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少女の回復力 2


 メイリルダは、医師長が病室を出て行ってしまうと、何もする事がなく、知らない言語で話す少年と少女を見ているだけになってしまった。


 少年は、少女の手を握って楽しそうに話をしていた。


 それをメイリルダは、ボーッとしながら見が、言葉が全く分からないので、つまらなそうにしていた。


 流石に、何も分からない言語の話を延々と聞いているのは苦痛だったようだ。


「あー、だめだ。飽きてきたわ」


 メイリルダは、もう一つのベットを見ると、そっちに移動してベットに座った。


(あら、意外と寝心地が良さそうね)


 座った感覚を確認し、ゆっくりと体を横にしていた。


(へー、医務室のベットって、結構、いいものを使っているのね)


 メイリルダが、ベットの感覚を味わっていると、その前に少年が立っており、少年の隣には少女がいた。


 2人は、手を繋いで立ってメイリルダを見ていた。


「メイリルダ。ベット。寝る」


 少年はメイリルダを見て、この国の言葉を話した。


「うん、私はベットで寝ているわ。……」


 メイリルダは、何か違和感を感じた。


 目の前に少年と少女が立っている事にも驚いていたが、そればかりでなく少年が片言でも会話をしてきた事でメイリルダは混乱していた。


 メイリルダは、体を起こしてベットに座るようにした。


(どういう事なの? 少女が立って歩いている? あれ、1日で歩けるような軽傷だった? え、あれだけの外科手術を受けていたら痛くて歩けないでしょ)


 少女が、少年と一緒にベットから立ち上がって、そして、自分が身体を横にしているベットの前に立っていることに驚いた。


 さっきはベットから起き上がるにも精一杯だったので、メイリルダが手伝って身体を起こした。


 そんなレベルだったのに、立ってここまで歩いてきた事に驚いていた。


 そしてメイリルダは、ベットから降りて少女の前に行くと、視線を同じ高さにするようにしゃがみ込み、少女を頭から爪先までを舐めるように見るが、痛々しい態度もなく、少女の表情にも痛みがあるように思えなかった。


 むしろ、メイリルダを興味深そうに見つめていた。


「へー、もう、歩けるようになったのね。良かったわ」


 メイリルダは、声をかけつつ少年と手を握っている方とは反対の腕に手を添えた。


 そして、その時に少女がどんな表情をするのか確認していたのだが、痛がる様子もなく、少女はメイリルダを見ていた。


(昨日、あれだけの怪我をしていたのよ。私が今触ったところは、外科手術で治していたところよ。昨日の今日なら触れただけでも痛いはずなのに、……)


 メイリルダは、触れた少女の腕を軽く摩るようにしてみたり、少し力を入れてみたりした。


(どうなっているの? これって、普通に怪我の無い健康体の人みたいだわ)


 不思議そうに少女を見ていた。


「どういう事なの? 怪我なんてしてないみたいだわ」


 メイリルダは、独り言のように呟いた。


「怪我、治ったよ」


 メイリルダが、不思議そうにしていると少年がメイリルダに話しかけた。


「不思議よね。昨日の様子だと、まだ、当分はベットから起きるなんてできないはずなのに、もう歩いているなんて、ちょっと驚きなのよね。……」


 メイリルダは、自分が話をしていることに違和感を感じた。


 それが、最初は何なのかよく分からずにいた。


 メイリルダは少女を見ていたのだが、その違和感を感じた原因が自分以外の声にあるように思えたようだ。


 そして、その声の方向にゆっくりと視線を向けた。


 そこには、一昨日、転移してきた少年が立っていた。


 少年は、不思議そうにメイリルダを見ていた。


「どうした? メイリルダ」


 少年は、メイリルダと視線が合うと声をかけた。


(え、ちょっと、私、こ、この子に、声をかけられた?)


「なにか?」


 メイリルダが驚いていると、少年は、また、声をかけてきた。


(え、どういう事なの? 私、この子と話をしているみたいじゃない)


 そして、メイリルダは、力が抜けたように尻餅をついてしまい、後ろにあるベットの淵に頭を預けるように置いて、腕はベットの淵から頭がずれ落ちないように後ろに両手をついた。


 その様子を少年と少女は、不思議僧に見ているのだが、2人の視線は、メイリルダの顔から徐々に下の方に移っていった。


 メイリルダは、2人の視線が、どこに向かっているのか気になったので、その視線を追いかけるように下に向いた。


 そこには、自分の膝小僧が見えていた。


 今日は、膝下のスカートを履いていたのだが、そのスカートの裾が、太ももの中程にある事にメイリルダは気が付いた。


 そして、少年と少女の見ている先がどうなっているのかということに気がつくと、慌てて膝を床に下ろし女の子座りになり、両手でスカートの裾を前に持っていき自身の膝を隠した。


 そして、真っ赤な顔をして俯いてしまった。


「しろ」


 少年が、少女に向かって言葉を発した。


「しろ」


 すると、それを受けて少女も答えるように繰り返した。


 2人の発した言葉は、メイリルダには、色の白ということが分かった。


 そして、さっき2人が見ていた中で白いものといったら、自分の下着の色だと理解できたのだ。


 2人は、メイリルダの下着を見て、下着の色を言っていたのだと理解すると、さらに真っ赤な顔が耳まで赤くなっていた。


 少年は、少女に言葉を教えていたのだ。


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