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水瓶を軽くする魔法紋の概要


 2人が水魔法を付与する魔法紋を成功させたのを見て、話しかける。


「それじゃあ、次に行きましょう。 今度は、台車が軽くなる軽量化の魔法紋をやってみましょう。 丁度、水瓶が有るので、この水瓶の底面にその魔法をドロウイングで描いてみましょう」


 魔法の内容は、物を軽くするので、重力の影響を無くすになる。


 重力の影響を何かで遮断することはできないが、物質の持つ反発力を利用する。


 反発力を重力の方向の力のみを増強させるようにして、重力を物質の持つ反発力と相殺する。


「では、簡単に、原子や分子といった物質の最小単位についての説明します。 物と言うのは、小さな原子が集まって物を形成してます。 それは、かなり小さいものなので、人がみる事ができないと考えてください。 今度は、理解するというより、その概念をイメージするようにして下さい。 原子や分子のサイズは、1ミリの1000万分の1から10万分の1と目に見えるような物ではないので、とても小さな物が集まっている。 そんな感じで構いません」


 2人は、キョトンとした顔をする。


 イメージが追い付いていかないようだ。


 その表情を見てジューネスティーンも困ったようだ。


 何も分からない人に、原子の話をしているので、理解に苦しんでいることは、ジューネスティーンも、分かっているのだろうが、上手い例え話が思い浮かばないようである。


 そんなジューネスティーンの困った表情にシュレイノリアも話をする。


「私も原子・分子を見た事は無い。 それを見る術も無い。 それは、原子や分子のサイズが余りに小さいので確認できない。 だから、何となくでもイメージできれば、魔法は発動する。 さっき作った魔法紋が、その証拠」


 シュレイノリアは2人に言う。


 そこから、カインクムに疑問が生じたのだろう。


 シュレイノリアにその疑問を質問する。


「なあ、シュレの嬢ちゃん。 見えない物を何で、そうなっていると分かるんだ?」


「それは、実験や、その原子の性質を考える事から始まる。 何かの実験を行って出てくる現象を調べる。 見えない物でも、現象は、起こることが分かる。 だから、見えなくても原子がどうなっているのか、その現象から推測する。 様々な実験の結果、原子の大きさや、その構造が、理解できる。 だが、見た事のない物なのだから、間違いもある。 新たな実験方法や技術が進めば、そういった物も見ることが出来るようになるだろう。 それが科学というものだ」


 カインクムは、考え込む。


 2人とも、キツネに摘まれたような顔をしている。


 そんな2人の表情を見て、ジューネスティーンは、何か無いかと周りを見つめていると、今、魔法紋の習得に使った水瓶が目につく。


 すると、ジューネスティーンの顔が明るくなる。


「カインクムさん。 この水瓶の水ですけど、水は、温度が下がると、凍って、氷になります。 また、温度を上げると、沸騰して蒸発します。 これはわかりますね」


 カインクムは、ジューネスティーンが何を聞きたいのか、掴めなそうな顔をしている。


「ああ、氷と水は、分かる。 だが、沸騰して蒸発するってのが、いまいちだな」


「水は常温だと液体。 要するに油とか、酒だとか、人が飲む事のできる状態が液体なんですよ。 氷は固まっていますので固体です。 ここまでは、大丈夫ですね」


「ああ」


「じゃあ、湯気は分かりますか?」


「ああ、お湯から立ち上っているな」


「水が湯気の状態のものを気体と言って、空気のような感じですよね」


「ああ、そんな感じだな」


「でも、湯気の一粒一粒をみる事ができますか?」


 カインクムは、湯気を思い出しているのだろう。

 

だが、そんな物は肉眼で見る事はできないので、カインクムは、思い出しても、湯気の粒なんてわかるわけがない。


「いや、分からない」


「そうなんです。 原子や分子は肉眼では見えない物なのです。 でも、お湯を沸かすポットを思い出してください。 ポットの口から沸騰して湯気が勢いよく出ているところを思い出してください」


「ああ、沸騰しすぎると、口から勢いよく湯気が出ている。 それがどうかしたのか?」


「あれが、気体の状態なのですけど、中の水の量はほとんど変わらないのに湯気は勢いよく出ます。 僅かな量の水分が、沸騰して水蒸気になると、体積が増大するんですよ。 それは、水の分子間に隙間ができるからそうなるんです。 だから、物質の状態によっては、強い反発力が有るって事なんですよ」


(本当は、少し違うと思うんですけど、イメージをさせる為ですので、許してください)


 ジューネスティーンには思惑があるようだが、カインクムに理解させるために、イメージしやすい物で例えるのだった。


「ああ、確かに、湯気が強く噴き出したとしても、中の水の量は、変わった感じはしないな」


「気体になった時に、一気に膨らむので、僅かな水でもすごい量の湯気が噴き出るんですよ。 物質同士の反発なんですよ」


 カインクムに話していると、横からフィルランカが入ってくる。


「あのー、それは、お鍋が吹きこぼれてしまうのもそうなんでしょうか?」


「そうですね。 吹きこぼれる時って、鍋の中が沸騰している時ですから、それも同じに考えて良いと思います」


「お鍋が吹きこぼれる時って、鍋蓋を押し上げて、カタカタ言うんですよね。 多少重くても、吹きこぼれる時は、鍋蓋がなっているんです」


「それが、沸騰して水蒸気になった水が反発するから、その力が鍋蓋を押すんです」


「ああ、そうね」


「今の話のように、小さな原子や分子には、反発する力が有るんです。 その力を強くしてあげると思ってください」


(こじつけ過ぎたような気もするが、物質が反発するということが理解できてくれればいいんだが)


 ジューネスティーンは、2人の様子を見ている。

 それぞれが、自分なりに理解をしようと思っているのだろう。


「ふーん。 何となくだが、反発するって感じは、掴めたとおう。 それに、あんたも見た事が無いのに重力魔法が使えたのなら、俺達にも使えるのかもしれないな」


 そう言いながら、カインクムは自分を納得させているように見える。


「それじゃあ、軽量化の魔法紋を刻んでみましょう。 水瓶が軽くなったら、上に持ち上げるのも楽になりますよ」


 それを聞いたフィルランカは、何か思うところがあったのだろう。


 軽くなると、聞いて、興味を持ったようだ。


「お隣のリルキーシャさんは、小さいから、何を運ぶのも大変そうだったのよね。 それも、この魔法紋を覚えたら、助かるわね」


「ええ、そうなります」


「だったら、頑張ってみます」


 フィルランカも軽量化の魔法紋について、真剣に取り組み出した。


 何かの目的が有っての取り組みは、身につきやすい物なので、2人は、軽量化の魔法紋も何とか使えるようになると、ジューネスティーンとシュレイノリアは思ったようだ。


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