見る姿があった。


(やはり、この少年には治癒の魔法を持っているのかもしれないな。昨日の手術の時だって、あの状態では助かる見込みがほとんど無かった。転移者だったから治療をしたが、一般の冒険者だったら諦めるほどの怪我だったんだ)


 医師長は真剣な表情で少年を見ていた。


(あの状況で、諦めずに治療したのは転移者だったからであって、彼女が何かをもたらす可能性があったから治療を行っていたが、医師の誰もが助かる見込みは無いと思っていたはず。少年が声をかけて手を握った途端助かる見込みが、どんどん上がってきた。それは、きっと他の医師も感じていたはず)


 医師長は、少年の手を持ち、親指で少年の手のひらを摩りながら、その手を見ると、ひっくり返して手の甲も確認していた。


(この手には、ヒール以上の力があるだろうな。癒す、傷を治す。……。ひょっとすると、破損した部位も再生させてしまう力も持っていたりするのかもしれないな)


 医師長は、その手を見て笑顔になった。


(いや、それは期待しすぎか。破損した部位を再生させるなんて事は不可能だろう。それに、そんな事は聞いた事も無い)


 医師長は、少年の手に医療に関する魔法もあると考えていたのだが、その中に、今まで不可能とされていた破損して無くなってしまった部位の再生までできるのでは無いかと冗談で思ったようだ。


 できればいいと思ったようだが、そこまで期待をしてしまい出来なかった時の絶望感を考えると、その可能性について口にする事は無かった。


 メイリルダは、医師長が少年の手をとって、その手を凝視している姿を不思議そうに見た。


「あのー、医師長。少女の服を着せました」


 そう言って医師長の白衣を手に持って、その白衣を医師長に返そうとしていた。


 医師長は、メイリルダを見ると手に持っていた自分の白衣を確認し立ち上がって、その白衣を受け取って着ると、また、椅子に座って少年を見た。


 少年は、今まで医師長を見ていたのだが、今は、もう少年の興味は医師長ではなく別のものにいっていた。


 少年の視線の先には、着替えた少女がいた。


 少年の興味は、完全に少女に向いていた。


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