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カンクヲンの考え

 カンクヲンの靴屋で、2人の靴以外にカインクムも新しい靴を買うことになった。


 それを選んだのは、フィルランカだった。


 フィルランカは、かなり悩んだ末、一つの靴を選んだ。


 そして、カインクムが、その靴を履いているのを嬉しそうに見ていた。


 カインクムとしたら、娘からの贈り物だと思ってもらったのだが、フィルランカとしたら、自分の思い人への初めての贈り物となったので、顔だけでなく、耳まで赤くしていた。


 そんなフィルランカを見て、カインクムは、不思議そうにするが、直ぐに、気を取り直し、親への贈り物をした程度にしか考えてなかった。




 そんな中、カンクヲンは、フィルランカに聞いた。


「フィルランカちゃん。 ミルミヨルのところによった時、今日買った服は、これから、学校に来ていく服なのかい?」


「いえ、最初は、そのつもりだったのだけど、ミルミヨルさんが、入学までに新しい服を用意するから、それを学校に着ていくようにって言ってました。 なんでも、新しいデザインにするとか言ってました」


 それを聞いて、カンクヲンは、目を少し鋭くする。


(ミルミヨルのやつ、また、何か企んでいるな。 だったら、ここは、ミルミヨルの話に乗った方がいいだろう。 学校に着ていく服か)


 カンクヲンは、閃いた様子でフィルランカを見る。


「フィルランカちゃん。 私にも靴をプレゼントさせてもらえないだろうか? ミルミヨルが、学校に行くための服を、デザインから考えているなら、それに合わせた靴も用意してあげよう。 きっと、気に入ってもらえるようにするから、また、お願いできないだろうか」


 フィルランカとしたら、いつもの宣伝だと思えばいいだけだったので、笑顔で答える。


「わかりました。 いつものように、靴について聞かれたら、答えればいいのですね」


「ああ、そうだ。 学校に行って、その靴について聞かれたら、いつものように答えてくれればいい」


 そう言うと、カンクヲンは、フィルランカが、高等学校に入学した事を思い出して、何か考え始めた。


(あそこの学校は、貴族も帝都の商人の子供が通う学校だ。 学校に通う中で、フィルランカの身分は、一般臣民になるよな。 その連中が、フィルランカと同じ物で、満足するのか?)


 フィルランカを見て、隣にいるエルメアーナと、向こうでテーブルに腰を下ろしているカインクムを見る。


(貴族や上位の商人が、一般臣民のフィルランカと、同じ服や靴で満足するのか? いや、ミルミヨルのやつ、同じものを売ろうと思ったら、失敗する可能性があるぞ。 これは、後で、ミルミヨルと、しっかり、話を合わせておかないと、いけないかもしれない)


 そんなカンクヲンの表情を、不思議そうにフィルランカは、見ていた。


 カンクヲンは、フィルランカの視線に気がつく。


「ああ、すまない。 ちょっと考え事をしていた。 それで、ミルミヨルの服に合わせた靴を用意するからね。 入学式には間に合わせてあげるから、それまで、少し待ってほしい」


 フィルランカは、嬉しそうな顔をした。


「ありがとうございます。 学校でもしっかり宣伝してきます」


「ああ、よろしく頼むよ」


 約束を取り付けると、フィルランカ達は、靴の支払いも済ませて、カンクヲンの店を出る。


 そして、通りの向こう側のティナミムの店に移動した。




 ミルミヨルの服店、カンクヲンの靴店、そして、ティナミムの美容室は、ここ数年、フィルランカを使って宣伝したことで、売上を伸ばしていた。


 娯楽が少ない、この時代では、フィルランカが、花嫁修行のために、料理の味を覚えるために食べ歩いているなんて話は、直ぐに、尾鰭がついて噂になっていた。


 それが、この3店のおかげで、第1区画のお店まで、食べ歩いているとなれば、その噂を聞きつけた人達が、3店にお金を落とすことになり、かなり潤ったのだ。


 特に、第3区画の顧客もだが、そこから移動して第9区画の開発のために引っ越しした家族からも、足を運んでもらえていたのだ。


 それが、新たな顧客を引き寄せる呼水となったので、第5区画の、この3店舗についてはフィルランカの話の尾鰭の一部に入ってしまっていたのだ。


 それが、第5区画の有名店に押し上げていた。


 その噂は、カインクムの耳にも届いているので、今日は、この3店舗にお礼も兼ねて回っているのだ。




 通りを挟んだ向かいには、ティナミムの美容院が店を構えている。


 その店にカインクムが、最初に入っていく。


「お邪魔するよ」


「いらっしゃいませ」


 ティナミムの店は、女性専用の店なので、カインクムが、入ってくると店員は、少し困ったような様子を示すのだが、後ろに少女が2人居て、その1人がフィルランカと分かったので、フィルランカの家族だと、直ぐに理解できた。


「今日は、どの様な、ご用件でしょうか?」


 店員んは、後ろの2人の髪の事だと思ったのだが、話を早めずに、いつもの対応を行った。


「今日は、後ろの2人の髪の毛を見て貰いたいので、寄らせてもらいました。 フィルランカは、いつも、こちらのお店に世話になっていると聞いたので、今日は、もう1人の娘も連れてきました。 2人の髪の毛を見てもらいたい」


「かしこまりました。 それでは、旦那さはま、こちらの方で、お寛ぎください」


 そう言って、待合席の方を示す。


「後、ミルミヨルを呼んで参りますので、お嬢様方は、そちらのお席の方にお座りください」


 フィルランカとエルメアーナは、髪の毛をカットするための椅子の方に行くように示された。


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