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高周波振動


 ちょうど、レィオーンパードの調整を終わらせて、レィオーンパードが、各部の動きを確認し始めたので、気になった事をジューネスティーンに尋ねる。


「なあ、ジュネスの剣だが、あれ、鉄を斬ったじゃないか。 あれはどんな原理で切ったんだ?」


 ジューネスティーンは、自分の剣で鉄を切った時の事を聞かれて直ぐに答えた。


「あれは刃全体が振動しているんです。 一般的には、高周波振動をさせているんですよ。 人の耳が聞き取る事が出来ない、30キロヘルツ以上の振動を、刃全体にさせているんです。 それを魔法紋で描いた物を、柄の中の刀に描きました。 刃でも良かったんですけど、魔法関係に詳しい人に見られると、嫌だったので、その部分に描いておいたんです」


 また、新しい単語が出てきた事で、カインクムは少し戸惑う。


「その高周波振動ってのは、なんなんだ?」


「それですか。 高周波振動というのは、ただ、振動させているだけなのですけど、その振動がすごく早いんです。 通常振動すると音になって聞こえるのですけど、高周波振動は、人が聞こえる音より高い振動をしているので、人の耳には聞こえてきません。 それで、30キロヘルツ以上なんですよ」


 少し難しいのか、カインクムは考え込んでいた。


「じゃあ、弓の弦を、指で軽く弾いた時に音が出るのは分かりますか?」


「ああ、それならわかる」


 弓ならば、カインクムにも馴染みのある物なので、それを聞いて、振動するということに理解が持てた。


「その音なんですけど、短い弓と長い弓で音が違うのはわかりますか?」


「ああ、短い弓なら高い音、長い弓なら低い音がする」


「それは、弦が振動して聞こえてくるんです。 音がしている時に、弦を指で触ると音が消えますけど、それもわかりますね?」


「ああ、それも分かる」


「高周波振動と言うのは、人の聞こえる音より高い部分の振動を言いますので、それを刃に起こしてやるんです。 そうする事で、斬れ味が変わってくるんです」


 カインクムは、弓の弦の話を聞いて、振動については理解できた様だ。


「それじゃあ、その振動をイメージできれば、その魔法紋を俺が描けるって事なのか?」


「そういう事です。 それが理解できれば、フィルランカさんも描けると思います」


「だったら、それをイメージするには、どうすれば、……。 ああ、弓で確認すれば良いのか」


 自分が話ている最中にカインクムは、ジューネスティーンがさっき言った、弓の弦音の事を思いついた様で有る。


 ジューネスティーンはそれを聞いて、少し考えるが、直ぐに、答えが出た様だ。


「ああ、それでも構いませんが、音楽でもいいと思います」


「音楽?」


「ええ、音楽です。 弦を叩いたり擦ったりする楽器とか、ドラムの様に叩く楽器とかが分かりやすいと思います。 あれは、叩いたりい擦ったりして振動してますから、ドラムなんかだと、砂の様な物とか、粉を置いて叩くと、振動している様子が良く分かります。 そういったものを見て振動をイメージできれば、それをもっと早く動かしている事を考えればいいでしょう。 高い音ほど、振動は多いですから、その感じが掴めるだけでも、イメージにつながると思います。 要するに音も波の一種で声もそうですけど、音はそうやって振動したものが空気を伝わって聞こえるんですよ」


「ふーん。 そんなもんなのか。 ……。 まあ、今度機会があったら、音楽も聞いてみる」


 高周波振動によって、剣の刃は振動していると聞けた事でカインクムは、一歩前進したと感じている。


 そんな中、今、ジューネスティーンが、言っていた中で気になった単語が有った。


「なあ、今の話の中で、30キロヘルツとかって言っていたが、あれはなんなんだ?」


「ああ、それは、振動が1秒間に何回起こったかを表す数字です。 30キロヘルツは、1秒間に3万回振動しているって事なんです」


 そう言うと、ジューネスティーンは、少し姿勢を正すと、腹の底から声を出す。


「おおおおおおお〜」


 ただの声だが、腹の底から出す事で、低い音になった。


「今のが低い音です。 じゃあ、今度は、高い音を出しますね」


 すると、今後は、頭の天辺を上に引き上げる様にして、顎をひくと裏声を発する。


「ああああああ〜」


 それをカインクムは、真剣に眺めているが、ジューネスティーンは、少し恥ずかしそうにしていた。


「どうですか? 高い音と低い音の違いですけど、なんと無くでも掴めましたか?」


「ああ、確かに、なんとなくだが、ああと、言った方が高い音に聞こえた」


「人の聞き取れる音というのは、20キロヘルツ程度までなんですよ。 あの時の剣の振動が、20キロヘルツ以下だったら、きっと、全員が耳を押さえていたでしょうけど、聞こえる周波数を超えてしまうと、大きな音でも聞こえないんですよ。 犬笛とかって聞いたことはありませんか?」


「北の方の国では、犬を呼ぶための笛だと聞いた事がある」


「あれは、人には聞こえない周波数帯の音が、大きく出る笛なので、人には聞こえませんけど、犬には、聞こえるんです。 だから、犬笛を吹くと自分の犬にその音が伝わって戻ってくるんですよ」


「ああ、そういえば、犬を呼び戻す時に使うんだと聞いた事がある」


 カインクムも、ジューネスティーンの説明を聞いて、音について何となく理解を深めていた。


「その高い音が出るほどの振動を与えれば、切れ味は良くなるんです。 それと、戦っている時に大きな音になると、剣を持っている方が、不快感を持ちます。 一定の周波数の音って、かなり耳障りなので、だから、人の聞こえる周波数帯を避けて、人の聞こえない周波数帯の振動を与えているんです」


「なるほど、そういう事だったのか。 ありがとう。 ジュネス」


 カインクムは、説明を聞いて納得した。


 振動するというイメージを膨らませる方法も、ジューネスティーンに聞けたので、後は、その魔法紋に乗せる方法を考えるだけになった。


 そんな話をしていると、レィオーンパードが、気になる部分をジューネスティーンに伝えるので、カインクムは、少し離れて、また、考えをまとめ始める。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



次話より、間話となります。

フィルランカがカインクムの押しかけ女房として、嫁になるまでの話です。


ただ、間話としては、長くなりすぎてしまいました。

200話を超えています。


本伝を読みたいと思う方は、「ギルドの通信装置」まで移動してください。


私の勝手な都合で、フィルランカの話をまとめております。



ご了承のほど、よろしくお願いいたします。


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