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学校との交渉


 フィルランカの件について、孤児院のシスターと話がつくと、今度は、学校に通わせる為の交渉に、カインクムは向かった。


 学校には、エルメアーナの件があるので、カインクムも、あまり行きたいとは思わなかったようだ。


 通うはずのエルメアーナが、登校拒否してしまったのだが、その理由を言わないので、カインクムも学校側も困っていたのだ。


 そんな所にカインクムが学校に来たので、なんの話なのか校長も気になったようだ。


「こんにちは、カインクムさん。 今日は、どんなご用件で、足を運んで下さったのでしょうか?」


「ああ、今度、隣の孤児院から、1人子供を引き取ったんだ。 その子を学校に通わせたいので、その、相談に来た」


 校長は、エルメアーナの事かと思っていたのだが、ホッとしたようだ。


 だが、孤児院の子供と聞いて、また、困ったような顔をした。


「孤児院の子供ですか」


 校長は、少し考えると、また、話だす。


「その子は、何歳ですか?」


「10歳。 女の子だ。 名前は、フィルランカと言う」


 カインクムは、年齢を聞かれたのだが、年齢以外にも答えた。


「うーん。 10歳ですか」


 校長は少し悩んだ様子を示した。


 学校に入る年齢は、6歳からと決まっている。


 1年程度遅れる事は、家庭の都合で良くあるのだが、10歳だと、周りの生徒とのバランスが悪くなってしまう。


 そう考えると、校長は直ぐには、答えを出せないでいる。


「その歳まで、孤児院にいたとなると、どうなんでしょうか? 大した勉強もできてないでしょうから、同じ歳のクラスに入れる訳には行かないと思います。 1年生から入れるとなっても、周りと身長が違うので、浮いてしまいます」


「フィルランカは、今まで、うちに来ては、エルメアーナから、学校で教わってきたことを教えてもらっている。 全くダメなことは無いと思う」


 校長は、子供が子供に教えて、どれだけ、身につくのか心配になったようだ。


 ちゃんとした教師について、教わっていたのなら、それなりに学力は有ると見て良いだろうし、もし必要なら、その教師から、どれだけの事が理解できるか確認することもできる。


 しかし、エルメアーナに教わった程度で、どれだけの学力がついたのか、疑問があるのだ。


「学校は、勉強を教えます。 ただ、今の話を聞いたところだと、同学年の生徒との学力の違いが顕著に出てしまい、落ちこぼれてしまう可能性があります。 その歳から、学校に通わせるのは、いかがかと思います」


「フィルランカは、俺の店の商品の値段は全て覚えていて、お釣りの計算もできる。 文字を読むことも、ある程度できるから、全く出来ないというわけではない」


 校長は、多少できる自分の子供を天才のように言う親の事を思ったようだ。


 カインクムの子供ではなく、孤児だった子供に、そんな感情を持つのかと気になったようだ。


「それは、贔屓目というのではないですか? よくあるのですよ」


 校長は面倒臭そうに答えた。


「なあ、だったら、フィルランカが、どれだけの学力があるのか、試してみないか?」


 カインクムは、校長に提案する。


 カインクムには、今まで、家で見てきたフィルランカが、それ程劣っているとは思えなかった。


 数字も読めるし、計算もできる。


 年相応の学力は、身についていると思っているのだ。


 それを証明してしまえば、この校長も認めざるを得ないと思ったようだ。


「そうですね。 ここで、当人が居ないのに、話をしていても始まりませんね。 では、その娘さんの試験をしましょう。 その結果を見て、相応しい学年を決めて、それで良ければ、学校に通う事を許可します」


「そうかい。 ありがとうよ。 それで、その試験は、いつにする」


「そうですね。 こう言った話は、早い方が良いでしょう。 明日はいかがですか?」


「ああ、それでいい。 明日、フィルランカを学校に連れてくるよ」


 カインクムは、フィルランカの試験の約束を取り付けたので、席を立つと、家に戻って、フィルランカに話す内容を考えるのだ。




 カインクムが出て行った後の校長は、面倒な事になったと思ったようだ。


 孤児が、学校に通っている子供と同じだけの学力があるとは、考えられないので、断る理由として、試験を行う事にしたのだ。


「その子に学力が無かったら、諦めるだろうな」


 校長は、がっかりしたような顔をする。


(孤児が、簡単に読み書きできるわけないだろう。 計算ができる? 本当なのか? 数字だって読めるのか?)


 校長は、孤児の学力に対して期待はしてない。


 それより、断る理由を探していたのだ。


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