アンジュリーンは成長期
パワードスーツから出る時、足を抜くのにアリアリーシャが、苦労したことから、アンジュリーンは不安になった。
アリアリーシャを引き上げるのは、自分で構わないのだが、3人の女子の中で一番大きい自分が、どうやってパワードスーツから出れば良いのか、困った事になったと思ったのだ。
その際に、ジューネスティーンが、アンジュリーンの胸の小ささを口にしてしまった事で、話がこじれてしまったのだ。
そんなアンジュリーンが、ジューネスティーンに要求を突きつける。
「パワードスーツを改造して、それが出来なければ、何か別の物を考えて! ジュネスに引き出してもらうのは、シュレだけにして!」
悩み出すジューネスティーンなのだが、直ぐにはアイデアが浮かばないようである。
すると、現状ではジューネスティーンの補助以外にと思い、カミュルイアンを見る。
カミュルイアンは、一応は、男子なので、それなりに筋力も有りそうだが、ジューネスティーンには及ばない。
自分を介助できるのかと、アンジュリーンは、疑問に思ってしまったようだ。
その横にいるレィオーンパードを見て、アンジュリーンは、一度ブルっと体を震わせた。
(レオンに介助を頼んだら、絶対に、いたずらされそうだわね)
アンジュリーンは、ジロリとレィオーンパードを睨むと、ジューネスティーンを見た。
今の状況で、自分がパワードスーツから出るには、ジューネスティーンにお願いするしかないと思ったようだ。
アンジュリーンは、現実を受け止めたように、ため息を漏らす。
「仕方が無い。 私がパワードスーツから出る時は、ジューネスティーンにお願いするわ。 でも、変なところまで手を回さないのよ」
そう言うと、カミュルイアンが、ボソリと漏らすように言う。
「アリーシャ姉さんなら分かるけど、お前ならその心配は無いんじゃない」
アンジュリーンのこめかみに血管が浮き上がるのを、ジューネスティーンは目撃する。
不味いと思っていると、更にレィオーンパードが追い討ちをかける。
「だって、大人と子供じゃねぇ」
そう言ってレィオーンパードとカミュルイアンは、ニタニタとお互いを見ながら笑い出す。
その2人にアンジュリーンの怒りが爆発する。
2人の方に振り返ると、怒りをぶつけるのである。
「私にだって、胸は有る! なんでうちの男子達はデリカシーが無いの!」
そう言って、2人に襲い掛かろうと右ての拳をあげて、2人の方に向くと、それを見た2人が慌てて後ろに下がる。
ジューネスティーンも、今度は、レィオーンパードとカミュルイアンの身を案じたのだろう。
アンジュリーンを後ろから押さえる。
そして、アンジュリーンの耳元で、囁くように言う。
「大丈夫、アンジュが、パワードスーツから出るときは、ちゃんと、大事な女の子として扱うから」
その言葉にアンジュリーンは固まって、顔を赤くする。
(大事な女の子)
アンジュリーンは何かに反応してしまったようだ。
だが、アンジュリーンは、直ぐに、違和感を覚える。
自分の左胸に、何かの感触を感じていて、それが、時々、蠢くように右胸を刺激するのだ。
アンジュリーンは、下を見ると、右脇から抱え込まれたジューネスティーンの右手のひらが自分の胸を鷲掴みにしているのが見えたのだ。
目の前で、それを目撃しているアリアリーシャも顔を青くして固まっている。
アンジュリーンは、自分の胸を捕らえているのが、ジューネスティーンの手だと分かってしまったのだが、直ぐには反応できなかったようだが、このままではいけないと思ったのだろう、顔を後ろに向けて、恥ずかしそうに言う。
「分かったわ。 でも、その手を離してもらえるかしら」
そう言うと、ジューネスティーンが、アンジュリーンの脇から右手を回して、左胸を鷲掴みにしていた事に気がついたようだ。
ジューネスティーンは、顔から血の気が引いてしまったのだろう。
顔が真白になる。
慌てて、手を離すとアンジュリーンに詫びる。
「あ、ごめん」
そう言って一歩下がると、もう一度謝る。
「本当にごめん」
アンジュリーンは、胸を抱き抱えるようにしてジューネスティーンを赤い顔で覗き込んでいる。
バツが悪そうに、上目遣いでアンジュリーンは、ジューネスティーンを見る。
ジューネスティーンだが、何か思うところがあったようだ。
(言われるまで、胸だとは思わなかった。 けど、意識すると、柔らかかったなぁ。 でも、口に出したら殴られるよな。 きっと)
そんなジューネスティーンの思惑など知らず、アンジュリーンは、鼻を鳴らす。
「ふん」
そう言ってアンジュリーンは、アリアリーシャの後ろに行く。
その一連のやりとりを、蚊帳の外で見ていただけだったカインクムは、フィルランカがこれを見てどう思っているのか心配になったのだろう。
チラリと、フィルランカを見る。
今のことは、若い時だけ、許されるやり取りを、羨ましいと思うのだが、これ以上、同じようなやり取りをして、お鉢が自分に回ってくる事を心配したのだろう。
「じゃあ、リビングで一息入れよう。 そしたら、ヒョウのにいちゃんのも組み立ててしまおう」
そう言って、休憩を入れる事を提案する。
工房を出てリビングに向かった。




