パワードスーツから出る時の憂鬱 3
子供扱いされた事に怒ったアンジュリーンが、ジューネスティーンの頬を叩いて謝られると、アンジュリーンは少し落ち着いたようだが、まだ、少し赤い顔をしている。
「ふん!」
アンジュリーンが鼻を鳴らす。
だが、ジューネスティーンが謝った声を聞いて、呪縛のように動けなかったアリアリーシャが、その声でやっと呪縛が解けたと思ったところに、アンジュリーンが鼻を鳴らした事に反応して、アンジュリーンを止めようと、また、アンジュリーンを後ろから抱きしめた。
「ダメですぅ、アンジュ。 それまでですぅ」
アンジュリーンも頭に血が上っていたのだが、ビンタとジューネスティーンの詫びで、収まりつつあったのだろう。
今度は、アンジュリーンが、アリアリーシャのその行動に驚いた。
「えっ! 何? アリーシャ、どうかしたの?」
そう言って、後ろのアリアリーシャを確認しようと、後ろを振り返ろうとするが、アリアリーシャは必死でアンジュリーンを抑えようとしている。
また、ジューネスティーンに何かすると思っているのだろう。
その必死に抱きついているアンジュリーンは、何故か恥ずかしそうにしているのだ。
「ねぇ、ちょっと、アリーシャ、話して、もう、大丈夫、だから」
アンジュリーンは、そう言いつつ、お腹を前に出すような仕草をする。
(うわぁー、背中にアリーシャの胸、胸、当たってる。 すごい弾力って、分かったから、だから、もう、やめて、ジュネスの言った事もわかったから、許して)
アンジュリーンは、何か恥ずかしそうにしている。
「アリーシャ、本当に、もう分かったから、その手を離して! お願い、もう許して! お願いします」
その言葉に、アリアリーシャは、少し不思議そうな顔をする。
アリアリーシャにしては、アンジュリーンが、何で許してと言ったのか疑問に思うだろう。
自分に許しを乞うような事を、アンジュがしたのかと疑問に思ったのだろう。
ただ、アンジュリーンが落ち着いたと思ったのだろう、手を緩めてアンジュリーンを離す。
すると恥ずかしそうに振り返って、自分の肩を抱くようにして、アリアリーシャを恨めしそうに見る。
「姉さんのバカ!」
その反応にアリアリーシャは戸惑う。
さっきの許してと言った事もだろうが、今の言葉には、何だか可愛い感じがしたのだろう。
何で、アンジュリーンがそんな反応をしたのか理解できないみたいだ。
アンジュリーンも冷静になった事で、周りもホッとしている。
冷静になったところで、アンジュリーンも自分がパワードスーツから出る方法について本気で考えているようだ。
(今のようにアリーシャを出すなら、私が引っ張り出せば問題はないけど、シュレに同じ事が出来るのかなぁ)
アンジュリーンは、シュレの顔を見る。
(シュレの貧弱さは、分かっているわ。 多分、私を引き上げるなんて、無理ね)
アンジュリーンは、俯き加減に悩むような素振りを見せる。
(じゃあ、アリーシャとシュレの2人に引き上げてもらうの? そうなると、ジュネスがシュレを引き上げて、その後にシュレがアリーシャを引き上げる。 それから2人で私を引き上げるなら出来そう?)
今度は、上を向いて、物思いに耽るような顔をする。
(いやいや、そうなると、足場に問題があるわ。 あのふくらはぎの装甲に2人が乗るなんて無理だわ)
アンジュリーンは、首を振り出す。
(じゃあ、私は、一度入ったら、もう出られなくなってしまうの?)
不安そうな顔になる。
(いやいや、そんな事になったら、私は、パワードスーツを付けたまま生活するって事じゃないの。 食べるのも、寝るのも、トイレも……。 えっ、そうなったらどうやってするのよ)
頭を掻きむしるような仕草をする。
(だめよ、絶対にパワードスーツから出なければ、生活できなくなるわ)
顔を覆うように手のひらを頬に当てて、青い顔をする。
(そんな事になったら、私は破滅だわ)
そう言うと、今度は、ジューネスティーンの顔を睨むように見る。
見られたジューネスティーンは、さっきの件があったので、少し緊張する。
だが、アンジュリーンは、直ぐにガッカリしたような顔をする。
(私が、パワードスーツから出るには、ジュネスに介助してもらうしか、今は、方法が無いのね)
そう思うと、両手で顔を覆う。
そのアンジュリーンの百面相を、周りは何も言わずに、見ているだけしかできないでいる。
リビングに戻りたいのだろうが、そのアンジュリーンの様子が、それを許さないと訴えているように周りは思ったのだろう。
オドオドしながら、その様子をただ見つめるしかなかった。
すると、アンジュリーンは、ジューネスティーンに真剣な顔で見る。
その真剣な顔にジューネスティーンは、頬の痛みが疼いてくる。
アンジュリーンは、そんなジューネスティーンの態度を気にする事なく話し出す。
「ジュネス!」
「はい!」
そのアンジュリーンの呼びかけが、強い口調だったので、ジューネスティーンは緊張した面持ちで答えた。
「いいこと、あんたは、これから知恵を絞って、ここにいるメンバーが、全員1人でパワードスーツから出れるようにしなさい! いいわね」
そう言われて、困った顔をジューネスティーンはするが、直ぐにひらめいた様子で答える。
「じゃあ、俺のように腕だけで体を支えられるように、今日から、夕食前に筋トレしよう」
そう言われて、ジューネスティーンの腕を見ると、ムキムキの筋肉の腕で自分の体が、ジューネスティーンのようになった時の体を、全員が想像しているような顔をする。
太もも程の二の腕を自分の中で想像しているのだろう。
それぞれの思惑があるので、人それぞれ、違う表情をしている。
すると、アンジュリーンが、イラついた様子で、ジューネスティーンにくってかかった。
「私は、アンタみたいな、ムキムキマッチョの腕にはなりたくない。 そんな腕じゃ可愛いドレスも着れないじゃないの」
そう言いつつ、顔は赤くなっている。
どうも、アンジュリーンの反応が、変な反応をしているのだが、正面で見ているジューネスティーンにはわからないようである。




