エルメアーナとフィルランカの反応
エルメアーナの反応を、ミルミヨルとカンクヲンは、心配そうに見ていたが、フィルランカと一緒なら、この天真爛漫なエルメアーナの反応を抑えてくれるだろうと思った。
いや、思ったというより、フィルランカが抑えてくれると期待したのだ。
苦笑いしているミルミヨルとカンクヲンたちは、どうしたものかと思っていた。
「エルメアーナは、もう少し、女らしくして欲しいわ。 なんだか小さな子供みたいよ」
「フィルランカ。 だって、こんな素敵な服と、靴なんだぞ。 これを用意してもらって、興奮しない人なんていないだろう」
エルメアーナは、新しい服と靴に興奮気味である。
「もう、エルメアーナったら、本当に子供みたい」
(なんだか、姉妹なの? フィルランカちゃんが、歳の離れたお姉さんなのかしら?)
(なんだか、母親と小さい娘を見ているようだ。 うちの店で、子供が靴を選んでいるときみたいだ)
ミルミヨルと、カンクヲンは、2人を見つつ、微妙な顔をしている。
「もう、エルメアーナったら、お隣の孤児院の小さな子供たちみたいよ。 もう」
((うん。 16歳の女の子じゃないな。 6歳の幼女のような感覚だ))
2人は、エルメアーナのはしゃぎ方が、とても16歳の女の子とは思えなかったようだ。
「すまないが、2人で並んで立ってもらえないだろか?」
はしゃくエルメアーナを、フィルランカが抑えていたのだが、それをカンクヲンが、2人に声をかけた。
はしゃいでいたエルメアーナも、カンクヲンの声を聞いて、2人の方を向く。
2人は笑顔なのだが、その笑顔の下に何かが隠れているように思えた。
「ああ、ただ、立っていればいいのか?」
「ちょっと、そういう時は、“はい”だけでいいのよ。 質問で返さないの!」
フィルランカが注意する。
「分かった」
そう言って、エルメアーナは、その場で立って、カンクヲンの方を向くと、その左側にエルメアーナが移動して並んで立った。
「うん。 いい感じだ」
(黙っていたら、とても絵になる)
カンクヲンが2人の並んだところを見る。
2人とも、背の違いはさほどないが、フィルランカの方が少し高い程度だったのだが、靴の踵の高さの違いから、フィルランカが少し大きくなったように見える。
(落ち着いた、フィルランカちゃんと、お転婆なエルメアーナちゃんてところだな)
カンクヲンの笑顔が、心から可愛いと思ったようだ。
カンクヲンの横にいた、ミルミヨルが、声をかけた。
「うん。 いい感じね。 ねえ、エルメアーナちゃん、フィルランカちゃんの腕を組んでみてもらえる?」
エルメアーナは、言われるがまま、フィルランカの右腕に自分の左腕をまわす。
「こうか?」
(うん。 いい感じだわ。 仲の良い姉妹って感じね。 “フィルランカ姉さん”と言わせたいけど、それは、芝居がかり過ぎるか)
「カンクヲンさんの靴のおかげで、メリハリが出たようだわ。 フィルランカちゃんと、エルメアーナちゃんの性格も上手く使えるかもしれないわね」
「おお、なるほどな。 いい感じだな」
カンクヲンも、ミルミヨルが何を考えていたのか、理解できたようだ。
(なるほど、仲の良い姉妹か)
ただ、フィルランカとエルメアーナは、カンクヲンとミルミヨルが、何か納得したような様子をしているのだが、それが、何なのか、理解できてないようだ。
「ねえ、2人ともそうやて少し歩いてもらえない?」
ミルミヨルが、2人にリクエストすると、フィルランカとエルメアーナは、お互いに顔を見る。
(ああ、この感じも良いわ。 仲の良さそうな表情が出てる)
ミルミヨルは、喜ぶような表情をする。
そんな事には気づかずに、フィルランカ達は、ミルミヨルに言われるがまま、腕を組んだ状態でリビングの中を歩き出す。
端まで行くと、不安そうにミルミヨルを見る。
「ああ、もう少し、この中を歩いてもらえないかしら」
フィルランカに誘導されるようにエルメアーナも一緒に歩く。
フィルランカは、慣れた様子で歩くが、エルメアーナは、時々、よろけたりして、フィルランカの腕に捕まっていた。
「うん。 やっぱりそうね。 カンクヲンさん、エルメアーナちゃんは、靴に慣れてないから、こうやって、フィルランカちゃんにエスコートしてもらったら、いいのかもしれないわね」
「ああ、そうだな。 エルメアーナちゃんには、少し早かったかもしれないな。 少し、踵を低くしようか?」
「いえ、その必要は無いと思うわ。 しばらく、こうやって、2人で歩くようさせてあげれば、きっと、絵になるとおもわ」
「うん。 それもそうだな」
(妹を気遣う姉。 多分、ミルミヨルは、そんなところを狙っているのかもしれないな)
「フィルランカちゃん、しばらく、そうやって、エルメアーナちゃんをエスコートしてあげた方がいいな」
「えっ?」
「ああ、エルメアーナちゃんは、踵の高い靴に慣れてないから、慣れるまでは、そうやって、助けてあげた方がいいよ」
フィルランカが、自分も初めて踵の高い靴を履いた時の事を思い出したのか、納得したような表情をした。
「そうですね。 しばらく、その方がいいかもしれませんね」
「フィルランカ、なんでそうなるんだ」
「ああ、高い靴を履き慣れてないと、結構、転けたりするから、私も最初は、転びそうになったりとか、よくしたから、慣れるまでは、エルメアーナと一緒に歩くようにするわね」
「そうなのか。 何だか、子供扱いされているみたいだ」
エルメアーナは、周りの雰囲気を、何気なく読み取ったようだ。
「そんなことはないわ。 だって、スカートなのよ。 転んでしまったら、スカートの中が見えてしまうかもしれないから、それだと、エルメアーナも恥ずかしいでしょ」
フィルランカは少し、焦ったように言う。
「そうよ、エルメアーナちゃん。 フィルランカちゃんのような淑女になるなら、歩いていて転ぶのは良くないわ。 だから、慣れるまでは、そうやって、フィルランカちゃんの腕を組んで歩いた方がいいわ」
ミルミヨルも少し、エルメアーナの言い方が、気になったようなので、フィルランカをフォローするようにいう。
「でも、私としては、その靴に慣れても、そうやって、2人で腕を組んで歩いてもらいたいわね」
「それは、どうしてなのだ」
「だって、とても仲の良い姉妹が、楽しそうに歩いているのよ。 みている方は、とても和むのよ」
「ああ、そうだな。 目の保養だ。 最初にフィルランカちゃんが、うちの店に来た時の事を思い出すよ」
カンクヲンは、昔の事を思い出したのか、少しニヤリとした。
それをみた、ミルミヨルが、カンクヲンの表情が変わったのを見逃さなかった
「そうね。 カンクヲンさん、少し、鼻の下が伸びていたわね」
ミルミヨルは、カンクヲンに同意するのだが、最初にカンクヲンの店に、フィルランカを連れていった時の事を思い出したのか、カンクヲンの表情と、自分の記憶から、カンクヲンを牽制した。




