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カインクムの解説と方針


 フィルランカの噂話を聞いて、エルメアーナが、フィルランカの実の親が誰なのかを聞いてきた。


 孤児で親の顔を知らないフィルランカにエルメアーナが、親の事を聞くのは失礼だが、エルメアーナとの関係も、フィルランカの性格も、今までの関係もあって、大事にならなかっただろうが、その話について、簡単に終わったのは、その話を黙って聞いていたカインクムには安心した様子で2人を見ていた。


「フィルランカ。 お前、そんな噂話が出ているのか。 困ったものだ」


 カインクムが、フィルランカの話を聞いて、初めて口を開くのだが、その言葉は、少し重かった。


「フィルランカ。 今の話だがな、この話が、大きくなって、皇帝陛下や、皇族の人の耳に入ったら、少し問題になるかもしれないな」


 最初こそフィルランカは、カインクムが相談に乗ってくれるのかと思って、喜んだのだが、話の様子から、深刻な顔をする。


「それなんだが、場合によっては、不敬罪に当たる可能性がある。 モカリナ様は、肯定も否定もするなと言ったことが気になるが、俺の立場からしたら、その噂について聞かれたら、絶対に否定してもらいたいな」


 不敬罪とは、皇帝陛下や皇族に不敬の行為をする罪なのだが、皇帝陛下の落とし子と言う噂が、フィルランカやカインクム達と、モカリナとツナキ家に対して適用される可能性を、カインクムは、気になったのだ。


 一方、フィルランカは、カインクムをジーッと見て、言葉の一つ一つを噛み締めるように聞いていた。


 そして、その後の言葉を待つように、息を呑んだ。


「今の噂話が、大きくなった場合は問題になる可能性が高い。 本当なら、そんな噂が流れてほしくはなかったのだがな」


 カインクムは、ヤレヤレといった様子で、自分の料理を見る。


「噂話というのは、噂の中心人物が、その噂に、何らかのアクションを起こすと、周りは面白がって、話に更に尾鰭がついてしまうことがある。 だから、何か違う事に目がいくまで、黙ってやり過ごすのが一番いい。 それと噂の真意を聞かれたら、否定しておいた方が良い。 そんな事実は無いと否定するんだ」


(万一、不敬罪にでもなったら、大事になりかねない。 逮捕される可能性も出てくるからな)


 カインクムは、周りの噂話のおかげで、勝手に罪に問われるようなことになる事を恐れたのだ。


「でも、モカリナが、否定しても、私が聞かれたら否定するようにと言わされていると、更に、噂になると言ってました」


 噂話というのは、その当人がどうなのかは、全く関係無い。


 噂話を聞く方と話す方が、お互いに面白ければ良いだけなので、フィルランカが否定しても、それをうまく脚色して話せられれば、それで良いのだ。


「ああ、だが、それは、相手の憶測となる。 当人が否定するように言われていますなんて、言うわけないだろう。 完全否定だけをした方がいいだろう。 だがな、その噂の真相を知ろうとする生徒が居るとは思えないな。 噂なんてものは、面白ければいいので、その真相を知ってしまったら、その話で盛り上がることはできないんだ。 まあ、物語を話しているのと一緒だ。 後、2ヶ月もしたら、そんな話も終わるだろう」


「ええ」


 フィルランカは、気のない返事をする。


(私は、これから2ヶ月間、皇帝陛下の落とし子と言われ続けるのかしら)


 フィルランカの表情が曇っているのをみていたエルメアーナだが、自分には良いアイデアが思い浮かばないのか、カインクムに助けを求めるように視線を向ける。


「フィルランカが、少しかわいそうだ。 父、何もせずに黙って過ごすのか」


「ああ、そのうち、何か別のものに興味がいくだろう。 それに、フィルランカには、モカリナ様がいるだろう。 モカリナ様が、何で、お前に気を配ってくれるのかは分からないが、学校ではモカリナ様が、お前を助けてくれるだろう。 その噂話だって、モカリナ様が、お前を守っていると言うなら、何かあった場合、モカリナ様も同罪だからな。 きっと、俺達以上に噂話への対処はしっかりしていると思うぞ」


 カインクムは、仕方なさそうに答えた。


 フィルランカは、この噂話を考えると、フィルランカが、皇帝陛下の落とし子で、それを守るためにモカリナが、その任についている事になる。


 ならば、モカリナも、モカリナの家も同罪となる可能性が高い。


 カインクムは、何か閃いた様子になる。


「ああ、だから、モカリナ様は、フィルランカに、否定も肯定もするなと言ったのか」


 それを聞いて、フィルランカもエルメアーナも不思議そうな顔をする。


「モカリナ様は、この噂話に一切の関与をしないつもりなのだな。 否定も肯定もしないのは、全くの無関係を決め込むつもりなのか。 うん、フィルランカ。 モカリナ様の言った通りにしておくんだ。 フィルランカも俺たちも、その噂話とは一切無関係だから、モカリナ様の言った通りにしよう。 わかったな、フィルランカ」


「え、ええ」


 カインクムは、否定しろと言ったが、最終的には、モカリナの言った通りにするように言ってきた。


(モカリナ様も、ツナキ家も、この話については、一切関与しないつもりなのか。 何か聞かれても、そんな噂は知りません。 周りが勝手に盛り上がっただけで通すつもりなのだろう。 何か言われたとしても、本来なら、その噂を流した本人が一番悪い事になるのだから、一切関係ない事にするわけだな)


 フィルランカには、それで良いのかと思ったようだが、カインクムにも、モカリナにも、それが良いと言われたのなら、従うしかないと思ったのだ。


「わかりました。 そのようにします」


「噂話が終わるまでだ。 それまでは、モカリナ様を頼っていなさい」


「はい」


 フィルランカの皇帝陛下の落とし子と言う噂話について、カインクム達の方針も決まった。


 ただ、フィルランカとしたら、学校での、この重い噂話が、カインクムとエルメアーナにも共有できたことで、少し、ホッとしたようだ。


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