学校の服と、服に似合う靴
エルメアーナが先に着てしまった、フィルランカの色違いの服だったが、最終的には、エルメアーナも下着の上をつけるところから行って、試着をする。
エルメアーナは、エンジ色だったが、フィルランカは、紺色だった。
ただ、縁取りの部分を上手く使って、ラインを整えるようにデザインされているので、とても洗練された姿になった。
「ミルミヨルさん。 これ、本当に、いいんですか? 私は、ただの鍛冶屋の下宿人ですよ。 これだと、どこかの貴族令嬢か、大商人の娘さんって感じですよ。 こんなのを着て、学校に行ったら、周りから浮いてしまいませんか?」
フィルランカは、心配そうにミルミヨルに聞くと、ミルミヨルは、何をこの子は言っているのかといった表情をする。
「あのね、フィルランカちゃん。 あなたの行く学校って、貴族の子女や、大商人の子女が通う学校なのよ。 今までの学校と一緒と考えないの。 貴族でも大商人とでも、見劣りしないようにしてなければ、いけないのよ。 だから、今までのような格好で、学校に行ったら、それこそ、浮いてしまうのよ。 だから、この程度の服は、用意しておかないといけないのよ」
「はあ」
フィルランカは、ミルミヨルの話を聞いても、いまいち、ピンと来てない様子で、気のない返事をした。
「それに、フィルランカちゃん。 私の店に初めて顔を出した時のことを覚えている?」
「はい。 第1区画のお店に入店を断られて、それで、ミルミヨルさんのお店で、服を用意してもらいました」
その時の事を思い出してフィルランカは答えた。
だが、まだ、よくわかってなさそうに答えたので、ミルミヨルは、更に話を続ける必要があると思ったようだ。
「フィルランカちゃんが、これから通う学校は、第1区画にあるのよ。 飲食店もだけど、学校も第1区画なのだから、その時のように、それなりに揃える必要があるのよ」
そう言って、フィルランカを納得させようとする。
(これ、自信作なのよ。 フィルランカちゃんが、学校に着て行ったら、絶対に周りは見るわ。 そして、もう、うちの店のショウウインドウには、これが飾ってあるのよ。 一言、フィルランカちゃんが、私の店の名前を言えば、必ず、見に来る生徒が居るはず。 今まで、どれだけ、フィルランカちゃんの宣伝効果が高かったのか、私はよく知っているのよ。 この服を絶対に50着、いえ、100着位は売ってくれるわ。 しかも、あの学校は、ほとんどがお金持ちの子女が通うのよ。 私の目に狂いはない!)
フィルランカは、ミルミヨルの思惑など気にすることもなく、自分の服とエルメアーナの服を見比べて、体を捻ったりして、見ていた。
(ここは、第3区画だから、この服だと、ちょっと浮き気味なのよね。 でも、食事に第1区画に行った時の事を考えたら、これでも、問題ないわよね。 食事の時に、お姫様のような人も食べていたし、そう考えたら、これでも地味なのかもしれないわね)
フィルランカは、自分を納得させるように、自分の服を見ていた。
時々、エルメアーナにも、同じような動きをしてもらって、周りから見た感じを確かめていた。
「わかりました、ミルミヨルさん。 学校には、この服を着ていくようにします」
それを聞いてミルミヨルも笑顔になる。
「そう、そうでなくちゃね。 それと、これからは、エルメアーナちゃんも、一緒に食事に出るのでしょ」
そう言って、話をエルメアーナに振る。
「えっ! わた、私はぁ」
「何言っているのよ。 あなたも一緒だからね。 今度の休みは、2人で、この服を着て、お出かけするのよ。 それで、一緒に食事をするの」
エルメアーナは、まだ、少し抵抗があるようだ。
「きっと、2人が、その姿でカフェでお茶をしていたら、とても絵になるわ」
ミルミヨルが、目をキラキラさせて、エルメアーナを見る。
「わ、わかっている。 もう、予定に入っているんだ。 フィルランカが、一緒だから、きっと、大丈夫だ」
「うーん。 うーん」
ミルミヨルは、嬉しそうだ。
2人が自分の服を着て、カフェでお茶をしている姿を想像して、悦にいっている。
すると、店の方から、カインクムの声がした。
「おーい。 もう、着替え終わったのかーっ?」
カインクムは、2人の着替え中、店番をしていたのだが、痺れを切らせたように声をかけてきたように、フィルランカ達には聞こえた。
「はい。 もう着替え終わりました」
「そうか。 じゃあ、また、お前たちにお客さんだ。 そっちに行ってもらうからな」
フィルランカとエルメアーナは、お互いに顔を見るのだが、どちらにも、お客が誰なのか分からないと行った表情をする。
ただ、ミルミヨルは、そんな2人を面白そうに見ていた。
リビングに顔を見せたのは、カンクヲンだった。
「やあ、フィルランカちゃん、エルメアーナちゃん。 こんにちわ」
「「こんにちわ」」
カンクヲンの顔を見ても、なんで、2人へのお客なのか、エルメアーナもフィルランカも分からなそうにしている。
「今日、ミルミヨルが、大きな荷物を持って店を出たから、私も準備してきたんだ」
そう言って、カンクヲンも大きなバックを床に置くと、その中から、靴を2足出した。
「ほら、今の服に合いそうな靴をデザインしたんだ。 ミルミヨルの服に合わせたから、今から、履いてみないか?」
カンクヲンは、2種類のデザインの靴を鞄の中から出した。




