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少女の回復力 3


 メイリルダは、顔から耳まで真っ赤にしつつ、女の子座りをしながらスカートの裾を持って膝を隠していた。


 それは、尻餅をついたことで正面に居た少年と少女にスカートの中を見られてしまい、下着の色を言われてしまった事にある。


 見られたことも恥ずかしかったのだが、2人が何気に下着の色を声に出していたことで、さらに恥ずかしくなっていたのだ。


「しろ」


「シ、ロ」


 少年と少女は、また、同じ事を言ったので、メイリルダの恥ずかしさは頂点に達し、耳を赤くして俯いていたが2人に下着の色を言われてムッとし、真っ赤な顔で2人を睨んだ。


「白、白、言うんじゃない! それに少年は、私の着替えを見ているのだから下着の色位知っているはずよ!」


 メイリルダは、2人に怒鳴ってしまった。


 少年と少女は、メイリルダの怒鳴り声に驚いたようだが、その怒鳴り声に驚いたのは2人だけではなかった。


「どうした、メイリルダ! 少女に何かあっ……、た、ようだな」


 メイリルダの怒鳴り声に反応したのは少年と少女だけでなく、隣の部屋にいた医師長にも聞こえ、少女が急変したのかと思い慌てて医務室から来た。


 しかし、少女の様子を見て、どう反応していいのか分からないという顔をし、状況が理解でると真剣な表情になり、少女の前でしゃがみ込んで傷の様子を確認した。


「うん、ちょっと確認したい。メイリルダ。お前は少年を連れてこい!」


 そう言うと少女を抱き抱えて立ち上がり、その勢いで少年と少女が繋いでいた手が離れた。


 少年は名残惜しそうに少女を見るが、医師長は少女を連れて隣の医務室の方に歩いていった。


 それを少年が追いかけるため、メイリルダも慌てて立ち上がると少年の手をとって後を追いかけた。




 医師長は、少女を処置用のベットの上に寝かせると、すぐに体に巻かれている包帯を外し出した。


 まず、一番手近の右腕の包帯を外して右腕の傷を確認すると信じられないと言った表情をした。


 右腕を確認し終わると、左腕、右足、左足、そして胴体と、全ての包帯を外して確認していった。


「どう言う事なの? 昨日、手術で繋いだところも治っているわ」


 医師長は、怪我の治り方の速さが尋常ではない事に驚いていた。


 全ての傷を確認して、自分の見ているものが信じられないという表情で少女の身体を眺めていた。


 その様子をメイリルダは、ちょっと困ったような表情で見ていたが、医師長は気にする気配もなく少女の傷の様子だけを見ていた。


「どうなっている。ほとんど完治したと考えても構わない。こんなに治りが早いと言うのは、……、これは、転移者だからなのか? ……。いや、昨日の怪我の様子と今朝の様子を見たら、こんなに早く回復するようには思えなかった」


 医師長は、少女の様子に集中していた。


「あのー、医師長」


 メイリルダは、医師長の様子を見て不安そうに声を掛けルガ、その声を聞いて医師長はメイリルダではなく、その前にいる少年に視線を向けた。


「そうだ。昨日も、この少年が手を握って声をかけたら回復傾向に向かったんだ。それに、今日、面会させた後に、少女は体を起こすまでに回復していた。……。いや、気が付いたら傷が治っていた」


 医師長は人に聞かせるのではなく自分に言い聞かせるように言葉にしていたので、メイリルダは、その言葉に答えるべきなのかと不安そうに聞いていた。


 医師長は、鋭い目つきで少年を見た。


「この少女の回復力が、自分自身に有ったなら手術後から今朝までに同等の回復状況になるはず。でも、そんな事は無かった。少女の回復力だけなら、それ程高くは無いという事の証明だな。そうなると、この少年に回復する力があったとなるのか」


 医師長は少年を凝視していたのだが、少年は医師長を見てはいなかった。


 今までなら、少年は医師長の視線を受けると見返していたのだが、今回は医師長を見るような様子は無く、その後ろを見て顔を少し赤くしていた。


「医師長、そろそろ少女に服を着せてあげませんか」


 メイリルダは、少年の視線が診察用のベットに寝かされている全裸の少女の方にいっていることから同性として少しまずいと思い声を掛けた。


 医師長は、メイリルダに少女の事を指摘されると、少年の視線を追うようにして少女を見ると、そこには全裸で寝かされている少女が横たわっていた。


「あ!」


 少年は、医師長の後ろに寝かされている少女を見ていたので、少年に少女の全裸を見せっぱなしにすることが精神衛生上悪いと気がついたようだ。


 慌てて、自分の白衣を脱いで少女にかけてあげると、少年の表情も元に戻った。


「メイリルダ。少女の服を着せてあげて! 私は、その少年を検査するから、その間に着せてあげて!」


 そう言うと、医師長は少年の手を取って診察用の机の方に少年を連れていった。


「ああ、少女の服も下着も、そこに用意されているから、さっさと着せてあげて!」


 メイリルダは、唖然としていた。


「何している、その少女は完全回復と言って良い。だから、着替えさせて、お前が面倒を見るんだ!」


 医師長は、少年を凝視しつつ視界の隅の方でメイリルダの様子を伺っていたが、メイリルダが固まって動かないので急ぐように促したのだ。


(あー、これで、今晩から、こっちの警備は無くなるから、ちゃんと寝れそうね)


 医師長は、ホッとした様子で少年を見つめていた。


 しばらく睡眠時間が減ると諦めていたのだが、少女の超回復によって回復したことで、自分への負担が減ったことを密かに喜んでいた。


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