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フィルランカの水魔法


 ジューネスティーンは、この世界の魔法には制御という部分が欠けていている事を、シュレイノリアの研究成果として知っているのだから、フィルランカも、水魔法と言われて、水の量の調整ができない事に不安に思っているのだろうと思ったようだ。


 そんな不安そうなフィルランカにジューネスティーンは話しかける。


「ああ、それなら、そのカップに入るだけの水を出してくれればいいですよ」


 それを聞いて、フィルランカは、困った顔をした。


 それを見てジューネスティーンは確信したような顔をする。


 そんな事に気が付かず、フィルランカは困った顔で、つぶやくように話す。


「そんなに都合良く、量の調整なんて」


 フィルランカは、水魔法で出す水の量を、そんな簡単に使い分けした事がないと、その言葉から、はっきりとわかる。


 それを見てジューネスティーンは、完全に確信したのだった。


 彼女も魔法の制御が出来てないのだと。


「大丈夫です。 そのカップに入る量をイメージすれば良いのですけど」


 そう言うと、ジューネスティーンは、少し考えてから、フィルランカに伝える。


「心配なら呪文に、 “カップの量だけ水を集めよ” とか、 “カップの半分の水を貯めよ” とか、呪文の中に入れれば良いと思います」


 疑心暗鬼な表情をするフィルランカなのだが、ジューネスティーンは、自信を持った表情で彼女を見つめる。


 その自信を持った表情に気圧されたのかフィルランカは答える。


「そうですか……」


 だが、不安な心が声にも伝わっていた。


 そう言うと、フィルランカは少し考えていた。


 不安そうにジューネスティーンに聞く。


「じゃあ、水魔法の呪文の中に、 “カップの半分だけ水を貯めよ” を付け加えるだけで、よろしいでしょうか?」


 それを聞いて、ジューネスティーンは、問題無いといった表情を見せる。


「ええ、それで構いません。 ですが、半信半疑じゃなくて、自分で、カップの中に半分貯まった水をイメージして、唱えてください」


 ジューネスティーンに言われても、自信が持てない様子だが、カインクムにも見つめられているので、フィルランカは、断ることができないと思ったようだ。


「じゃあ、少し待って下さいね」


 そう言って、フィルランカは、少し考えるような仕草をする。


 それは、何かを思い出すようだと窺える。


(昔、教わった時は、難しいくて、長い詠唱だったから、覚えられなかったけど、……、でも、 “カップに半分の水を貯めよ” なら、簡単だから、私にも覚えられるわ。 それを詠唱に付け加えればいいだけなのね)


 すると、フィルランカは、吹っ切れたような顔をすると、カップに手をかざす。


「我は、命ずる。 森羅万象に基づき、ここに願いを伝える。 カップに半分の水を貯めよ。 ウォーター」


 すると、カップの底に水が貯まり始める。


 それは、徐々に下から持ち上がってくるような感じで、水が沸き上がってきた。


 その様子をカインクムも、瞬きするのも忘れて、見ている。


 カインクムとすれば、時々、フィルランカの魔法が失敗して、水瓶の周りを水浸しにしてしまったのを、雑巾で拭き取るのを手伝ったりしているので、フィルランカの水魔法は、その時々で、水の量が多すぎたり、少な過ぎたりするのを知っているのだろう。


 それは、先程のフィルランカの話からも推測できる。


 魔法の制御が出来ているなら、カップの量の水と言われても、気にする事なく、カップに対して水魔法を使っただろうが、水魔法をリビングで使えと言われて驚いていた事から、ジューネスティーンは、フィルランカには、魔法が制御できてないと思ったのだ。




 フィルランカの呪文詠唱によって、目の前に置いてあるカップの中に湧いてきた水は、丁度半分になったところで、水が増えなくなる。


 フィルランカは、手をかざしているが、それ以上、カップの水は増えるようには見えなかった。


 フィルランカもカップの水の量が、丁度、カップの半分まで溜まったのを見て、少し信じられないような様子を見せるが、自分の水魔法で、水量の調節ができたことに喜んでいるようだ。


 ただ、フィルランカの性格なのか、見た目には、少し嬉しそうにしているように見える。


「あら、本当に思った量の水が入ったわ」


 カップの水が、溢れることもなく、丁度、半分で水が、ピッタリと止まったのだ。


 すると、カインクムの顔を見る。


「何だか、上手くいってしまいました」


 フィルランカは、カインクムに話したのだが、それは嬉しそうなのだが、持ち前のおっとりした感じからか、のんびりした口調で話していた。


「これなら、お鍋の水も、食器を洗う時の水も魔法でできますわ。 水汲みせずに使う事ができそうです。 これで、水を溜めておくための、水瓶は要らなくなりました」


 そう言って、片手を頬に当てて笑顔を作る。


 それを見たシュレイノリアは、フィルランカに声をかける。


「だから魔法はイメージ。 量も自分の中でイメージすれば、その通りになる」


「ありがとう。 シュレイノリアさん。 これからは多過ぎて水浸しになる事も無く、水瓶に水を貯めておかなくても、水が使えそうです」


 笑顔でお礼を言うフィルランカだった。


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