ミルミヨルに協力するカインクム
ミルミヨルは、カインクムが、なんで、頑なにプレゼントを断ったのかが、おおよそ検討がついたようだ。
ミルミヨルは、フィルランカに渡した服の代金は貰ってなかった。
代金をタダにする代わりに、人に聞かれたら、ミルミヨルの店で買ったと言いなさいと言いふくめていたのだ。
そのおかげで、かなりの売り上げを確保したのだ。
(カインクムさんになら、正直に話をして、今度も協力してもらう。 それしかないわ)
ミルミヨルは、決心した様子で、カインクムに話かける。
「いえ、カインクムさん。 私の用意した服を着て、フィルランカさんは、学校に通うんです。 私は、学校に着ていける服をプレゼントするのです。 それをフィルランカさんに学校に着て行ってもらうのなら、私は、フィルランカさんにプレゼントした服が、呼水となって、新しいお客様を連れてきてくれる、そのチャンスを逃したくないのです」
カインクムは、突然、ミルミヨルが、本音の部分を出してきたので驚いた。
「いいですか、カインクムさん。 今まで、フィルランカさんに着せた服ですけど、どれも、後から、どれだけの注文を頂いたと思っているのですか。 10着や20着では効かないのですよ。 現に、今、私は、3人の従業員を雇って、仕事に追われている状況です。 もし、今度、フィルランカさんが、入学式の時、授業の時、私の服を着ていたら、周りの生徒は、どう思うと思いっますか?」
ミルミヨルは、商売人の顔をしている。
その様子から、カインクムは、頷くしかなかった。
「フィルランカさんは、私の服を十二分に宣伝してくれたのです。 それに高等学校となったら、貴族の子女も沢山居ます。 その人達の目に止まったら、私は、また、受注を受けることになり、従業員を増やして、手狭になってしまったら、新しい店を探すことになるかもしれないのです」
ミルミヨルは、自分の野望を、思わず口にしていた。
カインクムは、少し引き気味なのをみて、少し反省するが、ミルミヨルは、続ける。
「カインクムさん。 私は、フィルランカさんと出会えた、それによって、幸運を掴ませてもらいました。 欲をかきすぎるつもりはありませんが、チャンスは、どこにでも転がっているとは思いません。 どうか、私を助けると思って、私にフィルランカさんの、学校に通うための服をプレゼントさせてください」
(この女、絶対にタダでは起きない人なんだ。 フィルランカに服をプレゼントするたびに、10着や20着の注文を受けていたのか。 どうりで、フィルランカが着ていた服と同じものを、時々見かけたのは、そのせいだったのか)
カインクムは、ミルミヨルの服が、フィルランカの宣伝によって、何十着もの注文を受けていたことを理解したようだ。
(なるほど、高等学校に、フィルランカが、通う時、毎日、ミルミヨルの服で通うことで、生徒達に宣伝して、生徒の親に買わせようと思っているのか。 高等学校の女子率は低いが、それでも、女生徒達の誰かが気に入ったら、その先にいる、貴族や、商人の母親も含めてお客の可能性が有るってことなのだな)
カインクムは、ミルミヨルの話を聞いて、なるほどと思ったようだ。
「そうだったのか。 フィルランカは、そんなに、あなたの店に貢献していたのか」
カインクムの関心した声に、ミルミヨルは、ホッとした様子をする。
「はい、私にとって、フィルランカさんは、商売の女神でした。 今の私があるのは、彼女のおかげです。 だから、私は、今、店の服を、全て、フィルランカさんにプレゼントしても惜しくはありません」
それを聞いて、カインクムは、店の中を見渡して、この服全部を渡されたたら、自分の家の部屋が足りなくなると思ったようだ。
「いや、流石にそれは、こっちが困る。 うちに、これだけの服を置くスペースがない。 それは、流石に勘弁してくれ」
しかし、カインクムは、フィルランカが、この店に貢献していたと聞いて、嬉しかったようだ。
顔を少し綻ばせている。
「わかったよ、ミルミヨルさん。 フィルランカに、1着プレゼントしてもらえるだろうか。 その服を着せて、毎日、学校に通わせるようにするよ。 それと、フィルランカには、友達に聞かれたら、この店で買ったと言うように伝えるよ」
それを聞いて、ミルミヨルは、目を輝かせた。
「ありがとうございます。 カインクムさん! 実は私、学校に通うための制服があればと思っていたのです。 なので、入学式の前日までに、学校に着ていける服を作って、お宅まで届けます。 それでよろしいでしょうか?」
そのミルミヨルの勢いにカインクムは、気圧されてしまった。
「あ、ああ。 そうしてくれるか」
「はい! フィルランカさんが、一番綺麗に見えるデザインに仕立ててあげます」
「あ、ああ」
カインクムは、ビビり気味に答えた。
「では、早速、フィルランカさん達の採寸をさせてもらいます。 もう、新しい服を選ばなくてもいいですわ」
それを聞いて、カインクムは、困ったようだ。
「いや、ミルミヨルさん。 今日は、あの2人の服は、私に買わせてもらえないだろうか」
ミルミヨルは、不思議そうにカインクムを見る。
「すまないが、少しだけ、父親らしいことをさせて欲しいんだ。 娘2人に服を買う父親にさせて欲しいんだ」
それを聞いて、ミルミヨルも納得した。
「かしこまりました。 それでは、今日は、その様にさせていただきます」
そう言って、カインクムにお辞儀をする。
「それでは、2人に似合った服を用意させてもらいます」
そう言って、ミルミヨルは、フィルランカとエルメアーナの方に行き、2人の服を選ぶのを手伝ってくれた。
その姿を見て、カインクムは、ホッとする。
(そうか、俺の知らないところで、フィルランカは、周りのお店に協力していたのか)
そんな、フィルランカの様子を、カインクムは、イメージしながら、2人が服を選ぶのを見ていた。




